みなさんは複業に対して積極的に動くことはできていますか? 中には「積極的に行動したいけど勇気がでない……」と思い行動になかなか移せない人も多いのではないでしょうか。

今回お話を聞いたのは、新卒でサイボウズに入社し「サイボウズ式」の企画編集や、 企業ブランディングのためのコンテンツ制作を本業にしながら、2018年1月から複業で「Forbes JAPAN」「TOKYO VOICE」などで編集者/ライターとして活動しているバイタリティ溢れる明石悠佳さん。最近は、オンライン上の記事だけでなく、紙媒体の編集も行なっているそう。

本業も複業も活発に取り組んでいる明石さんですが、noteでは「積極的な行動が苦手で受け身な人生を送っている。自分から誰かに会いたいと思うこともなければ、仕事で営業をかけることもあまりない」と語っていました。

そんなガツガツと売り込んでいくよりも、自分が興味のあることを発信したり、人とのつながりを大切にしたりする中で仕事を見つけていく明石さんが、複業で普段から人とのつながりの中で気をつけていることや気にしていることなどを教えていただきました。

営業はしていない。初めての複業はnoteから

ー 複業を始めたきっかけとなる最初の仕事は、どのように決まったのでしょうか?

きっかけは、サイボウズ式で編集のお仕事を始めて1年くらい経った頃に、Twitterでお互いにフォローをしていた出版社の方がDMで「記事を書くお仕事をしてみませんか?」とお声がけいただいたことです。複業を始めたのが2018年の1月なので、今から11ヶ月前くらい前になります。

ー そうだったんですね。noteに「営業はかけることはあまりない」と書いてありましたが、それは今も続いていますか?

はい。自分から営業をかけてお仕事をもらうということは、ほとんどありません。2年前にサイボウズ式の編集者になってから、私はスキルゼロのところから編集の知識を勉強しはじめました。宣伝会議さんが開催されている「編集・ライター養成講座」に通ったり、ほぼ日さんが運営されている「ほぼ日の塾」に通ったり、いろんな編集系の勉強会やイベントに参加して人脈を増やしたり……。そういう修行の時期が続いていて、ゆくゆくは編集者やライターとして一人前になりたいなぁと思っていた時に声をかけていただいたので、タイミングが良いと思い、お仕事を受けました。ちょうどそろそろ自分の力でお仕事をしてみたいな、と思っていた頃だったんです。

ー 依頼をもらった当時は、SNSでどのような内容を発信していたのですか?

当時Twitterでは、自分が行ったイベントの感想や、サイボウズでどのようなことを意識して働いているのかなど、等身大の自分の考えについて投稿していました。あとは、自分が文章を書くときにはこういうことを大切にしているとか、見た映画や本の感想とか……普通ですね(笑)。そしてTwitterと同時にnoteも書いていました。noteにも自分が感じたことを素直に書き綴っていました。

ー それがきっかけで複業がもらえたと。

そうなんです。はじめてライターのお仕事をいただいたとき、私は本業は編集者のお仕事をしていたので、ライターのような書く仕事はしたことがありませんでした。実績がないことを相談したところ、その方が私が趣味で書いているnoteを読んでくださり、「これだったら大丈夫だよ」と言ってくださりました。その時は、noteで文章を書いていてよかったなと思いましたね。

受動的な人の、次の仕事への繋げ方

ー TwitterのDM依頼から複業が始まりましたが、初めての仕事から次へ繋げるために意識したことはありますか?

「あかしさんは複業でライターをしているんだ」という認識を周囲に知ってもらえるようには意識しました。もし企業の方がSNSで見つけてくださったとしても、複業をしていることを明示していなければ「この人に案件を依頼してもいいのかな?」と迷ってしまうと思います。なので、FacebookやTwitterで「複業をしています」という内容を投稿するようにしました。そうすることで、大学時代の知り合いの方や、サイボウズのお仕事がきっかけで知り合った方から「こういう仕事はどうですか?」などと依頼が来るようになりました。

複業は、最初の機会を見つけるのは時間がかかるかもしれませんが、一度始めると割とお仕事は来やすくなるのかなあと思います。もちろん、次も一緒にお仕事したいと思ってもらえるように仕事の成果にこだわること、自分のスキルを磨き続ける努力をすることは大前提として必要だと思います。

仕事でも人として仲良くなりたい。人間関係で意識していること

ー 明石さんは、仕事の関係者や友達から複業を広げているというイメージがありますが、特に人間関係で意識していることはありますか?

本業での安定した収入があるので、複業ではお金のために仕事をすることはなく、魅力的だなと思える方とお仕事をすることを意識しています。単純な「仕事の受発注」の関係になってしまうのはすごく寂しい。機械的で業務的なやり取りよりも、一度一緒にお仕事をしたら、そこから面白い新しい仕事がどんどん生まれていくような関係性が理想です。だから、TwitterのDMから案件を依頼してくださる人はほとんどが初対面ですが、そこから仲良くなって飲みに行って、友達になったり定期的に一緒にお仕事をしたり、といったパターンが多いですね。仕事でも感情のこもった人間関係を構築していきたいなと思っています。

ー 機械的だと主従関係ができてしまいそうですもんね。

主従関係というか「納品してくれればそれで結構」といった感じは寂しいなと思ってしまいます。複業では自分が素敵だなと思う人たちと、素敵だなと思う仕事をしたいです。

受動的な人の複業のやり方

ー 明石さんはnoteで自身のことを「受動的だけど、積極的だ」と書いていましたが、「受動的だし消極的な人」は、どのように複業を始めればいいと思いますか?

自分の好奇心のままに動いてみることが大切だと思います。自分が興味があることを深めていくと「なんでこうなったのだろう?」と、ちょっとした違和感がたくさん湧いてきます。その違和感に忠実に向き合って、自分の中で留めておくのではなくSNSで発信したり誰かに一言伝えてみたり。それだけでも仕事に繋がっていくことがあります。

少し話は違うかもしれませんが、以前、知り合いが開催しているライター講座のウェブサイトを見ていたら誤字を発見して、「これ直したほうがいいですよ」とその方にメッセージを送ったら、そこから別の講座の講師のお仕事をいただいたことがありました。そういった小さな行動でも、お仕事に繋がることってあるんだなあと実感する出来事でした。

ー すごい。そんな運命みたいな出来事ってあるんですね。

私も驚きました。その時、誤字を自分の中で完結してしまっていたら、仕事に繋がることはありませんでしたし、やっぱりどんな小さなことでもいいから、誰かに伝える、言葉にすることは大事なんじゃないかなあと思います。

ー やっぱりある程度、積極性は必要ですよね。

そうですね。世の中で言われている「会いたい人には会いに行け」「営業しろ」とか、そこまでの積極性でなくてもいいのですが、何かしら行動する必要はあると思います。それに、本当に好きなことだったら放っておいても「積極的」になってしまうものじゃないかなあ。

やりたいことを言葉にすると、磁石のように寄ってくる

ー 最近の明石さんが複業をやって行く中で、「受動的だけど積極的だな」と感じたエピソードはありますか?

私の大学時代からの知人に本の編集をされている方がいて、その方にはずっと大学時代から「本を作りたい」と言い続けていました。その方と、今複業で一緒に本の編集をさせていただいていて、さらには今サイボウズでも一緒に本を作っているんです。営業などをしたわけではないですが、大学時代からずっと「私、本を作りたいんです」と言っていて、人間的な関係を大事にしていたことが、結果的に今のお仕事につながっているような気がします。

ー すごいですね! 明石さんは先輩だけでなく、周りの人と自分のやりたいことについて話す機会は多いのでしょうか?

頻繁に言っていますね。友達との飲み会でも、「こういうことやりたい」や「こんなことできたら面白いよね」などと話すことは割と多いと思います。ざっくばらんに話すことで、お互いのやりたいことが一緒だったときに「一緒にできるかもね」といった話にもつながりやすいと思います。

ー 明石さんの「文章のお仕事がしたい」という想いをずっと口に出しているからこそ、明石さんと会った人の記憶に残っているんですね。

そうかもしれないですね。大学時代からずっと自分がやりたいことはずっと一緒で、周りの人にずっと言い続けています。そうやって一貫して軸を持っていると、大きい磁石みたいなものができて、そこにヒュッて仕事や人が寄ってくるのかもしれません。

負けず嫌いが仕事にも活きている

ー 本業もやりつつ複業をやるのは結構体力や気合いが必要ではないですか?

そうですね。大変なときもありますが、私自身が仕事に対して貪欲で、身を粉にして働きたいみたいな欲求もあるので、楽しく複業をさせてもらっています。

中学の部活がバトミントン部で、高校はラクロス部だったのでそのときの経験が影響しているかもしれないです。中学の部活は、学年中の気の強い女の子を集めたような部だったんですよ。みんな泣くまで練習するみたいな。

ー スポコンですね。

そうですね。そんなバドミントン部でキャプテンをやっていたので、心身ともに鍛えられましたね。根はめちゃくちゃ負けず嫌いっていうところもあるんだと思います。

ー その「負けず嫌い」が複業にも影響していると思いますか?

対人では負けず嫌いなところはあまり出てこないですが、対仕事や対自分では自分を追い込んだりとか「まだいける」みたいな感覚はあります。なにくそ精神で、「絶対やったるぞ」みたいな気持ちが仕事で出る時はありますね。

ー納期が迫って、妥協しなきゃいけない状況などはありませんでしたか??

自分なりに書き物のクオリティは絶対に下げたくないと思っているので、妥協はなるべくしないようにしています。妥協するぐらいなら夜遅くまで頑張ったりして、どうしても間に合わなさそうなときは、相手に迷惑をかけない範囲で早めに「この日締切間に合いそうにないのでもうちょっと締め切りを伸ばしてくれませんか」とお願いします。

本業で編集者をしていて、ライターさんから原稿をもらう時、納期に間に合って完成されていない物を提出していただくよりも、2日3日納期を伸ばしてもいいものを提出してくださる方が嬉しいと日々感じているので、自分が書く時も妥協したものは提出しないようにしたいですね。

ー 編集者を本業でやっていると、複業でも相手の気持ちも分かるのは強いですね。

複業でライターを始めて、「ライターさんはこれをされたら傷つくんだ」みたいな感覚がわかりました。自分が書いた原稿を勝手に変えられたり、自分が知らないうちに公開されてたりすると、すごく傷つきますし、当たり前ですが、自分はしないようにしようと思います。編集者とライター、お互いの立ち位置で嫌だったり傷ついた経験は、なるべくやらないようにしたりしています。こういった本業以外の視点を持つことができるのは、複業のメリットだなと感じています。

これから複業を始める人にアドバイスを

ー 最後に、これから複業を始める人たちに何かアドバイスをいただけますでしょうか?

自分のやりたいことやできることを把握して発信するのがまず一つ大事なことだと思います。「相手側がして欲しいこと」と「自分ができること」の重なった部分が仕事になって依頼がくると思うので、自分がやりたいことを内に秘めたままでは、いつまでたっても需要と供給の重なりがわからず、仕事に結びつきにくいです。だから発信は絶対にやるべきだと個人的には思っていて。企業や案件先の人がSNSの投稿などを見たときに「この人はこれができて、これをやってくれそうだ」と理解させる発信力がないと、複業を継続していくのは難しいと思います。

ー 参考になります。

もう一つ忘れないようにしたいのは、結局は自分自身が魅力的じゃなかったら、いくら発信が上手でも、定期的にお仕事は入ってこないということ。だから、自分を磨き続けることは大前提として必要だなと自分にも日々言い聞かせています。文章を書く仕事が欲しいなら、ブログやnoteなど何かしらの文章は書いたほうがいいと思いますし、自分の好きなことをやりたいと思う欲求に対しては積極的に行動することが大事なのではないでしょうか。この行動は、案件を取りに行く積極性とは別物だと思っていて、そこに対して積極的になれないのであれば、それは本当にやりたいことなのか……と一度自分に問い直した方がいいかもしれないですよね。

ー そこにも積極的になれないことは、本当は自分がやりたいことじゃないかもしれないですよね。

積極的に動けないときや案件がなかなか来ないときは、何がネックになっているの冷静に分析してみるのもありかもしれないです。自分ができることが相手に適切に伝わっていないのかもしれないし、自分自身のスキルが足りていないのかもしれない。他にも様々な原因があると思うので、原因を見極めて自分自身を磨いて発信していけば、ニーズと重なって案件になることは絶対にあると思います。

取材後記

柔らかい雰囲気を持ちながらも芯が通っている明石悠佳さん。話をしていくにつれて、仕事に対してかなり真摯に向き合い考えていることが伺えました。

本業も複業もどちらも妥協せずに取り組む。そして学んだことは次に生かしていくという、受動的であるけれど積極的な明石さんだからこそ、営業をしなくても次々に仕事が舞い込んでくるのだなと思いました。

この記事を書いてくれたひと

この記事を書いてくれたひと:なまっちゃ/ Namatcha

なまっちゃ/ Namatchai

ブロガー、AIベンチャー企業の広報。月間6万PVのブログを運営し、日常の共感できためになるようなネタを発信しています。また、広報では人々が理解しにくいことを分解して伝えることに勤しんでいます。ライティングから運用まで、一括して企業の広報のサポートをしています。

Twitter:@namatcha_

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう