複業したいけど何から始めればいいのかわからない…。

残業が減ったことで時間ができ、何かを始めたいと思ってもどうすればいいのかわからず、悩んでいる方は多いのではないでしょうか?

本業・複業共に、さまざまな企業規模・予算規模・状況でマーケティングの成果を生み出し続け、現在は独立してマーケティング専門のコンサルタント、株式会社Marketer’s Brain代表取締役のデ・スーザ リッキーさん(以下、リッキーさん)。 今回は、そんなリッキーさんに、複業の心得をお伺いしてきました。

本業一筋。がむしゃらに走り続けた20代

ーまず、リッキーさんの経歴を教えていただいてもよろしいでしょうか?

都内制作会社でウェブディレクターをやり、そこでウェブサイトの企画や編集を行なっていました。その後、自分にとって師匠みたいな人が他の企業にヘッドハンティングされ転職することになったので、師匠についていくように一緒に転職することになりました。その企業でもウェブディレクターとして仕事をしていたのですが、人手不足だったこともあり、ディレクターのみならず、企画営業なども経験しました。 最初の就職から、合計4年ほどウェブディレクターをメインにがむしゃらに働いていたのですが、あるタイミングで二度目の転職をしました。

ーなぜ、二度も転職をしたんですか?

当時27歳の僕は、企画からお金の管理までなんでもやってきました。ひたすら走り続けて経験や実績を積む中で、「一つの会社でブランドを育てる」というスキルを身に付けたいと思い転職することにしました。正直、自分の市場価値がどれくらいあるのか不安でしたが、実際に転職活動を始めてみたら需要があることを知り、転職先であるジュピターゴルフネットワーク株式会社(現株式会社ジュピターテレコム(J:COM))にすぐ決まり入社することができました。

今まではウェブディレクターからデータ分析までいろいろやっていましたが、ジュピターゴルフネットワークでも「編成と制作とそれ以外」という業務区分の「それ以外」を担当していたので(笑)、広報や、ECサイトの与信管理、自社ロゴの制作、メルマガの執筆、個人情報の管理担当など、かなり幅広い業務を経験させてもらいました。

ーとにかく色々なことを任されていたんですね。

そうですね。基本的に「断る」という事をしていなかったので、なんでも頼まれては受けていました。しかし、そのときに忙しさのあまり身体を壊してしまったんです。当時はハードな仕事をこなしていたので、身体に異変が起きている実感がなかったのですが、ある上司が僕の様子を見たときに「病院に行け!」と強く言われて、それで病院に行ったらバタっと倒れちゃって。 医師からは、3ヶ月ほど休んでくださいと診断を受けました。

休んでいたときに、当時結婚したばかりの妻に申し訳なくなって、離婚を切り出すくらい思い詰めていたのですが、自宅療養中に、いざ離婚を切り出してみたら、そのときの妻の対応が、「はあ?そんな馬鹿な事を言う暇あったら、私が帰宅するまでにお米でも研いでおいてくれない?」っていう厳しくも優しい言葉をもらって(笑)そのときに、働き方を考えなきゃとハッとしました。

人を育てたいーー本業で感じた課題から複業を始める

ー療養期間を経た後のお話を聞かせてください。

はい、療養期間を終えた後はジュピターテレコムの本社に戻していただいて、1年ほどウェブ関連の制作回りを担当した後に、またデジタルプロモーションの最前線に戻されました(笑) そこで、10億円を超える予算を扱ったプロモーションなどを経験し、管理職にまで到達したのですが、そのときに「マーケター」と言うキャリアが見えてきたので、今度は「マーケター」としてのチャレンジをするために、株式会社ロックオンに転職をしました。

ロックオンでは、マーケティング部長として今まで培ってきたウェブ広告やリサーチなどのスキルを使って仕事をしていました。ただ、仕事を続ける中で、課題を感じるようになりました。

ーどんな課題を感じていたんでしょうか?

私は外部のセミナーなどで登壇する回数が多く、そのときに自社のマーケティングを支援するサービスのことに触れながら、マーケティング戦略論などもあわせて話していました。聴講者の方々から「とても、勉強になりました!」の声はありがたいことにいただく一方で「そのお客様が実際にサービスを導入してくれるのか?」と言うと、必ずしもそうではなかったんです。

サービスを導入しない理由を聞いてみると「うちにはそんなに知見がない」とか「自社の環境が整っていない」とか、すごく残念そうに回答される方が多かったんですね。そのときに「どんなにツールが進化してその良さを伝えていても、使う人間の知識が追いついてないと意味がないのではないか?」と課題を感じるようになっていきました。

ーたしかに、機能が発達しすぎると人間が置いていかれてしまう感じがしますよね。

そうなんです。ツールをよくするのはもちろんですが、「そもそものツールを扱う人(マーケター)の育成」ということに社会的な課題があると感じ、それを事業にできないかと当時の経営層に相談をしました。しかし「そういうコンサルティング事業の展開は考えてない」という回答もらい、「だったら自分でやってみよう」ってことで、経営層の許可をもらって複業として「マーケティングコンサルタント」を始めました。

ー本業で感じた課題から誰かのためになりたいと思ったのが、複業のスタートだったんですね。

あのセミナーで感じた課題に対して、少しでもいいので自分のできる範囲で人を助けたいと思いました。それが、複業のスタートです。本業を通じてやりたかったことが見つかり、それに向けて動き出す第一ステップが複業という方法だったのかもしれません。あのとき、経営層にマーケター育成事業を始める許可をもらっていたら、また人生が変わっていたかもしれないですね。

宣言して積み重ねる。複業で大切なことはこれだけ

ー複業って、自分がやりたいことが本業でできなかったときにスタートするものだと、僕もまさに思います。複業時代は、どんなことをしていたんですか?

主にデジタルを中心とした、マーケティングのコンサルティングをやっていました。企業の人たちがマーケティング周りで感じている課題をヒアリングしながら解決できそうなポイントを見つけ、自分のスキルを使って埋めていく感じです。

ー複業を始めるときに、大切なことはありますか?

自分が気をつけていたのは、「あくまでも自分のルート」で始める事を心がけていました。いかに本業で課題を感じていても、本業のお客様にアプローチするのは、倫理的にあまりよろしくないです。会社と万が一にも揉める火種を作りたくなかったので、自分で新規のお客さんを開拓するようにしていました。

また実行に際しては、周囲に対して「やろうと思っています」と意志を伝えるのではなく、「やっています!」と口に出して、すぐに複業の名刺をだせる状態にしていました。 意志だけ伝えても、「そうなんだ」で会話が終わってしまい仕事はもらえません。でも、「今やっています!」と伝えて名刺を渡すことで、本気でやっているんだと認知してもらえ仕事依頼をしてくれるようになります。「踏み出したい」と「踏み出す」は全くの別ものなんだなということを、自分の名前で活動しているときに思いました。

価格設定に関しては、複業当初は手探りだったので、お試しもかねて「月1時間5万円でウェブコンサルを試しませんか」と提案していました。そうしたときに、ありがたいことに多くの方から依頼がありました。「リッキーさんに頼んでよかった」と思ってもらえるように、本業で感じていた課題感を複業で行なっていた研修に活かしたり、複業で得た経験を本業の講演で活かしたりしていたら、これまでに増して多くの方にとても喜んでもらえる実感が湧いてきたんです。

まずは「宣言」をして、期待を超える成果を責任を持って出し続ける。そうやって繰り返していくうちに、自分の「型」や事業の「相場感」が徐々に身についていきます。

ー一つずつ積み重ねていくのは大事ですよね。

そうですね。正直、最初は自分のやっていることが、どれくらいの価値があるのかなんてわかりません。色々試して、その都度相手の反応や満足度を見ながらニーズを満たしていくのが重要だと思います。自分が世の中から何を求められているのか。それをしっかりと見つけることで、自分の中の複業メニューや相場感が確立していくのではないでしょうか。

自分の「強み」で複業を広げていく

ー現在は独立されていますが、複業はどれくらいの期間していたんですか?

複業をはじめてから、半年後には独立していましたね(笑)

ーすごいスピード感ですね。

そうですね。でも「なぜ半年間も、お客さんが継続して自分に頼んでくれたんだろう?」という理由を考えて突き詰めていったときに、すごい自然な流れで独立し事業になったなと思っています。

まずは少額でもいいから「お試し」でやって、その中でお互いがやりやすい金額で徐々にメニュー化していく。これが継続した結果、複業で稼ぎ独立まで持っていく理想的な流れかなと思います。 自分の場合は、家族の問題もあってワークライフバランスも見直さないといけないタイミングだったので、思い切って「復業から独立に至る」という選択肢を持てた事は本当に幸運でしたし、それを認めてくれた前職や妻には感謝しています。

ー複業初期は、どのようにして仕事をもらうことができたのでしょうか?

まずは、これまでのキャリアで成し遂げてきた実務の実績を見せられる範囲で見込みのお客様に説明して、「自分が何をしてきたのか、自分は何者なのか」を理解してもらうようにしていました。

それを伝えた上で相談がきたら、相手の「困っている事」をヒアリングで聞き出し、自分にできる範囲内で穴を埋めるための提案をしていました。当然ですが、自分が苦労せずに出来る事で、相手にとって価値のあるものがすり合わせられたら「契約成立」という形になると思います。

ー面白いですね。そのような複業をどんどんスケールさせていく時に、どのようなスキルが必要だと思いますか?

「推進力」ですかね。意外にも、マーケティングの純粋な知識よりも、こっちのスキルの方が大事で、このスキルを備えると「この企業規模だったら、こういう根回しをして案件を推進したほうがいい」みたいな勘所を持てるようになります。自分の場合は、まったく事業規模の違う複数の企業で管理職の経験があったので、それが役に立ちました。これを理解していると、社内の意思決定者に客観的に介入でき、合意形成ができるようになり、自分が手にかける範囲が徐々に広がってくるんです。

現場レベルで発生しているリスティングの運用やウェブのディレクションの課題に触れる前に、「企業の根本的な課題」にアプローチして事業全体を推進し現場レベルまで実際に触れるという価値を提供できていることが、いま、私が重宝いただいている理由かなと思います。 マーケティングの「メソッド(知識)そのもの」は調べたり本を読んだりすればある程度は得ることができます。それを使うことは大切ですが、それ以上に「その企業の文化」をいかに「当事者として」理解しているかが重要だと思っています。経営層とはこういう言葉で話し、現場とはこういう言葉で話す。このように言葉や行動をチューニングしながらコミュニケーションをとりながら、マーケティングスキルを生かすことが、複業という形で関わっていく中で一番うまくいくと実感しています。

好きという気持ちが継続につながる

ーリッキーさんは理想の本業と複業の関係を実現していたかと思うのですが、これから複業を始めようと考えている人にアドバイスをお願いします。

まずは自分のスキルを売ってみることだと思います。あれこれ考える前に、それほど高くない金額でやってみると、「自分の社会的な身の程=市場価値」がわかるんですよね。自分のスキルに社会はどれくらい払ってくれるのか。まずは、それを知るところから複業は始まると思いますね。

ーなるほど。複業でやるならこれがおすすめ!とかはありますか?

僕が20代の駆け出しの時は、ウェブサイトの構築に自信があったので、アフィリエイトをやっていました。アフィリエイトは怪しいと勘違いされやすいですが、実際は全くそんなことはありません。アフィリエイトをやることで、ホームページを一から作り商品をどう見せて買ってもらうかなど、ブランディングから販売までの全プロセスを自分一人で学び、体験することができるのです。今だったらYoutubeやInstagramでのSNS展開などもありますよね。

ーアフィリエイトから学べることはたくさんありそうですね。

私がお客様のお手伝いをする時、基本的には広告を出す側になりますよね。そうなったときに、発注する人間としてどういう仕組みなのか、知らないといけないのは当然なのですが、その広告を見ているユーザーたちがどのように感じるのか体験しなければ、包括的に提案出来ないと思うんですよ。

だから、実践を通す中でこういう広告だとCV率(コンバージョン率)が高くていいなとか、「本業で体験したことのない領域」も、趣味とか復業でやっているうちにわかってくるんです。僕は、最終的には当時アフィリエイトで月2〜3万円稼ぐことができましたが、これも実績になりますし、そういう実績が複業を始めるときの助けとなり自信になってくれます。

ーアフィリエイトが複業に活きたんですね。

たとえば、ですけどね。私の場合は、そうでした。でも、業界の人間に「試しにアフィリエイトやりなよ」と100人に話してもほとんどやらないし、やったとしても続かない。 なぜなら「好き」じゃないから。 趣味が複業になり、ゆくゆくは本業になるのは、それがいかに好きかってことがあると思います。お金が稼げなくても「これは経験になるぞ!」とコツコツと前向きに取り組む「覚悟」がないと、そもそも続かないと思いますね。

ー好きという気持ちが継続につながる。

絶対にそうだと思いますね。複業って、好きなことをやっていたらお金になったってことだけです。今やっている趣味などが転換してマネタイズできたというのが、理想的な流れだと思います。複業を始めた時点では自分の持っているスキルしか売れないとしても、続けていくうちに全く予想していなかった学びがあり、売れるスキルが増えていくことがよくあります。

だから最初は、今自分が持っているものを「いかにマネタイズするか?」。それを意識して取り組んで欲しいと思います。

ーありがとうございます。では最後に、一言お願いします。

マネタイズ、マネタイズと言ってきましたが、やはり複業をやるときは、お金稼ぎに焦らないでほしいです。すぐマネタイズしようとして、短期高収入の言葉に惑わされすると、結果的に疲弊してしまいます。好きでもないのにやったり、実力が伴っていないのに取り組んだりすると確実に失敗するし、下手したら信用まで失ってしまいます。

20代の新卒の人がすぐに複業を始めたがりますが、本業をまずしっかりやってほしい。本業が複業の原点になるので、しっかり業務を行なって、余力が出てきたら複業を始めることをおすすめします。

取材後記

最近の流行りとも捉えられる複業ですが、だからこそ「本当にそれをやることが好きなのか」と自分に問いかけるのは大切だと、リッキーさんのお話を聞いていて感じました。

自分のやりたくないことをやる複業では、ただ疲弊するだけ。本業にも影響してしまうことが考えられます。 ぜひ、リッキーさんのお話を参考にして、自分が複業で何をやりたいのか、そして何をやれば継続できそうなのか考えてみてください。

 

この記事を書いてくれたひと

この記事を書いてくれたひと:なまっちゃ/ Namatcha

なまっちゃ/ Namatchai

ブロガー・ウェブデザイナー。女子大生のころから複数のメディアを運営。イベントレポートや商品・サービスの紹介記事を書くことを得意とする。最近は大好きな抹茶の商品開発や企画も行なっている。

Twitter:@namatcha_

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