HARES.JP編集長の西村創一朗(@souta6954)です。
「二兎を追って二兎を得る生き方」を伝えるライフスタイルメディアHARES.JP。
共有カレンダーアプリ「TimeTree」を運営するJUBILEE WORKSというスタートアップ企業の創業メンバーの藤木裕介さんが「育休を終えて」というタイトルで社内イントラ(Qiita:Team)で公開された記事を、特別にHARES.JPに寄稿頂きました。
*きっかけはこちらの会社訪問でした。
参考:TimeTree運営のJUBILEE WORKSさんのDIYオフィスが素敵すぎる。
「スタートアップ」という、一見育休の取得が難しく思われがちな職場において、創業メンバーという責任のある立場で育休を取られた藤木さんのリアルな育休体験記を、ぜひご覧ください。
育休を終えて
この育休中の間で何が起こっていて、どんな良いこと、大変だったことがあったか、リモートワークをするのにはどんな課題があるのか、などを文章にしてみました。
これからパパママになるメンバーの役に立てば。技術的な内容ではないですが、開発者ブログのネタにもなるかも。
「愛情曲線」を死守せよ!
妊娠が分かってすぐ参加した自治体のパパママ教室で、最初に受けた講義に出てきた愛情曲線が強烈に印象に残っています。つまり大変な乳幼児期に夫が育児参加をしたかどうかでその後の夫への愛情が大きく二分するという調査結果です。
子育ての時期なんてたかだか20年ほどしかありませんが、一生連れ添う妻からの愛情を受けることができなくなってしまうなんて耐えられません。
前職では、周りの知人たちが積極的に育休を取っていたこともあり、苦渋の決断でしたが、育休を取得することを決めました。
初めての連続
産院の入院期間は5日間と非常に短く、あっというまに退院となり、ろくに引き継ぎもできないまま育休が始まりました。妻のお母さんが日中家に来てくれたのですが、普段はフルタイムで働いている方なので、お母さん自身の休みもなかなか長期間は取れず、最初の1週間しか来てもらえませんでした。
僕らの両親はどちらも還暦を迎えていますが、まだまだバリバリ働いており、たとえ里帰り出産をしたとしても、親御さんにフルコミットで面倒をみてもらえる家庭は少なくなってきていると思います。
赤ちゃんはこの世界が初めてだらけですが、僕らにとっても育児は初めてのことだらけです。妻のお母さんの手ほどきを受けながら、育児スキルを身につける必要がありました。オムツ替え、お風呂、ミルク、そして寝かしつけ、と授乳以外でも父親のできるタスクはたくさんあります。
ミルクをあげる量や、肌のトラブル、ゲップのさせ方など、時には育児書やネットの情報に頼りながら、お互いに日々少しずつ成長していった感じです。
想定外のタスクが続々と
休みを取っているといっても、まだ起業したてのベンチャーですし、のんびり遊んでいるつもりはありません。育休を取る前に立てた目標は、育児タスクを効率的にこなし、仕事も勉強もきちんとすることでした。正直なところ、オムツ替えや寝かしつけなどの純粋な育児に関するタスクはそれほど複雑ではないため、ほぼ体力勝負という感じでした。しかし、育休中は想定外のタスクがたくさん発生し、目標は思ったように進めることができませんでした。
まずは、毎日の食事作りです。せっかく育休をとっているのだからと、できる限り3食作りました。クックパッドにはかなりお世話になり、スーパーで安い野菜があるとつい買ってしまうようになりました。料理をするのは楽しいのですが、とにかく献立を考えるのは大変です。世の中のお母さんはすごい。限られた調理器具と食材で最適解を探し、しかも平行にいくつもの温かい料理を作らなくてはいけないので、料理というものはパズルのような作業だと思います。
出産後の1ヶ月目は妻も子供もまだ外出することができません。練馬区の保育園の申し込みが12月頭だったため、申し込みをするにあたって保育園を見学をする必要があり、僕だけでいくつか見学周りをしました。保育園の申し込みはまったく煩雑なもので、少子化が進む理由も納得できます。
新生児は3時間ほどのサイクルで授乳をします。そのため真夜中にも泣きますし、必然的に僕ら夫婦は寝不足になりました。幸い泣き続けているわけではなく、昼間にも数時間寝てくれる時間があったので、夜に備え体力を回復させるために昼寝は欠かすことができませんでした。勉強や仕事がその間にできるかと思ったのですが、日々の疲れが出て一緒に寝てしまうことも多かったです。
無理はしない
最初の数週間が過ぎた頃、妻の産後鬱のような症状がありました。産後の体も回復していない中で、慣れない育児を続けて体力も限界を迎えていました。また育児方法は右も左もわからず、すべてのものごとの良し悪しを結局ネットで判断するのが精神的にもかなりきつかったようです。
そんなときに少なくとも自分が側に居続けられたのは本当によかったと思っています。辛い時はリフレッシュが必要だと言い聞かせ、翌日半日僕が面倒をみて、妻はデパートで爆買いしてきてもらいました。もしこの時期僕が働いていて、妻の異変に気付かなかったら…と思うとゾッとします。
子供の成長、自分の成長
生まれたばかりの頃は、泣くか眠るかしかしていなかったのですが、最近では目を合わせると笑うようになったり、声を出して笑うようになりました。昨日までできなかったことが急にできるようになるぐらい、赤ちゃんの成長は早いもので、それを毎日間近で見られたことは本当に幸せだと思っています。
子供の成長もそうですが、自分自身も成長していると実感できる面がいくつかありました。まず、育児スキルの成長を妻と一緒にスタートが切れたことです。もし仕事をしていたら育児は妻に任せきりになり、途中で参加しようとしてもレベルが違いすぎるため戦力にならず、そのまま差が開くばかりだったと思います。
そして寝ている顔は本当に愛おしく、この子のためならなんでもできるという気持ちが心から湧いてくるものです。多くの先輩パパさんたちが言うように、この気持ちは確かに仕事の原動力になると思います。
リモートワークの課題
子供が成長するにつれて、ずっと見ていなければいけない時間もほんの少しずつ減り、仕事に時間を割けるようになってきました。
とはいえ、まとまって時間が取れるのはすべての家事を終え、子供を寝かしつけたあとだけでした。実際にこなせた業務タスクはSlackへの返事と、コードレビュー、そして小さな案件や、本体スケジュールに影響されないようなタスクのみでした。
どうしても育児が優先になってしまうので、育児タスクが入った途端に作業が中断します。Slackにも一日中張り付いているわけにもいかないため、リアルタイムでコミュニケーションを取ることはかなり難しかったです。
幸いSlackやTrelloでやっている案件やデザインが流れてきていたので、会社で何が起きているのかをぼんやりとは把握できていました。しかし、小さなMTGは議事録も残りませんし、設計資料や開発経過などは共有されないことが多く、隅々まで把握できるわけではありません。
また、休みをもらっている手前、色々とこちらから要求するのも申し訳なく感じてしまうため、気になっても自重してしまうことがありました。
その結果若干の疎外感というか、やはり業務の一線から離れてしまっている感がどうしても出てしまいました。こんな状態ではなかなか積極的な開発や業務改善もできません。これからも定期的にリモートワークをする可能性がありそうなのですが、そのために会社の仕組みや文化も変えていかなければいけないと感じています。

育休の会社にとってのメリットとは
業務の属人化を防ぐのには一役買っていると思いました。今回の件でいろいろな資料を整備したし、タスクの自動化にも注力しました。
そして、やはり大きいのは会社へ愛着の向上だと思います。会社が個人の人生を助け、応援してくれるから、自分も人生をかけて会社に貢献をする気持ちが生まれます。
そしてこういった体験を社内外に共有することにより、よりよい人材が集まり、会社が成長していくのではないかと思いました。
これから
保育園に入れるかどうかまだ分からないですが、保育園が始まる4月までは妻が日中一人で子供の面倒を見ることになります。
育児への慣れと子供の成長によって、今までよりかは手がかからなくなったとはいえ、今までの二人三脚の生活から一転、一人で頑張ってもらわなくてはなりません。
しばらくは早く帰らなくてはいけなさそうですし、以前のようには残業は難しくなると思います。そのためにはよりいっそう業務の効率化やリモートワークの整備をしていくのが重要だと思っています。
