初めまして、あつたゆか(@yuka_atsuta)です。平日はサイボウズでプロモーションの仕事をしています。

さて、就活の本格的なスタートが間近になってきた今日この頃。そろそろ学生はインターンやOB訪問に、行ったり行かなかったりする時期だと思います。

選べるのは1社のみなのに、いろいろな会社や業界に触れる就職活動。今回は私が就職活動をしていた頃、「就職先を1社に絞る」ことがすごく苦手で、悩んでいた話を書かせていただきます。

「あれ、社会人って楽しいかも」世の中に価値を提供する喜びに気づかせてくれた就活

皆さんはどんな就活生時代を過ごしていましたか?私自身、決して意欲的な就活生とは言えませんでしたが、世の中の仕組みを知ることができる就活を楽しく感じていました。

ふと会社を調べたとき、「普段何気なく使っているサービスの裏に、これだけ多くの努力があったのか」「全く知らない業界だけど、こんなに熱い想いを持って仕事をしている人がいるのか」と、頭によぎる。それまで与えられた「サービスを消費する世界」しか知らなかった学生の私にとって、「世の中に価値を提供する世界」は新鮮に感じられました。

「好きなことができるのは学生時代だけ」と狭い視野を持っていた私が、「社会人も楽しいのかも」と少しずつ前向きな気持ちになれたのも、就活で素敵な企業や社会人に出会う機会に恵まれたおかげです。

しかし、就活を楽しく感じていたからこそ、辛かったことが1つだけあります。それは「就職する会社を1社に絞らなければいけないこと」でした。

ビジョンに共感する企業はたくさんある。でも、選べるのは一社

当時は2015年。景気が上向いており、”学生の売り手市場”が顕著になっていた頃だったので、企業から学生が複数の内定をもらうことは決して特別なことではありません。10社以上から内定をもらっていた学生もざらにいました。私もご多分に漏れず、4社から内定をいただいていました。ところが「あとはどこに行くか決めるだけ」という段階で、深く悩んでしまったのです。

私の就活の軸は「フラットな社風」「性別、国籍関係なく活躍できること」「ビジョンに共感できること」の3つ。

内定をいただいた会社は、多少差はあるものの、おしなべて決めた軸の基準は満たしていました。また、どの企業も、事業なり組織なりポジションなりが魅力的。「可能であれば全部関わりたい」という心持ちだったのです。

「働きたいと思う企業が複数あるのに、1社しか選べない」状況は、想像以上に私を苦しめました。企業からは毎日のように「早く1社に絞りなさい」と催促の電話がきます。

当時はなぜ自分が1社に絞ることが苦手だったのかわかりませんでしたが、今振り返ってみると、自分は「複数のコミュニティで活動すること」が当たり前だった学生時代とのギャップに戸惑っていたのではないか、と感じます。

皆さんも心当たりがあると思いますが、大学生のときはサークルやバイト、留学にゼミなど、自分が選んだ複数のコミュニティで、得たい経験や知識を得ていた人が大半かと思います。

どんな人にもそれぞれ優先順位があったとは思いますが、「バイトに力を入れたい人」の学生生活が100%バイトになることはないですよね。他にもゼミやサークルなど、できる範囲で他の活動にも関わっていたはずです。

でも就活になると、魅力に感じる選択肢が複数あるにも関わらず、急に「1社だけにしなさい」と迫られます。

納得できないと行動できないタイプの私は、周囲が内定先を次々と決めている中でたったひとり、就職する先を決断できずにいました。企業の採用担当からしたら、相当迷惑な内定者だったでしょう。

「さすがにこれ以上待たせてはいけない」。

焦った私は、「内定をいただいた複数社が、自分の軸に対して10点満点で何点取れているか」を機械的に計算するという強行手段を取りました。客観的な数字を出せば、頑固な自分も納得できるだろうと思ったのです。

好きな企業に点数をつけて1社ずつ切り捨てていく作業は苦しかったですが、ようやくそこで「サイボウズ」に絞ることができました。

1社に絞るまでも長い時間とエネルギーを要しましたが、行かないと決めた企業に内定辞退を伝えることはそれ以上に胸が締め付けられました。内定辞退の旨を伝えるたびに採用担当から「一緒に仕事したかった」と声をかけられ、胸が苦しくなったのを今でも覚えています。

「実は、社会人は複数社で働ける」ふと訪れた複業の転機

「好きな会社に全部関われればいいのに」という漠然とした想いは、なぜか社会人になって叶うことになりました。

新卒で入社したサイボウズは「チームワーク溢れる社会を創る」をビジョンとしており、企業の働き方を変えるITツールを提供しています。

「現場を知りたい」と希望して、入社して1番最初に配属されたのは営業。「なんで1社でしか働けないんだろう」と就活していた頃はモヤモヤしていたのを忘れてしまうほど、自分のミッションに没頭しました。

しかし、年間300社以上の企業を訪問して私がぶつかったのは、「ツールだけで企業の働き方を変えるのは難しい」という問題でした。

「サイボウズを導入すれば、クラウド上でいつでもどこでも効率的に業務ができるようになります」と提案しても、「リモートワークなんて導入しても、サボるに決まっている」「うちはみんな会社で仕事をしているから、そんなツールはいらない」というお客様が少なくないことに気づいたのです。

もちろん全ての企業が柔軟な働き方をするべきとは思いませんが、そういう企業ほど人手不足に悩まされており、非効率な働き方を変えないために残業が多かったり、離職率が高かったりといった課題を抱えていました。

「そもそも社会全体に多様な働き方が浸透しないと、サイボウズ製品の売上を飛躍的に伸ばすことは難しいのではないか」強い危機感を覚えた私は、プライベートの時間を使ってでも「多様な働き方をする人を増やす活動」を始められないかと方法を探りました。

育児や介護を抱えながらも働く人、週3しか会社にこない人、完全にリモートワークの人、複業をしている人。そんな人を増やしていく活動をすることで、多くの企業が悩む人手不足の問題が緩和されると同時に、自ずとITの力が必要になり、サイボウズ製品のニーズも増やすことができるのではないかと考えたのです。

社会人1年目のヒヨッコな自分にできそうなことは「多様な働き方の実現を目指す企業を手伝うこと」でした。

こうして私は、サイボウズでフルタイムの正社員として働きながら、空いた時間でライターとしてベビーシッターサービスの「キッズライン」で育児に関する記事を書いたり、「HARES」に携わったりするようになったのです。

サイボウズは「チームワーク溢れる社会を創る」、キッズラインは「日本にベビーシッター文化を広める」、HARESは「二兎を追って二兎を得られる世の中をつくる」。

一見どのビジョンもバラバラに見えますが、「多様な働き方を実現する」という点では、どの企業も目指している方向は似ています。日本にベビーシッター文化が広まり、二兎を追って二兎を得られる世の中が実現できた先には、サイボウズが目指す「チームワーク溢れる社会」が待っているように思えるのです。

もともとは「本業に貢献したい」と思って始めた複業。気づいたら、就活生の頃には諦めていた「好きな会社にできることなら全部携わりたい」という願望は叶っていました。

私たちはいつも「A or B」という選択に悩まされている

1社に絞ることを強制されることの何がそんなに辛かったのだろうか。就活から2年経った今、ようやく言語化できるような気がしています。私は「どちらか一方を選び、もう一方を捨てよ」という状況に違和感を覚えていたのです。

「二兎を追うことすら許されない」ことで引き起こされる問題は、就活だけにとどまりません。子育てとキャリア、やりたいことと安定、私たちはいつも「どちらかを選び、もう一方を捨てよ」という選択に悩まされています。

「二兎を追いたい」と思ったときに、「二兎を追って二兎を得られる人生」の助けになるのは、ITかもしれないし、ベビーシッターかもしれないし、複業かもしれません。いずれにせよ、「二兎を追って二兎を得られる世の中」を創るためのインフラは徐々に整ってきているように感じます。

学生時代の自分のように「なぜ1つしか選択できないのだろう」と思った人の力になれるよう、私自身がパラレルな働き方をしながら、少しずつでも生き方の選択肢を増やしていく活動ができればな、と思います。

筆者から読者へ

このコラムを書こうと思ったのは、後輩から「内定先をどちらにしようか迷っている」という相談を受けたことがきっかけでした。

「いま私はいろんな会社で働いているよ」と後輩に伝えると、「そういう働き方もあるんですね」とはっとしていた様子。

私たちは「どちらか一方を選ばなければいけない」と思い込みすぎるあまりに、「どちらもやる」という選択肢を無意識のうちに外してしまうことがあります。

「どちらもやる」という選択肢があってもいい。就活生の方だけでなく、一人でも多くの「二兎を追いたい人」にこのコラムが届くといいなと思います。

この記事のつくり手

この記事の作り手:あつたゆか / Yuka Atsuta

あつたゆか / Yuka Atsuta

“ライター・編集者。働き方改革に取り組む人を応援する「ワークスタイル百科」(https://cybozu.co.jp/sp/workstyle)を運営。サイボウズで働き方改革に関するプロモーションをしながら、個人でもキッズライン・働き方メディアFledge・HARESなど複数媒体で執筆中。編集とプロモーションのお仕事が大好き。”

Twitter:@yuka_atsuta | Facebook:あつたゆか

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