2020年6月25日パラレルプレナージャパン公式イベント「パラレルキャリアを活かした大企業イントレプレナー人材の話を聞いてみよう!vol.2」がZOOMを利用し、オンラインで開催されました。パラレルプレナーとは、パラレルキャリア(複業)で得たものを活かして、イントレプレナー(社内起業家)として本業でも新しいことにチャレンジしている人のことです。

パラレルプレナー3名によるLT(ライトニングトーク)、パネルディスカッション、交流会と内容が盛りだくさんであった本イベントのレポートをお届けします。

 

パラレルプレナーのLT

パラレルプレナーとして活躍されている3名のライトニングトーク。本業でされているお仕事、複業を始められた理由や副業を通して実現したいこと等をお話いただきました。自ら行動し意欲的に活動されている3名は本業でどのような社内イノベーションを巻き起こしているのでしょうか。

複業のご縁が本業に繋がった

神谷 渉三(きいろ)さんは本業ではNTTDATAで新規事業やDX推進、NTTDOCOMOでM&Aやアライアンスに従事されています。

そんな中、複業では教育系の取り組みを複数行われています。小中高生がオンラインで起業家教育を学ぶことができるTimeLeap Academyの立ち上げメンバーとして活動。また、小学生の子供に大人と交流の場を提供するNei-Kidを立ち上げられ、経済産業省「始動」2017SVに選抜・2018優秀賞を受賞。直近では株式会社I’mbesideyouを登記され、ITの力で教育へアプローチする試みをスタートされました。

「複業を始めた理由は息子だった」というきいろさん。息子さんが小学校に入った時あんまり笑わなくなったことをきっかけに、日本の小中学校にはいまだに様々な問題があることを知ったそうです。息子や息子の友達たちを笑顔にしたいという思いから教育系事業に取り組むことに。「社会全体を学校にする」という共通のミッションの元、それぞれの事業で異なったメンバーと活動を続けられています。

複業でのご縁がきっかけでNTTDATAの仕事に繋がったこともあると語るきいろさん。自分自身が事業を経営しはじめたことでベンチャー経営者に対するリスペクトが生まれ、NTTDATAでのコラボレーションや出資をする際経営者の方々と円滑にコミュニケーションがとれるようになったそうです。

 

新しくて面白い価値が増えていって欲しい

つづいては加藤さんのLT。

本業では楽器事業会社にて、ボトムアップの新規事業を推進されている加藤さん。副業ではTumuguLLCの代表 として「伝えることを民主化していく」をビジョンに事業コンサルティング、ブランディング、M&Aアドバイザリーを中心に事業変革をサポートされています。またその他にもゼネコン、生活用品製造などの会社の顧問を複数されているそうです。

TumuguLLCではイノベーションできる人を社会にいっぱい育てることで面白い価値が世の中に増えれば、と思っているとのこと。新規事業の伴走型サービスという形で、日本の産業において新しい消費や新しい価値、新しい市場を作っていくことを目標とされています。

大企業はタスク型の仕事が多いため、新しいことを生み出す知見が不十分だと感じると言う加藤さん。副業はイノベーションを作り出せる人材を増やし、新規事業が生まれやすくなるメリットを持っていると感じているので、今後副業が広まっていけばと考えられています。

 

自分にあった働き方が今の働き方だった

LTの最後はロート製薬に勤められている菊池 容子さんです。化粧品会社の商品企画に携わり、その後ロート製薬に転職された菊池さん。スキンケアのマーケティングを担当した後、現在は4年ほど広報・CSV推進部にて、統合報告書の制作やコーポレートコミュニケーション・CSRを推進されています。

 

東日本大震災の後に復興支援に関わる中で、東京にいながらも地元である宮城県との関わり方を模索しはじめた菊池さんが出会われたのがMYSH。現在は宮城の食と日本酒を広めるためのMYSH Sake Barの女将として働かれています。

好きなことが仕事になるのも素敵だけれど、ロート製薬でしかできないことがあるからこそ副業という選択を選ばれた菊池さん。本業でしかできないことにチャレンジしつつ、スタッフ全員が兼業しているというMYSHも自身のチャレンジする場となっているとのこと。

 

また、並行して今年より東京オリンピックの大会組織委員会でも働き始めたそうです。「ここで学んだことを本業に持ち帰れるよう、しっかり勉強してきます」と意気込みも語ってくださいました。

 

パラレルプレナーのパネルディスカッション

現在されている本業と副業の内容や本業と副業との関係性をお聞きしたところで、100名以上の参加者から募った質問を、登壇者の3名にお答えいただきました。

ー副業に対して、本業の職場の方々から理解はいかがですか?

きいろさん:

副業始めようとした時に社内の規定を調べたところ、常務が承認権限を持っていると知り常務に直接アプローチして副業に対する理解をいただきました。

私の事業はソーシャルグッドであったこともあり、本業に支障をきたさないのであればいいのではないかと捉えられています。

加藤さん:

基本的に社内ルールでは副業が禁止とされています。そのため、人事部の方や上司と2~3ヶ月かけて話し合いし、許可をいただきました。

菊池さん:

2016年から時間外であれば副業が認められました。オリンピックの組織委員会に関しては1ヶ月半のお休みをもらう必要があったため、その間のスケジュールを作成・調整し、改めて上司に許可をいただきました。この4年で社内でも副業に対してポジティブなイメージがついてきたこともあり、社外に出ていこうといった意識を持つ人が増えてきたなという風に感じています。

 

ー副業で活躍しているにも関わらず、本業をやめない理由は?

菊池さん:

本業と副業では全然違う仕事をしており、どちらも楽しいので続けています。ロート製薬だからこそできる仕事、ロート製薬ではないとできない仕事がたくさんあるのが大きいと思います。

加藤さん:

大企業の中でできることが限られていると感じる部分もあるので、本業と副業、両方が必要だなと感じています。同時に菊池さん同様、大企業の内部にいないとできないこともあるなと実感することも多くあります。副業である事業コンサルティングをするにあたっては、企業の仕組みやキーパーソン等が本業を通して常にアップデートすることが大事になっているのです。

また、本業では回ってこない仕事が副業で行うことができ、その経験が本業にまた還元されているのも大きいです。本業で伸ばしたい能力が伸ばせないときに、社外で伸ばせているという状況ですね。

きいろさん:

本業を辞めて、副業にフォーカスしてもいいかもと思うことも正直あります。それでも本業を続ける最大のメリットは出資する側の立場・気持ちを理解することができるからです。本業では出資する側、副業では出資される側と両方の立場を同時に経験できることは大変貴重な経験だと思っています。

ある程度副業で成果がでてくると、両立が難しいこともあり本業を辞める人が多いかと思います。しかし私はそれでも本業を続けることでNTTグループに貢献できる部分が多くある、若手にも良い影響を与えることができると考え、複業を続けています。

ー副業の自分と本業の自分。複数の自分に混乱することはありますか?

加藤さん:

個人のミッションを本業・副業の全ての領域でやっているので混乱することはありません。ただ、本業・副業において社員・顧問・CEOと立場は異なるので、切り替えが難しいなと感じることはあります。

きいろさん:

最初は本業と副業を切り離して行動していましたが、最近は割り切るようになりました。とある人が「私は私がだから私を変えようとすることをみんなに諦めて欲しい」と言っていたのを聞いて以来、臆せず本業でも思っていることを行ったり、やりたいことをやるようになりました。

菊名さん:

私も混乱することはないですね。本業は業界的にも職種的にも堅めで細かい確認作業等が多いですが、副業はチャレンジフィールドとして使っていいという雰囲気があるので伸び伸びと本業でできないチャレンジもさせていただています。

 

ー副業を始めて収入にはどれくらい変化がありましたか?

きいろさん:

収入を目的として複業している訳ではないので、本業がメインなことに変わりはありませんが、副業で月2桁くらい収入があります。また、キャッシュに限らず、株式で報酬をもらっているケースもあります。

加藤さん:

私も基本的に収入のために複業している訳ではありません。数億円程度の売り上げであれば副業で続けられるのでこのまましばらくは継続する予定です。

菊池さん:

私の場合は起業した訳ではないので副業はアルバイト程度の収入になります。私も収入のために副業している訳ではなくチャレンジする場を借りているという感覚が強いです。

 

ー副業での失敗談があれば教えてください。

菊池さん:

副業での失敗は特に思いつかないです…副業では失敗することよりもチャレンジすることを大事にしています!

きいろさん:

私の場合は、正直、副業では失敗しても死なないという感覚もあるので失敗しかしていません。もともとbtobなのに副業でbtocという畑違いなことをはじめたので失敗も必然的に多かったのかなと思っています。

加藤さん:

私は失敗してきていないことが失敗かなと思っています。人・環境に恵まれ、失敗することがなくここまでやってきましたが、同時にそれは失敗するほどのリスクをとれていないのかもしれないです…

 

ー副業を始めたことで本業の会社との向き合い方・見え方に変化はありましたか?

きいろさん:

副業を始めたことで自分の中での選択肢が確実に広がりました。本業で提案したもののできないことがあると、やりたいことができなくてイライラしてしまい会社の悪い部分ばかりにフォーカスしてしまいます。本業でできないことが副業でできるようになり、気持ちに余裕が生まれました。

菊池さん:

社外にでたことで会社を客観的に見れるようになりました。また、副業が本業と異なる職種なので会社の全体も見れるようになったと思います。

加藤さん:

副業をしていなかった時はどうしても隣の芝生は青い状態でしたが、副業を始めたことによって隣の芝生が必ずしも青くないことがわかり、会社のいい所をみつけられるようになりました。

 

ー今後、本業・副業を生かしてこんな人になりたい等の目標があれば教えてください。

菊池さん:

両親や会社の方々に応援していただけているからこそ本業・副業両方を頑張ることができているので、私自身も周りの人の挑戦を応援したり、サポートしたりできるような人でありたいなと思っています。

加藤さん:

伝えることの民主化が進み、イノベーションが世の中に浸透したらいいなと思っています。また、まだまだ仕事が辛いと感じている人が多いなと感じているので楽しそうに働く人が増えていってほしいです。

きいろさん:

「社会全体を学校にした人だ」と言われることを目指しています。本業と副業を駆使して実現させたいです。

3名のパラレルプレナーからお話を聞いた後は、ブレイクアウトセッション機能を活用した交流会が開催されました。登壇者と参加者でカジュアルに対話を行えたことで現在パラレルプレナーとして活躍されている方も、今後パラレルプレナーになりたいと考えている人にとっても有意義な時間となったことと思います。

今後もパラレルプレナージャパンは、パラレルキャリアを活かして、アントレプレナーとして枠組みを飛び越えた活躍をする人々を支援していきます。

 

パラレルプレナージャパンについて

パラレルプレナーとは、パラレルとアントレプレナーの造語で、パラレルキャリアとして外部の知識・経験・人脈を持ち、社内で活躍している人(社内起業家)たちのことを指します。5年前は9割以上の企業が副業禁止でしたが、今では副業解禁となった企業も多く、副業をすることへの認知は拡大しています。しかし、それだけではせっかくの働き方を活かしきれていないかもしれません。

本業を継続しながら新しいことにチャレンジし、経験や知識、ネットワークが得られるのなら、それらを社内に持ち帰ってイノベーションを起すことも可能です。「副業があったから実現できた!」という活動を社内でも引き起こせてこそ、副業2.0と呼べる活躍となるのではないでしょうか。

いまの日本に必要なのはそんな、「組織の力」に「個の力」が掛け算できるパラレルプレナーです。この存在を増やしたいと考えた複業家・西村創一朗をはじめとした有志10人が集まって活動しているのが、パラレルプレナージャパンになります。

 

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イベントファシリテーター:西村創一朗(Twitter

執筆:松本佳恋(ブログ/Twitter

 

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