「自分のスキルを活かして働く」スタイルが主流になってきた昨今。
1つの組織で働くのではなく、複業をしてパラレルキャリアをつくっていくことに憧れを抱いている方も多いのではないでしょうか。
今回、HARESでは『自分らしく働く パラレルキャリアのつくり方』の著者である三原菜央さんを招き、広報女子を対象としたミートアップを実施。
「『広報』は複業しやすい職業」と言う三原菜央さんはどのようなキャリアを築き、現在の働き方を確立していったのか。
「広報」の仕事に興味がある方、また現在広報で複業を考えている方、必見です!
〈文=ゆぴ(17)〉
【三原菜央(みはら・なお)】1984年生まれ。大学卒業後、専門学校・大学の教員として8年間勤務した後、不動産の広報PRを経て、Webのプロモーションを行うベンチャー企業に転職し、現在では大手事業会社のサービスPRを担当。『先生の学校』の開催やフィンランドの教育視察ツアーを企画するなど、幅広く活動中。
“広報”がパラレルキャリアをつくりやすい理由は?
もともと、私は新卒から教員として8年間働いていました。
しかし、あるときに「先生って、社会と全然繋がれていないな」と感じ、それが子どもたちに機会損失を招いているんじゃないか、と思ったことをきっかけに先生を辞め、不動産の広報から新たにキャリアをスタートさせました。
複業を始めたのは2016年の9月からです。『先生の学校』という「先生に新しい視点を届け、子どもと先生、両者の人生をより豊かにする」ことを目的とした活動がスタートでした。その後それに加え、企業の広報PRを業務委託で引き受けたり、フィンランドの教育に関するツアーをつくるなどのパラレルキャリアを歩んでいます。
まず、人生100年時代とかAIに仕事が奪われると言われる現代において、個人として代わりの効かない人材になることが大事だと思っています。
そのなかで、パラレルキャリアとはいわゆるお小遣い稼ぎを目的とした「サブ」の副業ではなくて、かける時間に差はあっても、重要度に差がない複業だと思っています。
そして、数ある業種のなかでも、「広報」は複業がしやすい業種だと思っています。それは、ナレッジが横展開しやすいことと、ニーズがあるというのが理由です。
以前、家入一真さんが「後回しにされがちだけど、たとえ社員が数名しかいなくても広報・PRは早めに入れたほうがいい」というツイートされていましたが、特にスタートアップ・ベンチャーは広報をできる人を探しているように感じますね。
では、そんな企業は現状、どのように広報を探しているかというと、
①人事・マーケ担当者が兼任
②未経験者を育てる
③PR会社・フリーランス・パラレルワーカーに外注
だいたいこの3つになると思うのですが、即戦力という価値を評価されて、まさにこの3つ目の需要が非常に高いと感じています。
PR会社というのは、どんなに安くても50万円以上の世界なのに対し、フリーランスやパラレルワーカーとなるとPR会社に依頼するよりも価格を抑えられますし、融通も比較的利くので重宝されているように感じます。
そして、複業研究家の西村さんも提唱されている上記のようなフレームワークがありますが、この3つの掛け算が成功する複業だと言われています。
・WILL(やりたいこと)
・CAN(できること)
・WANT(役に立つこと)
それでいくと、そもそも広報PRはかなりニーズがあるので、すでに広報PRのスキルを持っている人は、すぐにでも始められる複業だと思います。
クライアントを見つけるために、「言葉に出して伝える」
次に、クライアントの見つけ方ですが、これはとてもシンプルで、「言葉に出して伝える」ということに尽きます。
「広報をやりたいです」「知見を活かして複業をしたいです」というのを、自分が信頼している方や決済権を持っている方に伝えるようにしてください。
私の場合は、自分が好きな業種・業界でパラレルキャリアをしたいと思ったので、以前仕事でお世話になったクライアントが東京に出張に来る、というタイミングで「実はこれから複業を始めようと思っています」と打ち明けたことから初仕事が決まりました。
他にも、自分の好きな出版社がちょうどインターンを募集していたので応募したら、「あなたはインターンには申し訳なさすぎる」とそのまま契約することになった、という始まり方もありました。
なので、繋がりから見つけるのも1つですし、自分が好きでたまらないところにアタックするのも面白いかな、と思います。
商品やサービスはもちろん、その経営者に対して共感することがあれば、「なぜここでやりたいか」というのが熱を持って伝わるのでそんな一歩目を踏み出すのがオススメです。
私は、広報パーソンには「WHY型」と「HOW型」の2つのタイプがあると思っています。
WHY型とは、自分自身と会社の大義名分が完全に一致していて、その会社のビジョンや思想に心底共感しており、その会社以外の広報ができないタイプです。
一方で、HOW型というのは、広報という職種が持つ手段を強みとしており、どんなビジョンの会社でも広報という手段を使って仕事をすることができるタイプです。
このなかで言うと、私は「WHY型」の広報パーソンで、どんな会社の広報であっても柔軟に対応できるわけではないということがわかっていたので、ビジョンやサービスへの愛が止まらなかったり、経営層が働く仲間を大切にしているような会社に絞って案件を受けるようにしていました。
「WHY型」の広報女子は、まずはすべての案件を受けるスタンスでも良いですが、おそらく苦しくなることがあると思うので、慣れたら案件をきちんと吟味していってほしいな、と思います。
やりたい広報案件だけ呼び込むには?
では、やりたい広報案件を呼び込むにはどうすればいいのか。
教育革命家の藤原先生が、「1万時間×3の法則」を唱えているのですが、どんな分野でも、だいたい1万時間程度継続してそれに取り組んだ人は、その分野のエクスパートになるという考え方があって、それを3つ掛け合わせると100万分の1の人材になれるという法則です。
1万時間と聞くと私にはそんな時間をかけて取り組んだものはないと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、ここで大事なことは一旦自分のキーワードを決めて発信することだと思っています。
他人からどんなキーワードで第一想起されたいか、そんな考え方でキーワードを設定してみましょう。そしてそのキーワードを軸にSNSで発信したり、コミュニケーションを取ることが大事だと思っています。
自分はどんなキーワードで想起されたいかを考えるんです。
私の場合は「教育」「広報」そして最後の1つをフィンランドが好きなので「フィンランド」を軸に発信していきました。
すると、「フィンランドが好きな広報女子探してます」という連絡がきて、フィンランドの案件を相談されたことがあります。
なので、まず自分自身が広報であるというエッジを立て、それをやってみたい案件のキーワードと掛け合わせて発信していけば、自然とやりたい仕事を引き寄せることもできると思います。
心も体も健康的に複業するために
最後に、心も体も健康的に複業するためには、「時間の交通整理」は絶対にやるべきだと思っています。
そのなかでも、「手を動かすことを最小限にする」というのは重要です。
広報のなかにはプレスリリースを書いたり、メディアリストを作ってコンタクトを取る、という実務がありますが、それをやると時間が取られてしまいます。
そこでオススメなのが「コーチング広報・伴走型広報」です。複業先には未経験でも問題ないので広報担当者の方を必ずセッティングしていただき、その方に伴走しながら育てる、というスタンスの関わり方がいいと思っています。
せっかく関わるのであれば、成果を出すことはもちろん、その企業にきちんと広報のナレッジを定着させていくのが理想だと思っています。企業に資産が溜まっていかないことには、Win-Winにはなりませんからね。
Q. 本業もあるなか、限られた時間でどのように複業のやりくりをしていますか?
マイルールとして、本業中には絶対複業のことをやらないと決めていました。大前提本業が疎かになってしまったら、複業をやる意味がないと思っています。とはいえ、時間がないなかでやりくりするにあたって、「もったいない時間」がどこかに存在するんじゃないか、と仮説を立てました。
まず、通勤時間の30分間が使えそうだと思ったので、そこを作業時間に当てました。
何かを削らなくても、自分の時間の使い方を見直すことはできると思っています。たとえば行きの通勤時間は、スマホ1台でタスクをやると決める。そして、習慣化するには21日間かかると言われているので、まずは3週間それを続けて習慣化させてしまえば全然苦じゃなくなります。
あとは、「自分会議」というものを毎週30分~1時間必ずやっています。
今週はこれをしようという目標を決め、タスクの洗い出しをして、そのなかで通勤時間にできるものをスケジュールに組み込んでしまうんです。
人って自分のために時間とるのが苦手なんですよ。なので、意図的に時間をとって、自分の時間をうまく使えるように交通整理をしていってください。
Q. 広報で複業をする際、どのスキルが一番必要とされているのでしょう?
スタートアップであれば、すべてのスキルが役立つと思いますが、その中でもプレスリリースの作成はニーズがあると思います。プレスリリースは「お作法」が多くて、それを知らない方が多いので、意外と重宝されるスキルだと思います。
Q. 社外ではなく社内広報ばかりしているので、パラレルキャリアとして広報の仕事ができるのか心配です。
広報PRにこだわらずに、自分の強みをモジュール化してみてください。一概に社内広報といっても、得意なスキルは様々だと思います。
たとえば、社内の情報収集が得意な方もいるでしょうし、コミュニケーションが得意な方もいるでしょうし、わかりやすく伝えるライティングが得意な方もいるでしょうし、一言で「社内広報」と言っても業務を分解していくと、自分のスキルを可視化することができます。
たとえば、わかりやすく伝えるライティングが得意であれば、社内広報でなくてもライターとして複業をすることができます。ライターも需要の高いニーズのある複業だと思います。
私にとって広報PRは1つのスキルです。
複業に興味があるのであれば、まずは一度挑戦してみて、広報を複業でやるには重たすぎると思えば、サッと辞めて別の向いていることを探せばいい。複業は働き方の1つの選択肢でしかないと思います。
1つのことに縛られず、キャリアを柔軟に考えてみてください。
〈文=ゆぴ(17)(@milkprincess17)〉