「起業家をいかに増やすか?」

この命題は今やベンチャーキャピタルだけのものではなく、日本政府にとっても非常に重要な問いになっています。

今年6月に閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」では、「女性活躍」や「高齢者の雇用支援」、「イノベーション、ベンチャー創出力の強化」など多くの文脈において、「起業」がキーワードになっています。

開業率は欧米諸国の半分以下。

インターネットの普及が進み、スタートアップ・ベンチャー企業への若者の関心が高まっていて、起業も増えているのでは?と感じられますが、実際のところはどうなのでしょうか。

起業の多寡を定量的に測る指標として「開業率」がありますが、実際に開業率を見てみると、非常に残念な事実が見えてきます。

欧米と比べ日本の開業率は大幅に低い。中小企業庁によると、2013年度の日本の開業率は4.8%。07年度以降、4~5%で推移する。
96958a9e93819fe3e0ea9ae2968de0eae2eae0e2e3e7819a93e3e2e2-dsxmzo9115034030082015sha101-pn1-3 日本の開業率、欧米より低く 若き起業家育てる環境を(日本経済新聞)より引用
欧米の開業率が10〜15%であるのに対して、日本はわずか4〜5%。
昨今のベンチャーブームによって数値が増えているかと思いきや、実はほとんど増えていないのですよね。
残念すぎる。

起業が増えない3つの理由

ではなぜいつまでたっても日本の開業率は低いままなのでしょうか。
これに対しては政府も課題感を感じていて、『中小企業白書』(2014年版)では、「開業率が低い理由」として、
(1)起業意識
(2)起業後の生活・収入の不安定化
(3)起業に伴うコストや手続き
の3つだと分析しています。

これは全部その通りだなと思っています。

先日、「起業家教育のススメ」問いう記事が話題になりましたが、教育によって起業意識を醸成することが大切なのはもちろんです。
「起業に伴うコストや手続き」という観点においては、クラウド会計のfreeeが昨年リリースした「会社設立freee」など、昔に比べてだいぶラクになったと思います。
「お客様の声」にも取り上げていただいていますが、「会社設立freee」がなければ間違いなく挫折していたと思います。
%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-09-16-7-01-20 ただ、起業意識の醸成と、起業に伴うコストや手続きの簡略化だけでは開業率の上昇に限界があると思っています。

なぜなら、「起業後の生活・収入の不安定化」への不安が最大のボトルネックだからです。

では、どうすれば「起業後の生活・収入の不安定化」の壁を乗り越えられるのでしょうか?

本気で開業率を上げたいのなら「副業禁止」を禁止しよう。

日本の開業率が低い最大の理由は、この「起業に伴う漠然とした不安」だと思っています。

多くの企業において、利益相反がないことや守秘義務を守ることを前提に副業が原則自由とされているアメリカでは、「起業の大半が副業からスタート」しているといいます。

それもそのはず。

「いきなり会社員を辞めて起業・独立する」のは金銭的にも精神的にも不安が大きいため、まずは副業的に事業をスタートし、軌道に乗ってきたタイミングで満を持して起業、というパターンがある意味「王道コース」と言えます。

日本においても、実は多くの企業が「会社員時代の副業」から生まれています。

GREEは田中社長が楽天時代に、コロプラは馬場代表がKlab時代に、それぞれ副業的にサービスを開始したのち、軌道に乗ったことで起業・独立を決めたというのは有名な話ですが、こうしたケースは枚挙にいとまがありません。

にもかかわらず、日本では、9割以上の企業で原則「副業禁止」とされており、「まずは副業からはじめて・・・」という王道コースが認められておらず、まさに「清水の舞台から飛び降りる」かのように、大きなリスクを取らないと起業に踏み切れないのが現実です。

「起業」か「サラリーマン」か、問いう二者択一ではなく、「副業・複業」という第三の選択肢を増やすことによって、やりたいことや得意なことで副業・複業を開始する人が増え、結果的に起業意識が高まり、一定の収益が上がるようになれば、収入面での不安はある程度解消されるでしょうし、自信を持って起業・独立に踏み切れるはずです。

「副業禁止」については、自社の従業員を本業に専念させたいという企業側の狙いが大きいと思いますが、モチベーション3.0時代のいま、「副業禁止」で縛る北風アプローチよりも、「副業なんてやるよりも、本業に専念した方がずっと楽しい」と思えるような働きがいを用意する太陽アプローチの方がずっとワークするように思えます。

いずれにしても、「副業解禁」は起業家を増やし、開業率を上げる上で欠かせない「本丸」になると思うので、ぜひ副業解禁をどんどん進めてほしいですし、政府は企業任せにせず、副業解禁時代にあった法改正を進めてほしいですし、「副業禁止」を禁止するような法案なども本格的に検討してほしいと思っています。

HARESも「政府任せ」にせずに、経営者や人事責任者、専門家と一体になって副業解禁について検討・推進するワーキンググループ「副業解禁推進委員会」を立ち上げています。

近日、小規模の会合を設定する予定ですので、ご興味ある方はぜひ参加リクエストください。

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