近年、人材育成や社内改革の観点から、「イントレプレナー=社内起業家」を育成する企業が増えています。また、パラレルワーク(複業)として社外で起業したり、社外団体を設立したりする人も少なくありません。

 

そんな中、パラレルワークで得たスキルや経験をイントレプレナーとして本業に活かし、社内でイノベーションを起こそうとしている方がいらっしゃいます。そんな存在のことをパラレルプレナーと呼びます。

本記事では、「パラレルプレナーの時代」と題した連載で、パラレルプレナーとして会社の枠に囚われずに活躍する金子雄亮さんにお話を伺いました。

 

金子雄亮 プロフィール
2009年トヨタ自動車入社。工場の生産管理、海外拠点の人材育成企画、商用車カンパニーやモノづくり開発センターの立上げ、若手発の新事業企画などに従事。
社外では、ミクサプ・起業、アイデアプラス 複業COO、タイガーモブ・エバンジェリストとしても活動し、会社員発のパラレルキャリアに開拓中。

 

30歳、転職、自分の市場価値を考える

 

ー本日はよろしくお願いします。まずは、金子さんの本業について教えてください。

2009年、新卒でトヨタ自動車に入社しました。最初の5年間は、工場の生産管理を行っていました。千人規模の工場で、生産計画立案、部品発注管理生産稼働トラブル対応、物流改善などを行ったり。5年間で、上司にも育てていただき、一通りのことを経験したので、次は「全く違う本部の仕事がしたい。英語も使いたい」と、異動希望を出しました。

そして、次の職場が人事部で、海外トヨタの研修企画業務でした。日本本社勤務でしたが、26か国に点在するトヨタの海外拠点と仕事をしていたことから、ミーティングやメール・電話はもちろん、ランチ中の雑談まで英語でした。それこそ、飲み会まで英語だったんです…!私は当時、TOEICが300点のレベルだったため、聞き取りに必死で、いくら飲んでも全く酔えませんでした(笑)

そこで2年働き、次は、商用車カンパニー立上げに人事の立場で従事して、今年からは、モノづくり開発センターの立上げに携わっています

 

ー現在はどのようなお仕事をされているのでしょうか?

人事評価・異動・人材育成・組織など人事担当者としての仕事に加えて、働き方改革や若手発の新事業企画のために、社内セミナーやワークショップの開催なども始めています。トヨタは自動車製造業からモビリティーサービス業への転換期で、変革の真っ只中です。新しい発想や視点のもと、みんなでもっともっとワクワク働くために、興味関心をくすぐる切り出し方や工夫をしながらセミナー開催などもしています。社内では、これまでに計十数回、のべ4,500人ほどに参加いただいています。

 

ー仕事を成熟させながら、異動も良いタイミングでなさり、本業でも十分充実したキャリアを歩まれている印象です。いつから複業を始めたのでしょうか?

人事職に就いてから出会った上司が、意識を大きく変えてくれました。それまでは、会社の仕事に一直線でしたが、その上司のおかげで、社外にも視野が広がりました。様々な考え方、スキル、人物、本や記事など教えてしていただき、俯瞰的・抽象的な思考が出来るようになっていきました。そして、社内外関係なく、外に出る機会もいただき、世の中にも目を向けるようになっていきました。

「世の中の労働市場に出た時に、自分の市場価値はどのくらいかな?」という興味から、30歳くらいのときに転職活動をしてみました。


結果、当時の給料相当の給料を出すと言ってくれる会社は、なかなか見つからず。そのとき「あ、これはやばいぞ」と。

社内起業からパラレルプレナーの道へ

ーご自身のキャリアに対して、危機感を抱かれたんですね。

会社に在籍して、ちゃんと仕事をしていれば給料は一定のペースで上がっていきますが、それに伴って世の中での自分の市場価値も同じ様に上がっていくわけでは無いということに気づいたのです。

世の中の労働市場でつく以上にいただいていた給与分や休日を自分の価値向上に投資しようと思ったんです。給与分以下の人材だと、給与泥棒だとも思いまして。 会社の業務だけでは、自分の成長機会の幅が限られると想い、社内外のビジコンなどへの参加を始めます。

会社の中だけでただ仕事をこなしているだけでは、世の中では通用しなくなることを痛感しました。どんな会社でも、いつ潰れるか分からないのが今の時代だと思います。結局、自分の人生を保証できるのは、自分しかいません。自分にとって頼れる自分であるために、価値・スキルを高めようと動き出しました。

 

ー複業は、最初の一歩を踏み出すことがまず難しいと思います。金子さんの場合は、どのようにしてスタートされたのでしょうか?

私の場合、最初の第一歩は、会社内のビジネスコンテストで、通勤ライドシェアのサービス企画に携わったことでした。有志活動(業務外)ですが、会社としても取り組むべき内容でないかと何人かの部長に相談し、会社の予算で、アプリ開発をさせていただくことになり、いまは実証実験も行われています。

その様に活動をしていると、ビジネスコンテストの事務局の方から、社外のイノベーター養成研修(中部経済連合会主催 イノベーター養成研修)の案内をいただきました。中部圏の企業20数社から30人ほど集められ、私以外は会社の業務としてアサインされ、来ていました。一方、業務外の有志活動のつながりから参加した私は、計12回平日の有給取得かつ、30万円を払って参加しました(笑)。そこで一緒の課題認識の仲間で集まり、会社員を次世代型に切り替える「ミクサプ」を共同創業するに至りました。

 

ーそれ以外には、どのようなお仕事をされているのですか?

名古屋を拠点とした広告系ベンチャー企業・アイデアプラス株式会社では、新規事業担当のCOOとして参画しています。アイデアプラスは、創業9期目、社員は40人ほどで、売上もかなり立っている急上昇しているベンチャーです。ただ、社長は、『まだまだ創業当時に掲げたミッションは達成できていない』とお考えであったタイミングで、新規事業を立ち上げる社外メンバーを欲していました。一方で、私は、アイデアプラスの理念やサービスにとても惹かれていたので、積極的に関わりにいっていました。その結果、仲間に入れていただけることになりました。

 

あとは、海外インターンシップの求人情報提供サービス「タイガーモブ」のエバンジェリストを務めています。今後のトヨタには、越境学習が必要になってくると考えていました。そこで越境学習サービスとしてベンチマークをいくつもした中の一つが、タイガーモブでした。トヨタへ即導入は難しそうに思った一方で、自分はタイモブのサービスの価値を感じていたので、翌々月には、自費で、タイモブのサービスで上海に行っていました。そして、その後もタイモブの方とやりとりをしているうちに、自分のパラレルワークについて話をしたら「うちでも、複業してみないか?」とお誘いをいただきました。

 

時間で勝負しない。アウトプットで勝負する。

ー他で積み上げた実績が、どんどん次の活躍の場を引き寄せてくれたんですね。本業に加えて、3つの複業となると相当忙しいのではないでしょうか?

複業をしている方は、よく「セルフブラック企業」なんて言われる状態になってしまうこともありますよね。私の場合は、4つともとてもホワイトな状態で継続させていただいていて、一つのブラック企業に勤めるよりも、よっぽどホワイトな状態です。平日の移動やちょっとした隙間時間と土曜日の1日で、複業は完結します。

時間的に圧迫されているかのように思われるかもしれませんが、むしろ、精神的にも金銭的にも余裕が生まれていますし、時間で稼ぐのでなく、アウトプットで稼ぐ思考になっているので、やたらと時間を掛けるということは、あまりしません。両親からも「以前よりも、とても余裕がある表情しているし、調子が良さそうだね」と言われ、変化は見た目にも現れるほどになっています。

 

ー専業状態だと、自分の市場価値が見えずに不安たったんですもんね。今の方が、金子さんにとって心地よい状態であることが伝わります。

そうですね。自分の時間を切り売りするのではなく、アウトプットに対して報酬をいただいていることも要因かもしれません。量ではなく、質で価値を創出するためには、「100人いても生まれないアイデア」があると強みになります。時間で稼ぐ発想は、避けたいと考えています。

 

上司が「やらないことを決めることが大切」と教えてくれたことが好影響をもたらしているとも感じています。仕事ってやろうと思えば、いくらでも時間を費やせるかとも思いますが、なんでもかんでの施策を打つのではなく、ちゃんと立ち止まって考えて、「何が本当の問題なのか?何を解決すべきなのか?」を見定めることも必要だと思います。

 

ー複業をする上での難しかった点はありますか?

報酬の決め方は、とても難しい部分ですね。受入企業と話し合って認識合わせを行いました。開始してから半年くらい経ったタイミングで、自分がしてきたことのプロセスやアウトプットを自分なりに伝え、受入側も納得して報酬をお支払いいただいているかの話し合いの場を持ったりもしています。あくまで、成果の結果だと思っています。


あと、報酬をいただくようになると、mustの様になってしまい兼ねないので、willで関わり続けられるよう、いろいろと細かな工夫をしていたりします。

 

HOWではなくWHYから思考する

ー良い関係を築いて行くうえで、欠かせない姿勢ですね。本業への影響はありましたか?

複業で、事業をつくる経験をしていることで、「仕事は自分で創るもの」という感覚が持てるようになっています。大きな会社に入ると入社してすぐから、受けきれない程の仕事が振ってきますよね。それで、受け身マインドが出来てしまうところってあると思うんです。でも、本当は、仕事は創るものというマインドも大切だと思っていて、それは、人事業務をしている中でも、非常に活きています。

私の人材育成サービスでは、極めて短期間のうちにサービスのアイデアを組み、小さくトライすることをしています。そこに参加した社内メンバーは、いままでは、”HOW”から仕事をしていたことに気付き、”WHY”から思考することが出来る様になった!と目を輝かせてくれていました。

企業で雇われていると、業務内容・担当が割り振られ、仕事が下りてくる感覚なってしまいます。仕事は、whyから考える・創造するものという感覚を持てるようになったのは、ビジコンへの参加やベンチャーの事業に携われたことで培われましたと思います。

 

ー金子さんの社外活動が、イントレプレナー的に動くことで、社内へも好影響を広げているんですね。本日はありがとうございました!

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金子さんも参加されている「パラレルプレナージャパン」のイベントが開催予定です!ご興味ある方はこちらからぜひチケットを購入して参加してみてください!


取材:西村創一朗(Twitter
執筆・編集:野里のどか(ブログ/Twitter

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