The post 「令和時代の日本的人材流動化」について語る――ONE JAPAN CONFERENCE 2020イベントレポート first appeared on HARES.JP.
]]>2020年10月11日に開催された『ONE JAPAN CONFERENCE 2020』では、「令和時代の日本的人材流動化とは」というテーマでトークセッションを開催。令和時代の新しい働き方を体現している4名のゲストの方々に、日本で人材流動化を起こすための考え方やマインドを語っていただきました。
まずは、ゲストの方々とモデレーターがどのような働き方・取り組みをしてきたのか伺います。
私の職歴は、エール株式会社の前に5社。平成の時代からすでに流動性の高い働き方をしていました。現在は、取締役のほかにもいくつかの役割を持つパラレルワーカーです。
5年前に、『ALLIANCE アライアンス―――人と企業が信頼で結ばれる新しい雇用』というアメリカのビジネス書の監訳を担当しました。この本では、企業と人の関係を「終身雇用」から「終身信頼関係」へアップデートすることの大切さが論じられています。出版当時は、日本で同様の事例があるか問われても答えられませんでした。
しかしこの5年で日本の雇用環境は大きく変化し、歴史ある大企業がアルムナイと組織的につながって交流を深めたり、出戻りを歓迎するようになった。まさに今、『アライアンス 』で論じられていたことが日本でも起こり始めているのではないかと感じているところです。
私は10年間リクルートに在籍した後、株式会社オールアバウトでメディアの立ち上げに携わっていました。そこから分社したのが、私が代表を務めている株式会社エンファクトリーです。
当社のユニークな点は、「専業禁止」という人材ポリシーを掲げていること。企業も人も、お互いのいいところを取り合おうという「相利共生の関係性」の考え方のもと、2010年から複業を推進していました。退職しても独立してもよし、片足は社外に置いて当社とのパラレルワークをしてもよし。そのように、緩やかに外側に開いた考え方の会社なんです。
この取り組みを10年続けており、社内で循環させられる仕組みも作っています。
この仕組みを運用しやすくするために「チームランサーエンタープライズ」としてサービス化し、企業に活用していただいています。
私は現在、トヨタ自動車株式会社から株式会社アルファドライブに出向しており、企業内新規事業のサポートに携わっています。具体的な業務は、さまざまな企業の新規事業の仕組みづくりや事業化の支援です。
トヨタ自動車に入社後、いくつかの業務を経て今に至るのですが、実はこの5年で一度も部署異動をしていないんです。ひとつの部署にいながら、組織を超えて活動させて頂きました。たとえばA-1コンテストというトヨタグループ向けのビジネスコンテストを有志活動として共同で立ち上げたり、NPO団体G-Netと連携した「ふるさと兼業」という兼業推進の取り組みにも関わっています。
私のキャリアは「カイゼン」から始まり、新規事業の担当者としてプレイヤーになったり場づくりをしたりしてきました。そして今、社内初のベンチャー出向として色々なことにチャレンジさせてもらっています。今後はトヨタで学んだ「カイゼン」とゼロイチのイノベーションを掛け合わせて、ゼロイチも1を100にグロースさせることもできる最強の人材になりたいと思っています。
私のキャリアはNTT東日本からスタート。そこで10年働き、NTTグループの有志活動「O-den」やONE-JAPANの立ち上げに携わってきました。現在は、NTTドコモのイノベーション統括部で、新規事業インキュベーションプログラム「39works」の事務局を担当。その中で私自身も事業立ち上げを目指して活動しています。
有志活動を通して出会った仲間とともに、大企業×スタートアップのオープンイノベーションに取り組むためのプロジェクトを立ち上げ、予算をつけて組織化しました。38社のスタートアップと事業連携し、「スタートアップが選ぶイノベーティブ大企業ランキング」でNTT東日本は8位になるほど。
しかし、部署異動による上司との軋轢が原因で退職を決意。コロナ禍でフリーランスとして独立することになりました。独立後の半年間は、スタートアップ4〜5社をお手伝いしていたのですが、2020年9月にNTTドコモに入社。その後、NTTドコモがNTTに買収されたため、出戻りした形となりました。
現在はNTTドコモで働きながら、複業で新規事業の立ち上げのお手伝いもしています。スタートアップとも伴走しながら、大企業の中で新しいことを起こそうとしているところです。
2011年に新卒でリクルートキャリアに入社し、はじめは営業に配属。その後、新規事業開発、人事採用に携わってきました。複業をスタートしたのは入社3年目のとき。この複業がきっかけとなって、ずっと望んでいた新規事業部門への異動を果たすことができたんです。
その成功体験を土台に、「二兎を追って二兎を得られる世の中を作る」というビジョンを掲げ、会社員時代の2015年にHARESを創業。2016年にリクルートキャリアを退職し、2017年1月に独立しました。
現在は「複業研究家」としてだけでなく、人と事業の化学反応を促進する触媒となる「カタリスト」としても活動しています。
ジョブレス、複業、出戻り……多様な働き方を選んだゲストの方々は、どのような背景でその道を選んだのか。これまでの経歴と合わせて語っていただきました。
(以下、敬称略)
西村:篠田さんは新卒で日本長期信用銀行に入行後、留学や転職など紆余曲折を経てこられました。直近ではほぼ日で10年働いたのち、1年3ヶ月のジョブレス期間をあえて宣言された。これはなぜでしょうか?
篠田:自分が何をやりたいのか、一度立ち止まって考えてみたかったんです。「何ができるか」は分かっていたので、それとは別の軸を見つけたかった。ほぼ日までの転職は、「目の前にある選択肢の中からベターなものを選ぶ」「飛んできたボールを掴む」という感覚でした。そのため今回は、ほぼ日を卒業することもジョブレス期間を設けることも、自分で決めたのです。
あえてジョブレスとすることで、自分発の視点に加え、「私自身が実現したい世界に向けて1ミリでも貢献するためには、どこに身を置くのがベストなのか」という世の中から見た自分という視点を手に入れることができました。その視点を獲得するまで、そして自分の中で消化するために1年3ヶ月という期間が必要だったんです。
西村:ジョブレス期間を過ごすことで、新たなミッションが見えてきたのでしょうか?
篠田:見えてきました。私はさまざまな組織で働いてきた中で、人と組織の関係について興味を持つようになっていたんです。仕事をしていなくても、気づけばそれに関連した書籍を読んだり文章を書いたりしていた。「私はこの分野で仕事をしたいんだな」ということが、ジョブレス期間でクリアになりました。
これまで20数年働いてきて、組織に所属しないことも初めてでした。組織の看板がない自分が何者なのかを改めて感じられたのは、すごくよかったですね。
西村:山本さんがNTTに出戻ろうと思った理由は何だったんでしょう?
山本:大企業が持っているリソースを使って何かをする、ということにもう一度チャレンジしたいと思ったからです。NTTを退職する前は、自分のスキルや成し遂げたいことが見えなかったので、一度外に出て自分の出せるバリューを確かめるようと思いました。それによって、大企業の潤沢なリソースやその中で自分のバリューを出すことの魅力を再認識したんです。
西村:一旦外に出たからこそ見えた大企業の課題もあったのでしょうか?
山本:大企業のスピード感や行動力は、スタートアップに比べると足りないなと感じました。特に私が独立したのはコロナ禍だったので、スタートアップは危機的な状況。そのお手伝いをしながら感じたヒリヒリするような危機感も、大企業では感じにくいことですね。私が外で体感したものを大企業に持ち込みたいなと考えています。
西村:土井さんがトヨタ自動車を辞めずに出向した背景を教えてください。
土井:もともとトヨタの中で自由に動かせてもらっていたんですが、新規事業の立ち上げに携わる中で「なかなか進まないな」と感じるようになりました。とはいえ、ボトムアップで事業を立ち上げていくノウハウを社内で得ることは難しかった。
そんなフラストレーションを抱えていたとき、のちにアルファドライブを創業する麻生要一さんと出会ったんです。彼が「すべてのサラリーマンは社内起業家として覚醒できる」と言っているのを聞いて、私が抱えていた課題を解決できると直感したんです。そうして社内のさまざまな方に尽力いただき、アルファドライブに出向させてもらうことになりました。
西村:今でこそ複業がひとつのムーブメントになっていますが、他社に先駆けて「専業禁止」を掲げ、60%もの社員が複業しているエンファクトリーさん。なぜ専業禁止を掲げたのでしょう?
加藤:「やりたいことがあるならやったらいい」というのが専業禁止を掲げた大きな理由です。できる限り社員一人ひとりが望むステージに合わせた機会を提供しようとしていますが、すべてに対応するのは現実的に難しい。その中でフラストレーションを溜めるよりは、望む機会を外で手に入れたほうがお互いにとっていいと思ったんです。
また、当時はリーマンショックの影響が残っていて景気も回復しておらず、暗い世の中でした。会社も変わらないといけなかったし、個人も自立する力が求められていた。だからこそ、社員が自らキャリアを見つける力を会社も応援すべきだとも考えていたんです。
西村:社員が複業を実践したことで社内にどんな影響がありましたか?
加藤:複業では「ミニ経営者」として多くのことを実践的にやらなければならないため、社員は世の中の仕組みを知ることができて視座が上がりました。また、外に触手が伸びるので、いろんな情報が循環するようになる。そうすると、社内で結節点ができて新しいことが始まったりアイデアが生まれたりと、会社にとってプラスになりました。
当社の複業のルールは一つだけ。「みんなにオープンにしよう」というものです。このルールのおかげで一層情報が循環しやすくなっているようにも感じます。
10年前には考えられなかったような日本的人材流動化が起きている今ですが、まだ当たり前の選択肢とは言い難い。複業や転職を一般化するためにはどうしたらいいのか、ゲストの方々に伺いました。
西村:土井さんは、トヨタ自動車という歴史ある企業の中で「ベンチャーへの出向」という切符を手に入れました。本業を辞めずに複業にチャレンジするという選択肢が増えるためには、どうしたらいいと思いますか?
土井:働くことが「ゼロか100か」というようなデジタルな世界観ではなく、アナログ的にグラデーションしているのだと捉えることが一番大事だと思います。私はもともと有志の活動をしていたことがきっかけで今のキャリアを歩んでいます。つまり、時間外で趣味でやっていたことが、徐々に本業や複業・兼業へと変化していった。有志の活動が収益化できるようになり、それを本業に還元できると社内で認められたからこそ実現したキャリアです。このように「仕事はグラデーションである」という考えを持つだけで、選択肢は増えると思います。
ただし、自分の本業に還元しているかどうかが重要です。私は先輩方の助言もあって、本業で120%成果を出せるように意識していたので認められたのかなと思っています。本業にコミットすることもポイントだと考えています。
西村:山本さんは退職して半年でNTTに出戻ることになったわけですが、「退職者=裏切り者」というイメージは根強いですよね。その中で出戻りを一般化するためには、何が必要だとお考えですか?
山本:誰かが「出戻る」という事例を作ることが必要でしょうね。私はO-denという有志活動でアルムナイと接する機会が多かったので、誰かが前例を作ることの重要性を感じたんです。だったら自ら率先してやってみよう、という思いもあって出戻りを決意しました。
大企業で働く人の多くは、「自分のキャリアは人事が選んでいる」という感覚を持っています。しかし、キャリアの主軸はあくまで個人なんです。それを私が体現することで、選択肢が広がるんじゃないかと考えています。
西村:退職後も企業と人が信頼関係を築き、積極的なアルムナイ採用が増えるようになるには何が必要なのでしょうか?
篠田:信頼関係を築くためには、企業側が「自分たちの事業に最適な人たちはどんな人か」「その人たちとどうやって出会うか」「その人たちに長く活躍してもらうためにはどうしたらいいのか」という問いを立てることに尽きると思います。
近年、官庁や伝統的な大企業において中途採用した人は定着しづらく、新卒で入社して辞めた人を「出戻り」の形で中途採用したほうが企業にフィットしやすいということが分かり、アルムナイ採用の流れが生まれています。
特にイノベーションを起こそうと思ったら、内と外で異なる文脈をつなぐことが重要です。しかし、社内にしかいた経験がない人は外の価値観が分からず上手くつなぐことができません。アルムナイは、社内の事情も分かっていて社外のことも知っている。いいつなぎ役になってくれる可能性があるわけです。
変わりゆく事業戦略とともに人材戦略も変えていかなければならない。それを多くの企業が理解することが必要でしょうね。
西村:「専業禁止」を掲げる加藤さんは、副業解禁・複業促進を加速させるためには何が必要だとお考えですか?
加藤:経営者の方々の考え方や企業の風土が変わっていくことが必要だと思っています。そうしなければ、経営側がアクセルを踏むことはない。時間はかかるでしょうが、大企業での成功事例がもっと世に出れば、副業解禁・複業促進は徐々に進んでいくのではないでしょうか。
最後に、イベント参加者から寄せられた質問に対しての回答と、これから複業を考えている人たちへのメッセージをいただきました。
――パラレルキャリアで働く上で、タイムマネジメントの工夫をされていれば教えてください。
山本:会社にも説明できるよう、本業と複業の時間はきちんと切り分けています。複業の仕事をするのは、本業の時間外です。最近はテレワークの方も増えていると思うので、朝晩の通勤時間が浮いているはず。その時間を複業に充てるのもいいと思います。
――複業で活躍しながらも、本業の仕事にコミットできるモチベーションは何ですか?
土井:ひとつは、「新卒のときに自分で選んだ会社だ」という想いがあるからです。トヨタ自動車は「産業報国」を掲げ、産業を通して国に報いるという世界観を持っています。このような話は、ベンチャーやコンサルティングファームではあまり聞かない。ここで仕事をすれば、国や世界を変えられる、と思って入社を決めました。その想いと自分で意思決定したという事実があるから、この選択を正解にしたいと思って仕事をしています。
もうひとつは、上司や他の部署の方などたくさんの方に助けてもらって今のキャリアがあるので、恩返しをしたいという想いがあります。それが本業にコミットするモチベーションです。
山本:私もNTTに対しては、自分のビジネスの基礎を作ってくれたことに対する感謝の気持ちがあります。加えて、私が理想とする世界の実現のために大企業のアセットを活用したいんです。この会社に眠っている多くの武器を使いこなせるようになりたい、というモチベーションで仕事をしています。
――育児こそパラレルワークだと思うのですが。
篠田:育児をすると、本当にマネジメント力がつきます。「子供を保育園に預けてまでする仕事って何だろう?」と、仕事へのモチベーションを問い直すきっかけにもなりますね。決して育児は、仕事ができないマイナス期間ではありません。育児を頑張っている方が近くにいたら、応援してほしいなと思います。
――最後にメッセージをお願いします。
篠田:日本型雇用と呼ばれる終身雇用ですが、実はそれを享受しているのは人口の2割なんです。ではなぜ終身雇用に縛られているのか。それは、法律よりマインドの影響が大きいと思っています。何かひとつ行動を変えてみると、マインドは変わる。ひいては日本も変わるのではないでしょうか。
山本:「複業してみたいけれど会社的にどうなんだろう」と心配している人も多いと思います。それならば、まず個人事業主として開業してみるといい。仕事先のあてがなければ、仕事と人をつなぐプラットフォームなどに登録するのがおすすめです。まずは動き出してみてください。
土井:私がトヨタ自動車でこうして自由に動けているのは奇跡的なのですが、ある一定以上勝手に動けば実現できることでもあります。ここを理解することが大事。お伺いを立てたらNGになってしまう部分も多分にあるので、有志で勝手に動いて結果を出し、それをロジック立てて説明するんです。そうすれば認められます。企業に所属した人間がグラデーションを持った働き方をすれば、日本のGDPは確実に上がる。つまり、皆さんの一歩が日本を救うのです。ぜひ一緒に踏み出しましょう。
加藤:当社では「相利共生」という価値観を共有しています。言い換えると「いいとこどりをしよう」ということ。会社のいいところを踏み台にしてほしいんです。「2-6-2の法則」がありますが、このイベントに参加しているのは上位2割の方々でしょう。私はその次の6割の方々が動けば世の中が変わると思っています。会社の風土や空気を変えるにはどうしたらいいのか、皆さん自身で考えてみてください。
文:矢野 由起
The post 「令和時代の日本的人材流動化」について語る――ONE JAPAN CONFERENCE 2020イベントレポート first appeared on HARES.JP.
]]>The post 複業は、自分の成長とアウトプット最大化の手段【パラレルプレナーの時代 vol.5 加藤康之介】 first appeared on HARES.JP.
]]>そんな中、パラレルワークで得たスキルや経験をイントレプレナーとして本業に活かし、イノベーションを起こそうと仕事をしている方がいらっしゃいます。そんな存在のことをパラレルプレナーと呼びます。
本記事では、「パラレルプレナーの時代」と題した連載で、パラレルプレナーとして会社の枠に囚われずに活躍する加藤康之介さんにお話を伺いました。
加藤康之介 プロフィール
日立グループでシステムインテグレーション業務を経験後、楽器事業会社に転職。現在はイントレプレナーとして、新規事業を推進する。複業では、Tumugu LLCの代表として「伝えることを民主化していく」をビジョンに事業コンサルティング、ブランディング、M&Aアドバイザリーなど事業変革のサポートを手掛けている。
――加藤さんは現在、どのようなお仕事をされているのでしょうか?
本業では、静岡県にある楽器事業会社で新規事業に携わっています。ボトムアップの企画を事業化する仕組みが社内にあるので、現在は14〜15人のメンバーと共に動画制作サービスを事業化して開発を進めているところです。
複業では、個人事業主と法人の両方で仕事をしています。まず2019年に個人事業主として開業し、2020年には法人として「TUMUGU LLC」を創業しました。
個人事業主としての仕事は、DX推進やクラウドソフトの導入支援、アプリ・Web開発、新規事業創出・組織構築です。法人では、ブランディング・マーケティングやM&Aのアドバイザリー、資金調達支援、海外税制対応支援などを行なっています。法人の事業では20人ほどのメンバーと一緒に仕事をしていて、そのほとんどが複業人材です。
――複業では幅広い事業を手掛けていらっしゃるんですね。
事業の幅は広いのですが、「いかに事業・商品の強みを整理し、お客様にらしさを届けて、拡大していくか」という軸は同じです。「伝えるを変えていく」をビジョンに掲げ、内部・外部・ステークホルダーそれぞれに向けた伝え方の最適化を目指しています。
――加藤さんが複業を始めた理由は何だったのでしょうか?
もっとも大きな理由は、自分の好奇心を満たすためです。本業で事業作りに関する仕事が一通りできるようになったものの、大企業の中では新規事業を拡大させることが難しく、さまざまな壁にぶつかりました。既存事業との共存も難しい。それならば、会社の外で試してみようと思ったのです。「イノベーションは、会社と会社・事業と事業の間に存在する」と信じているからでもあります。
新規事業に積極的な中小企業・ベンチャー企業があれば、私のスキルセットを生かして事業推進のサポートができます。サイロ化やセクショナリズムといった大企業特有の問題も大きくないため、事業立ち上げから拡大させるところまでを実現できるんじゃないかと考えました。特に中小企業には、会社独自の強みを確実にあります。そこに大きな可能性を感じています。
それに、人や組織、経済、テクノロジー、デザインなど、さまざまなことを高次元で複合して事業を組み立てることが楽しいんです。だからもっと本質的原理を理解し、アウトプットしたいと思った。それが今の複業を始めた理由です。
私が持っているスキルを、事業作りやデジタル化推進などで困っている企業のために使って社会貢献したいという気持ちもあります。
――では、本業で得た知識やスキルが複業にも生きているのですね。
新規事業の作り方や進め方は、私が好きでやってきたことの延長線上にあって、本業で習ったわけではありません。ただ、本業で身に付けた法務や知的財産、投資感覚などの知識や経験は、複業にも生かせていると思います。映像ソリューションを作るにあたって、ストーリーの組み立て方の本質を理解できたのも役に立っていますね。
――逆に、複業で得た知識や経験は、本業でも役に立っていると感じますか?
はい、大企業の中にいるだけでは気づけないようなことを肌感覚で知ることができているので、それを本業で生かすことができています。例えば、中小企業の知識・ノウハウ・感覚・課題の本質的な部分は、実際に企業の中に入って初めて知ることができるんです。本やセミナーだけで知っている人とは大きく違います。大企業と中小企業でお仕事を作り上げるとき、その視点やノウハウが役立っていると感じますね。
――平日は本業もお忙しいと思うのですが、休日に複業も……となると大変だと思います。複業を続けるモチベーションは何でしょうか?
私の場合、やっていて「楽しい」と思えることがモチベーションになっています。自分を成長させるため、そして自分のアウトプットを最大化するための手段として複業をしているので、「事業を営んでいる」という感覚はあまりないんです。
それにTumugu LLCやお客様にも色々とお手伝い・配慮をいただきながら、複業を実践できています。Tumugu LLCのメンバーには、本当に助けられているんです。チームで仕事をするからこそ、成果を出すことができるということを実感しています。今後もTumugu LLCのメンバーの実現したいこと・成長したいことが実現できるようなプロジェクト設計し、実現していければと考えています。
お手伝いしている企業の方に感謝してもらえることも喜びに繋がっていますが、それ以上に世の中の原理原則を理解し、自分なりに最適な構造に組み上げることのほうが嬉しいですね。見えるものが広く・深くなることで、より多くのアウトプットができるようになると「楽しい」と感じます。その楽しさを、お客様や関係者にも伝えていくことにやりがいを感じています。
――以前はエンジニアとして働かれていましたが、今はどちらかと言えばディレクション側ですよね。もともとそのような仕事に興味があったのでしょうか?
いえ、昔は何かを形にしていくことがすごく好きだったんです。だからエンジニアとして仕事をしていました。でも企画側に回ってみたら、事業の一連の流れがすべて見えるようになったんです。それで徐々に興味の範囲が広がって、今のような事業形態になっています。実際のところ、IT、人、もの、お金を使って実世界上でストーリーをプログラミングをしている感覚があります。機能だけでなく、情緒的な要素を含めてデザインしていくことに新しい価値を感じています。
それに視座を上げてみれば、エンジニアとしての仕事も上には上がいるわけです。専門家になれない分、ジェネラリストとしてできることがあるんじゃないかと思って色々なことに挑戦してきた結果、現在の業務に辿り着きました。
――複業で企業の顧問もやっていらっしゃるとのことですが、どのような経緯があったのでしょうか?
現在2社の顧問をしていますが、どちらも私が企業に直接営業をかけました。面白そうだったり強みを持っていたりする企業の社長に連絡して時間をいただくんです。そして、外部情報から分析した事業改善プランをレポートにまとめて説明し、実施するかどうかを訊ねます。そうしてどちらも賛同してもらえたので、顧問として参画しているんです。
――行動力と提案力の賜物ですね。現在は静岡県内のみで活動されているのですか?
今は静岡県内のみです。静岡県は地元なので、何とかしたいと思う気持ちがあるんです。私が今まで培ってきたノウハウと、同じ土地で育った人たちのいいところを掛け合わせて、よりよいアウトプットができればいいなと思っています。
――今後の目標や展望を教えてください。
「価値をお客様に与える総合体験において、正しい演出をし、伝わる形に落とし込むこと」が十分にできていない人や組織、地域を、私の持つスキルセットでエンパワーメントできたらいいなと思っています。そのために何ができるか考え続けたいです。そして、自分自身も解像度をもっと上げていきたいと思っているので、それが叶う場所や環境を自分で作っていくことが目標ですね。
6〜7年後には、大企業・中小企業・ベンチャーで協業したオープンイノベーションの企画開発と製品販売を行いたいと考えています。今はまだ種まきと土壌作りの段階ですが、最終的には本業と複業をミックスさせたいです。
シリコンバレーのように持続的に非連続的なイノベーションが起こる場所を地方に作り、東京・大阪・名古屋・浜松・香港・シンガポール・ハワイを繋げることを狙っています。
――海外展開も考えてらっしゃるんですね。
知り合いに海外出身の人や海外で起業している人がいるので、その人たちの力を借りながら製品を輸出する段取りをしているんです。
――本業で取り組んでいきたいことはありますか?
「伝えること」に困っている人や組織のあり方をリデザインする音と映像のサービスを作りたいと思っています。背景にあるストーリーを、上手くまとめて伝えることができていないものづくりの企業は多いんです。
一部のデザイナーのクリエイティブで実現している企業もありますが、標準化には至っていません。私はそれをデジタルで標準化したいんです。日本のものづくりの性能・スペックに、情緒的な価値をプラスできるといいなと思っています。
――今後も「伝えること」が加藤さんの軸なのですね。
――最後に、これから複業を考えている人に向けてメッセージをお願いします。
インターネットや国際移動の利便性が向上した今の社会では、テクノロジーの革新と伝播速度が指数関数的に上昇しています。これまでの常識の延長線上で生活していては、日常生活を維持することも困難になっていくでしょう。
そんな時代に、社内の利害関係が複雑に絡み合う大企業の中で、政治力や忖度、派閥などの影響によってキャリアを左右されるのは望ましくない。私の価値観においては、そのようなキャリアで得られるものは少ないように思うのです。
しかし。大企業に勤めている人で「自分にはスキルがないから」という理由で、複業に踏み出せない人を多く見かけます。大企業で仕事をしていて得られる知識や情報、スキルは、クオリティが担保されているので、中小企業やベンチャー企業にとって価値になりうるんです。
実際に中小企業の中に入ってみると、「仕事を割り振られたから担当し続けている」という人がいることに気付きます。専門的な知識がなくて正しい情報も入ってこないから、改善がなかなか進みません。そういった場所に大企業の正しいノウハウを持っていけば、もっと良くすることができる。その事実をもっと知ってほしいと思います。
複業の成功に必要なのは、マインドチェンジだけです。
――ひとつの企業にいるだけでは、自分の強みに気付けないこともありますよね。加藤さんならではの説得力のあるメッセージ、ありがとうございました!
取材・文:矢野 由起
The post 複業は、自分の成長とアウトプット最大化の手段【パラレルプレナーの時代 vol.5 加藤康之介】 first appeared on HARES.JP.
]]>The post チャレンジできる複業があったから、本業でも勇気を持てた【パラレルプレナーの時代 vol.4 ロート製薬 菊池容子】 first appeared on HARES.JP.
]]>そんな中、パラレルワークで得たスキルや経験をイントレプレナーとして本業に活かし、社内でイノベーションを起こそうと仕事をしている方がいらっしゃいます。そんな存在のことをパラレルプレナーと呼びます。
「パラレルプレナーの時代」と題したこの連載では、パラレルプレナーとして会社の枠にとらわれずに活躍する方へインタビュー。今回は、ロート製薬で広報として働きながら、複業で「MYSH Sake Bar」の女将を務める菊池容子さんにお話を伺いました。
菊池 容子 プロフィール
宮城県出身。化粧品会社の商品企画に携わり、その後ロート製薬に転職。スキンケアのマーケティングを担当し、現在は広報・CSV推進部にて、統合報告書の制作やコーポレートコミュニケーション・CSRを推進。東日本大震災をきっかけに東北風土マラソンの立ち上げに携わり、宮城の食と日本酒を広めるためMYSH Sake Barの女将を兼業。6月より新しい兼業にチャレンジ。
ー ロート製薬に入社されてから今まで、どのようなお仕事をされているんでしょうか?
入社してから十数年は、スキンケアの商品企画や営業企画、ブランド事業などに携わっていました。その後3年ほど、ヘルスサイエンス研究企画部という部署で大学の先生と研究に関するやりとりをしたり、健康情報冊子を作ったりといった仕事を担当。広報・CSV推進部に異動したのは、今から4年前です。
現在は、コーポレート広報としてスポーツ支援や地域支援などのCSRに関する仕事をしています。他にも、統合報告書の制作やコーポレートコミュニケーションのレポート作成、子供のスポーツ教室などを担当しています。
ー ロート製薬の前は、新卒で化粧品会社に入社されたんですよね。その会社を選んだ理由は何だったんですか?
もともと肌が弱かったので、スキンケアに関する仕事がしたくて入社しました。
ー 昔から化粧品会社で働きたいという思いがあったんでしょうか?
いえ、高校生のときは「資格を取って手に職をつけ、長く働きたい」と考えていたので、大学で薬学部に入って薬剤師の資格を取りました。だけど大学で4年間勉強してみた結果、薬剤師として働くイメージが持てなくて……。一度立ち止まって、自分が何をやりたいのか考えてみたんです。そうしたら、「スキンケアに携わりたいな」と。
ー 想いを持って入社された化粧品会社から、ロート製薬へ転職したのはなぜですか?
化粧品会社で商品企画をしていた3年目の頃、お客様からお礼のお手紙をいただいたのがきっかけです。そこには「ずっと悩んでいた肌トラブルがスキンケアで治った」と書かれていたんですが、科学的には化粧品にそんな効果はないんです。
でも、化粧品は肌トラブルを解決するくらい力を持ったものなんだなと思ったとき、もっとスキンケアと向き合わなきゃいけないなと改めて思って。そこで、成分までしっかり考えて化粧品に関わるため、ロート製薬に移ることにしました。
ー たくさんの選択肢がある中でロート製薬を選んだ決め手は何だったんでしょう?
ロート製薬はその頃、「Obagi(オバジ)」という機能性スキンケア商品に取り組み始めていたんです。容器の見た目より、機能や効果にこだわって商品を作っていて。それは化粧品会社にはできないことだな、化粧品の概念を変える会社だな、と思ったことが決め手でした。
ー だから入社後もスキンケアに関するお仕事をされてきたのですね。
そうです。オバジブランドで商品企画からブランド事業まで一通りのことをさせていただきました。だけど東日本大震災が起こって地元・宮城が被災したことにより、会社としても個人としても東北復興支援やボランティアに行くようになって、CSRに興味を持ち始めたんです。そのタイミングでちょうど広報へ異動になりました。
ー ロート製薬では、スキンケアブランドを担当したのち、広報・CSV推進部に異動。菊池さんが複業を始められたのは、ちょうどその頃ですよね。
はい、東日本大震災の復興支援でボランティアに行って、いろんなコミュニティに属している方々と出会うようになったのが複業のきっかけかなと思います。「社外のコミュニティに所属するというライフスタイルがあるんだな」という気付きがあって、少しずつ複業にも関心を持つようになりました。
ー 会社員としての仕事だけでなく、会社の外で働くことに興味を持っていた中で、2016年にロート製薬でも副業解禁。それからすぐ複業を始められたんですか?
はじめはNPOのお手伝いをさせてもらったり、「東北風土マラソン」の立ち上げを支援したりと、自分の持つネットワークでできることをやっていただけでした。仕事としての複業をスタートしたのは2018年からです。
ー それが「MYSH Sake Bar」でのお仕事なんですね。
そうです。こちらも、復興支援のネットワークからご縁をいただいて始まりました。飲食業や接客に興味があったわけではないんですが、MYSHの「働き方を変えていく」「一人ひとりのチャレンジの場」というコンセプトに惹かれたんです。東京にいても宮城に関わる活動がしたい、という思いもありました。
「何かチャレンジしたくても場がなくてできない」という悩みをよく聞くんですが、MYSHはその場を提供する代わりにみんなでチャレンジして応援し合うというコンセプト。そういうきっかけをいただけるのはありがたいなと思い、私自身も挑戦することにしたんです。
ー 素敵なコンセプトですね。実際にMYSHに携わってみてどうですか?
MYSH自体もお店の場所を移して変化しているので面白いですし、20〜30人いるメンバーを見ていても「新しい働き方だな」と感じで興味深いです。背景も会社も違う人たちが集まって、こんなにいい場ができる。「こういう場所が他にもあったらいいのにな」と思うくらい、素敵だなと思っています。
ー 単なる仕事という感じではなく、サードコミュニティとして居心地のいい場所になっているんですね。
ただの複業先ではなく、まさにコミュニティという感じです。会社とは違う立場で人と接したり、MYSHで働く若い人たちの感覚を知ることができるのも面白いですね。
ー 複業することでいろんな繋がりを得られたと思いますが、他にも「複業だからこそ得られたもの」というのはありますか?
MYSHは小さいコミュニティなので、「自分たちで作っていく」という実感が得られました。本業だと組織の規模が大きいので、自分の手で作る感覚はどうしても得られにくいんですよね。
それに、MYSHだとやりたいことに気軽にチャレンジできるなと感じます。自分がチャレンジするだけではなく、誰かのやりたいことをみんなで応援することもできる。こういう機会を得られるのは、複業ならではだと思いますね。
ー 気軽に「こういうことやりましょうよ」と言って自分たちの手で作っていけるのは、複業の良さですよね。
MYSHは、関わっているメンバーそれぞれの満足度が高いと思います。だから自然と人が集まるのかな、と。「会社では自分のやりたいことに挑戦するのが難しい」と悩んでいる人もいるので、それが実現できる場というのはいいなと思います。
ー 複業を通して学びを得られることもあったんでしょうか?
「こういうお客様がいるんだ」とお客様を想像する意識は身につきましたね。私は本業がメーカーなので、エンドユーザーの方に会うことがあまりないんです。データやアンケート結果でイメージするしかなくて、具体的に想像するのが難しかったんですよね。
でも、MYSHでは飲食店で直接お客様と接するので、お客様に喜んでもらえることをみんなで考えてまず実践します。そうしてどんどん進化し続けることができるんです。
ー 顔の見えないフィードバックが中心となる本業では感じにくいことですよね。顔が見える関係性で声を聞くことができるのは大きいと思います。
他にも、オリンピック・パラリンピックの組織委員で複業をしたのは、オリンピックを通してスポーツ支援やSDGsについて学べることも多いんじゃないかと考えたからです。本業ではスポーツ担当でもあるので、周りを巻き込む方法や観客を楽しませる工夫を学びたいと思いました。
オリンピックは「持続可能性」に配慮しているので、ゴミの分別やリサイクルを緻密に計算して会場を作っているんです。そのためにいろんな部門が関わって考えているので、本業でも部門を越えた取り組みが必要だなと思わされました。
SDGsにおいては情報発信が大事だと感じています。情報がないと何となくしか分からないものも、常に情報に触れていたら「こういうことができるんじゃないか」というアイデアに繋がるんです。そういう巻き込み方は、本業でも考えていきたいですね。
ー まさに複業が本業に生かされているわけですね。「複業をやっていたからこそ本業でこんなチャレンジができた」「こんな成果を残すことができた」という事例があれば教えてください。
具体的な事例としては、2018年にロートでクラウドファンディングに挑戦したことです。
当時はまだ、企業がクラウドファンディングをやるような時代ではありませんでした。でも複業を通していろんな人の話を聞くうちに、「1店舗の飲食店の場合は、大きな宣伝よりファンづくりを大事にしたほうがいいんじゃないか」と思うようになったんです。それならば、クラウドファンディングという手段が最適ではないかと考えました。
最初の一歩は勇気が必要でしたが、今はやってよかったなと思っています。
ー 従来と違うPR手法があるという発想は、社外に出て繋がりを持っていたからこそ生まれたんですね。
そうですね。社外でいろんなことにチャレンジした経験が、本業でクラウドファンディングを提案する勇気に繋がったんだと思います。
ー 本業から複業へ、複業から本業へとご自身の経験や知識を生かす、まさにパラレルプレナーとして活躍する菊池さん。今後、仕事を通して実現したいことややってみたいことを教えてください。
MYSHでは、飲食店にこだわるというより「生産者の方に感謝してそれを東京で伝えていく」という場作りを目指しているので、MYSHの先にいる作り手さんを応援できるような何かができればいいなと考えています。
私自身、いろんなことを自由にやらせてもらっている今の状態がとてもバランスが良くて。だから本業では、いろんな場や選択肢を持ちたい人を応援したい思っています。なかなか社外の場を持つことができないという悩みはよく聞くので、そのきっかけ作りがしたいですね。
ー 仕事とは関係なくプライベートで挑戦したいことはありますか?
着物の着付けを習っているので、着付師の試験を受けて合格できたら、着付けを教えたり実際に着付けをしてあげたりしたいです。オリンピックで海外の方が来られた際、着付けをしてあげられたらいいなという思いもあって始めたので、それも実現させたいです。
新しいことも好きなんですが、古くから伝わる文化って現代でも役に立つことが多いんですよ。敷居が高く感じられるかもしれませんが、日本の伝統文化を広めていけたらなと思っています。
MYSHで扱っている日本酒も、歴史や文化があって面白いんです。日本の良さってまだまだあると思うので、そういうところに関わっていけたらいいですね。
ー 温故知新で伝統文化の魅力を再発見して伝えていくというのは素晴らしいですね。パラレルプレナーとしての菊池さんの今後が楽しみです。本日はありがとうございました!
=======
取材:西村 創一朗
執筆:矢野 由起
The post チャレンジできる複業があったから、本業でも勇気を持てた【パラレルプレナーの時代 vol.4 ロート製薬 菊池容子】 first appeared on HARES.JP.
]]>The post アルムナイとのつながりは企業と個人の双方にメリットをもたらす ーー株式会社ハッカズーク代表・鈴木仁志インタビュー first appeared on HARES.JP.
]]>日本では、退職後に企業と個人がつながり続けることは新しい考え方ですが、欧米ではお互いにメリットのある関係性を築くのが一般的。そんな「アルムナイ・ネットワーク」を日本でも広めているのが、株式会社ハッカズーク(以下、ハッカズーク)です。
今回はハッカズークの代表である鈴木仁志さんにインタビュー。アルムナイとのつながりが企業にもたらすメリットや、鈴木さんが考えるアルムナイ・ネットワークの可能性について伺いました。
ー ハッカズークの事業内容について教えてください。
アルムナイ(=企業の退職者)とのつながりに特化したSaaSやコンサルティングの提供と、オウンドメディア「アルムナビ」を運営しています。2017年7月に設立したのですが、アルムナイに特化した事業を展開している日本で初めての会社です。
人生設計やキャリアの多様化が進む中、企業と個人の関係性は大きく変化しています。それぞれの変化を見てみると、企業に比べて個人の方が変化しやすく、スピードも速い。特に大きい企業の場合、多くの社員がいるからこそ全員の求めるキャリア設計に対応することは難しくなってきています。
その中でも、変化への対応が追いついていないのが退職です。これからは一社で定年まで勤める人が減り、転職などによる退職をする人が増えるでしょう。だからこそ、退職後もつながることが価値になると考えました。
しかし、今の日本企業はアルムナイとつながっていないケースが多く、退職後はお互いに何をやっているのかすら知らないことがほとんどです。そこでハッカズークでは、アルムナイと企業がつながれるクローズドなSNS『Official-Alumni.com(オフィシャル・アルムナイ・ドットコム)』を提供し、企業とアルムナイの良好な関係の構築および強化をするお手伝いをしています。
ー アルムナイに関する事業を始めたきっかけは何だったのでしょうか?
前職で人事・採用コンサルティング・アウトソーシングの会社にいたときの経験がきっかけです。企業は採用や育成に多くの時間と費用を投資しますが、「退職と同時につながりが途切れてしまうと、それまでの投資が無駄になってしまう」という話をよく聞きました。それは非常にもったいないことです。
なかには、「辞めたらもったいないから、人材に投資するのをやめようか」という相談を受けたこともありました。事業を成長させるために人材への投資は不可欠ですし、「辞めてしまうから投資をしない」というのは本末転倒です。
どうやったら人材に対する投資が、退職後も無駄にならない関係性を築けるのか。海外の事例などもリサーチした結果、たどり着いたのがアルムナイでした。
今まで多くの日本企業は、自社の候補者と社員までしかジョブスコープとして見ていませんでした。一時期から「社外のタレントにも目を向けよう」という流れが出てきたものの、自社を辞めた人に目を向けることはなかったんですね。
その理由は、終身雇用という心理的契約によって「退職者=裏切り者」と感じてしまっていたから。しかし退職者は決して裏切り者ではありません。
ー 退職者は裏切り者ではなく、社員以外でもっとも良き会社の理解者だと思うのですが。
そうなんです。日本人には「ひとつのことに特化するのが素晴らしい」「二兎を追うのは誠実ではない」という考え方の人も多いため、退職者は「一社で勤め上げずに他でのキャリアを選んだ」とネガティブな感情を持たれることがあります。
このネガティブな感情を変える方法としては二つあります。ひとつは社内で退職者を裏切り者扱いしないこと。もうひとつは、「企業とアルムナイがつながるとどんなメリットがあるのか」をお互いが理解することです。
2020年5月にパーソル総合研究所が発表した調査結果(*1)によると、アルムナイ経済圏は年間1兆円を超えています。企業やアルムナイごとに得られるメリットも、オープンイノベーションを含む事業視点やブランディング視点、採用視点、人材開発視点などさまざまです。
もっとも分かりやすいメリットは、アルムナイの再雇用。「カムバック採用」「ジョブリターン制度」といった名前で制度化している企業も増えています。
しかし、制度化するだけでは意味を為しません。辞めた後も企業とアルムナイが関係を構築できてこそ、お互いの変化を知ることができ、ニーズが合った時に再入社という結果が生まれるのです。
たとえば最近はDXがどんどん進んでいて、仮に5年前に活躍する場がなかった人でも、今は活躍する場ができている場合もあります。一方、企業とアルムナイで良い関係を構築できていなければ、アルムナイに企業としての変化が伝わっていないケースがほとんどなのです。
ー そのほかにはどのようなメリットがありますか?
「ブランディング」視点でのメリットも大きいですね。
たとえばマッキンゼーでは、経営者など多くの優秀なアルムナイを輩出していることや、そのアルムナイとの繋がりを形成できることを採用時のブランディングとしています。それにより、求職者はマッキンゼーに入社することでどんなキャリアを形成できるのかイメージできます。そこで得られる人脈も魅力的です。
マッキンゼーだけでなく、日系企業でも採用ページなどでアルムナイの転職先やインタビューを掲載する企業が増えてきました。
ー リクルートもまさにそうですね。就活生にも、リクルートを辞めた人が今どんな場所で活躍しているのかを聞かれるんです。それだけ、退職を前提にその後のキャリアを考えている学生が多い。
そういう学生は今すごく多いですよね。新卒採用においても、その企業で働いた経験のあるアルムナイの口コミはインパクトがあるんです。
新卒採用の説明会に来てくれた人はお客様のように扱われるのに対し、なぜか退職者は大切にされません。オンボーディングや採用のリクルーターレーニングはみんなやるのに、オフボーディング(※)で何をすべきか、何をしてはいけないのかは誰も教わっていない。これが、退職時に不幸な辞め方や送り出し方が起きてしまう一つの要因なのです。
※オフボーディング=退職の意思表明から退職が完了するまでの一連の施策のこと
ー 公式にアルムナイとのつながりを持つ企業のbefore⇔after事例をいくつか教えてください。
もともとアルムナイと受発注関係のあったコンサルティング系の企業があるんですが、従来は会社がアルムナイに発注するというパターンが多かったんです。しかし今では、アルムナイから、もしくはアルムナイの紹介による受注が増え、年間売上の約5%を占めるようになりました。
アルムナイ側に話を聞くと、「辞めた自分が発注をすることを企業がどう思うのか懸念して発注ができなかった」という声がありました。仕事をお願いするメリットがあるにもかかわらず、気を遣って避けていたんですね。
ー 良かれと思ってやっていたことが、お互いの間に壁を作ってしまっていたわけですね。他にも成功事例はありますか?
雇用という視点では、産休や育休を取る社員の代わりとして一時的にアルムナイを採用している企業がありますね。また、社員向けの講演会でアルムナイから、社外視点での企業の魅力や、最新のビジネス動向などを話してもらうことで、社員の視野を広げたり、社員が自社の良さを再認識する良い機会になってエンゲージメントが向上したという事例もあります。
いずれにせよ、こういった取り組みを実現させるためには、お互いの関係性が築けていることが前提条件ですね。
また最近多いのは、アルムナイとオープンイノベーションに取り組む企業。イノベーティブなアイデアを出すために外の人とコラボレーションするのは重要ですが、「知の探索」ばかりになり「知の深化」が欠け、実現できずに終わることがよくあります。
そこで、社内のこともよく知っているアルムナイに外からの知見を持ってきてもらい、その会社に合った実現性の高いイノベーティブなアイデアを探るわけです。当社ではこれを「アルムナ”イ”ノベーション」と呼んでいます。
ー アルムナ”イ”ノベーション、すごく納得感がありますね。内と外両方を知っていて、「知の探索」と「知の進化」を両方できるのは、アルムナイだからこそです。アルムナイと積極的につながりを持っているのは、終身雇用文化が根付いていない比較的若い企業のイメージがあるのですが、大手企業でもアルムナイ・ネットワークは広がっているのでしょうか?
はい、大手のメーカーや広告代理店など、歴史ある企業も取り組まれています。「辞めた人は裏切り者」であるという風潮があるということは、在籍している社員もいつか辞めるときに同じ扱いを受けるということ。それは辞める人だけでなく、残った社員にとっても辛いことですから。
一度つながったら退職後もつながり続けることができる、という可能性を示すことができれば、社員はポジティブな気持ちで働くことができます。その結果、企業に対するエンゲージメントも向上するので、アルムナイ・ネットワークを導入している企業の社員からも、とても評判がいいんです。
ー 雇用の切れ目を縁の切れ目にしないというのは、アルムナイと関係を築く上でも社員に気持ちよく働いてもらうためにも大事なことですね。
ー この2〜3年の副業解禁の流れに加え、コロナ禍をきっかけにリモートワークが広まった結果、副業人材の採用に取り組む大手企業が増えています。もしアルムナイがかつて在籍していた会社で副業をした場合、企業にとってどのようなメリットがありますか?
オンボーディング期間を短縮できることは大きなメリットとしてあげられます。内情を知っているアルムナイであれば、仕事内容はもちろん、社内の文化や使っているツールなどがあらかじめ分かっているので、キャッチアップするスピードが速い。
もし「外にいる人材だからこそ自社にメリットがある」と考えて副業人材を採用するのであれば、外の知見を持ち、かつ中のことを分かっているアルムナイを選択肢から外す理由はないと思います。
採用の入り口として副業人材採用を考えている場合も、アルムナイ側が会社の変化や今の自分とマッチするかどうかを確認する目的で関わってもいいかもしれません。
もし、退職後もアルムナイと仕事で関わることが会社の文化になったら、良い「辞め方」「送り出し方」が増えると思うんです。
ー まさに灯台下暗しですね。社内にない知見を外から得るという観点でも、アルムナイはアプローチすべき人材群のトップ集団にいるはず。そこを無意識的に除外してしまってはもったいないですよね。
辞めた会社とつながることを無意識的に避けているのはアルムナイも同じです。いきなり「つながりましょう」と言ったところで、心理的なハードルがあったり、メリットが伝わっていないケースがあるので簡単にはいきません。
しかしアルムナイ・ネットワークをつくることは、両者がもう一度関係を築くためのきっかけのひとつになれると思うんです。
ー 副業採用もアルムナイも新しいトレンドなので、その両方に取り組んでいる企業はほとんどないと思いますが、アルムナイの副業採用に取り組もうとしている企業はあるんでしょうか?
挑戦しようとしている企業はありますね。社内に外部の人を入れるのが難しい業界では、アルムナイが転職した会社や起業した会社に社員を出向させたり、社員が副業として働く先とすることで外とつながろうと画策しています。
もしアルムナイの会社に出向や副業できるプログラムが実現すれば、アルムナイ側にとってその企業はバーチャルリソースのプールのようなもの。加えて自分と共通言語で話せる人が来てくれるのですから、そこから人材を引き抜くより、プログラムを受け入れたほうがメリットがあります。
ー 最後に、これから副業人材の採用を検討している企業の方に、メッセージをお願いします。
まずは「何のために副業人材を採用するのか」と「どんな人物像を採用したいか」を考えてほしいです。そして、アルムナイが当てはまらない理由がなければ、ぜひアルムナイも採用候補として考えてみることをお勧めします。
もし実現に向けて壁があるのであれば、ぜひ一度相談いただけると嬉しいです。
ー 今後、人手不足が深刻化する日本においてアルムナイとつながりをもつ企業はますます増えていくでしょうね。ありがとうございました!
>>企業の公式アルムナイ名簿・SNSを簡単に作成できるアルムナイ特化型クラウドサービス「オフィシャル・アルムナイ・ドットコム」はこちら<<
【参考資料】
*1:https://rc.persol-group.co.jp/news/202005290001.html
(取材:西村創一朗、文:矢野由起)
The post アルムナイとのつながりは企業と個人の双方にメリットをもたらす ーー株式会社ハッカズーク代表・鈴木仁志インタビュー first appeared on HARES.JP.
]]>The post パラレルプレナージャパン「パラレルキャリアを活かした大企業イントレプレナー人材の話を聞いてみよう!Vol.2~」 first appeared on HARES.JP.
]]>パラレルプレナー3名によるLT(ライトニングトーク)、パネルディスカッション、交流会と内容が盛りだくさんであった本イベントのレポートをお届けします。
パラレルプレナーとして活躍されている3名のライトニングトーク。本業でされているお仕事、複業を始められた理由や副業を通して実現したいこと等をお話いただきました。自ら行動し意欲的に活動されている3名は本業でどのような社内イノベーションを巻き起こしているのでしょうか。
神谷 渉三(きいろ)さんは本業ではNTTDATAで新規事業やDX推進、NTTDOCOMOでM&Aやアライアンスに従事されています。
そんな中、複業では教育系の取り組みを複数行われています。小中高生がオンラインで起業家教育を学ぶことができるTimeLeap Academyの立ち上げメンバーとして活動。また、小学生の子供に大人と交流の場を提供するNei-Kidを立ち上げられ、経済産業省「始動」2017SVに選抜・2018優秀賞を受賞。直近では株式会社I’mbesideyouを登記され、ITの力で教育へアプローチする試みをスタートされました。
「複業を始めた理由は息子だった」というきいろさん。息子さんが小学校に入った時あんまり笑わなくなったことをきっかけに、日本の小中学校にはいまだに様々な問題があることを知ったそうです。息子や息子の友達たちを笑顔にしたいという思いから教育系事業に取り組むことに。「社会全体を学校にする」という共通のミッションの元、それぞれの事業で異なったメンバーと活動を続けられています。
複業でのご縁がきっかけでNTTDATAの仕事に繋がったこともあると語るきいろさん。自分自身が事業を経営しはじめたことでベンチャー経営者に対するリスペクトが生まれ、NTTDATAでのコラボレーションや出資をする際経営者の方々と円滑にコミュニケーションがとれるようになったそうです。
つづいては加藤さんのLT。
本業では楽器事業会社にて、ボトムアップの新規事業を推進されている加藤さん。副業ではTumuguLLCの代表 として「伝えることを民主化していく」をビジョンに事業コンサルティング、ブランディング、M&Aアドバイザリーを中心に事業変革をサポートされています。またその他にもゼネコン、生活用品製造などの会社の顧問を複数されているそうです。
TumuguLLCではイノベーションできる人を社会にいっぱい育てることで面白い価値が世の中に増えれば、と思っているとのこと。新規事業の伴走型サービスという形で、日本の産業において新しい消費や新しい価値、新しい市場を作っていくことを目標とされています。
大企業はタスク型の仕事が多いため、新しいことを生み出す知見が不十分だと感じると言う加藤さん。副業はイノベーションを作り出せる人材を増やし、新規事業が生まれやすくなるメリットを持っていると感じているので、今後副業が広まっていけばと考えられています。
LTの最後はロート製薬に勤められている菊池 容子さんです。化粧品会社の商品企画に携わり、その後ロート製薬に転職された菊池さん。スキンケアのマーケティングを担当した後、現在は4年ほど広報・CSV推進部にて、統合報告書の制作やコーポレートコミュニケーション・CSRを推進されています。
東日本大震災の後に復興支援に関わる中で、東京にいながらも地元である宮城県との関わり方を模索しはじめた菊池さんが出会われたのがMYSH。現在は宮城の食と日本酒を広めるためのMYSH Sake Barの女将として働かれています。
好きなことが仕事になるのも素敵だけれど、ロート製薬でしかできないことがあるからこそ副業という選択を選ばれた菊池さん。本業でしかできないことにチャレンジしつつ、スタッフ全員が兼業しているというMYSHも自身のチャレンジする場となっているとのこと。
また、並行して今年より東京オリンピックの大会組織委員会でも働き始めたそうです。「ここで学んだことを本業に持ち帰れるよう、しっかり勉強してきます」と意気込みも語ってくださいました。
現在されている本業と副業の内容や本業と副業との関係性をお聞きしたところで、100名以上の参加者から募った質問を、登壇者の3名にお答えいただきました。
ー副業に対して、本業の職場の方々から理解はいかがですか?
きいろさん:
副業始めようとした時に社内の規定を調べたところ、常務が承認権限を持っていると知り常務に直接アプローチして副業に対する理解をいただきました。
私の事業はソーシャルグッドであったこともあり、本業に支障をきたさないのであればいいのではないかと捉えられています。
加藤さん:
基本的に社内ルールでは副業が禁止とされています。そのため、人事部の方や上司と2~3ヶ月かけて話し合いし、許可をいただきました。
菊池さん:
2016年から時間外であれば副業が認められました。オリンピックの組織委員会に関しては1ヶ月半のお休みをもらう必要があったため、その間のスケジュールを作成・調整し、改めて上司に許可をいただきました。この4年で社内でも副業に対してポジティブなイメージがついてきたこともあり、社外に出ていこうといった意識を持つ人が増えてきたなという風に感じています。
ー副業で活躍しているにも関わらず、本業をやめない理由は?
菊池さん:
本業と副業では全然違う仕事をしており、どちらも楽しいので続けています。ロート製薬だからこそできる仕事、ロート製薬ではないとできない仕事がたくさんあるのが大きいと思います。
加藤さん:
大企業の中でできることが限られていると感じる部分もあるので、本業と副業、両方が必要だなと感じています。同時に菊池さん同様、大企業の内部にいないとできないこともあるなと実感することも多くあります。副業である事業コンサルティングをするにあたっては、企業の仕組みやキーパーソン等が本業を通して常にアップデートすることが大事になっているのです。
また、本業では回ってこない仕事が副業で行うことができ、その経験が本業にまた還元されているのも大きいです。本業で伸ばしたい能力が伸ばせないときに、社外で伸ばせているという状況ですね。
きいろさん:
本業を辞めて、副業にフォーカスしてもいいかもと思うことも正直あります。それでも本業を続ける最大のメリットは出資する側の立場・気持ちを理解することができるからです。本業では出資する側、副業では出資される側と両方の立場を同時に経験できることは大変貴重な経験だと思っています。
ある程度副業で成果がでてくると、両立が難しいこともあり本業を辞める人が多いかと思います。しかし私はそれでも本業を続けることでNTTグループに貢献できる部分が多くある、若手にも良い影響を与えることができると考え、複業を続けています。
ー副業の自分と本業の自分。複数の自分に混乱することはありますか?
加藤さん:
個人のミッションを本業・副業の全ての領域でやっているので混乱することはありません。ただ、本業・副業において社員・顧問・CEOと立場は異なるので、切り替えが難しいなと感じることはあります。
きいろさん:
最初は本業と副業を切り離して行動していましたが、最近は割り切るようになりました。とある人が「私は私がだから私を変えようとすることをみんなに諦めて欲しい」と言っていたのを聞いて以来、臆せず本業でも思っていることを行ったり、やりたいことをやるようになりました。
菊名さん:
私も混乱することはないですね。本業は業界的にも職種的にも堅めで細かい確認作業等が多いですが、副業はチャレンジフィールドとして使っていいという雰囲気があるので伸び伸びと本業でできないチャレンジもさせていただています。
ー副業を始めて収入にはどれくらい変化がありましたか?
きいろさん:
収入を目的として複業している訳ではないので、本業がメインなことに変わりはありませんが、副業で月2桁くらい収入があります。また、キャッシュに限らず、株式で報酬をもらっているケースもあります。
加藤さん:
私も基本的に収入のために複業している訳ではありません。数億円程度の売り上げであれば副業で続けられるのでこのまましばらくは継続する予定です。
菊池さん:
私の場合は起業した訳ではないので副業はアルバイト程度の収入になります。私も収入のために副業している訳ではなくチャレンジする場を借りているという感覚が強いです。
ー副業での失敗談があれば教えてください。
菊池さん:
副業での失敗は特に思いつかないです…副業では失敗することよりもチャレンジすることを大事にしています!
きいろさん:
私の場合は、正直、副業では失敗しても死なないという感覚もあるので失敗しかしていません。もともとbtobなのに副業でbtocという畑違いなことをはじめたので失敗も必然的に多かったのかなと思っています。
加藤さん:
私は失敗してきていないことが失敗かなと思っています。人・環境に恵まれ、失敗することがなくここまでやってきましたが、同時にそれは失敗するほどのリスクをとれていないのかもしれないです…
ー副業を始めたことで本業の会社との向き合い方・見え方に変化はありましたか?
きいろさん:
副業を始めたことで自分の中での選択肢が確実に広がりました。本業で提案したもののできないことがあると、やりたいことができなくてイライラしてしまい会社の悪い部分ばかりにフォーカスしてしまいます。本業でできないことが副業でできるようになり、気持ちに余裕が生まれました。
菊池さん:
社外にでたことで会社を客観的に見れるようになりました。また、副業が本業と異なる職種なので会社の全体も見れるようになったと思います。
加藤さん:
副業をしていなかった時はどうしても隣の芝生は青い状態でしたが、副業を始めたことによって隣の芝生が必ずしも青くないことがわかり、会社のいい所をみつけられるようになりました。
ー今後、本業・副業を生かしてこんな人になりたい等の目標があれば教えてください。
菊池さん:
両親や会社の方々に応援していただけているからこそ本業・副業両方を頑張ることができているので、私自身も周りの人の挑戦を応援したり、サポートしたりできるような人でありたいなと思っています。
加藤さん:
伝えることの民主化が進み、イノベーションが世の中に浸透したらいいなと思っています。また、まだまだ仕事が辛いと感じている人が多いなと感じているので楽しそうに働く人が増えていってほしいです。
きいろさん:
「社会全体を学校にした人だ」と言われることを目指しています。本業と副業を駆使して実現させたいです。
3名のパラレルプレナーからお話を聞いた後は、ブレイクアウトセッション機能を活用した交流会が開催されました。登壇者と参加者でカジュアルに対話を行えたことで現在パラレルプレナーとして活躍されている方も、今後パラレルプレナーになりたいと考えている人にとっても有意義な時間となったことと思います。
今後もパラレルプレナージャパンは、パラレルキャリアを活かして、アントレプレナーとして枠組みを飛び越えた活躍をする人々を支援していきます。
パラレルプレナーとは、パラレルとアントレプレナーの造語で、パラレルキャリアとして外部の知識・経験・人脈を持ち、社内で活躍している人(社内起業家)たちのことを指します。5年前は9割以上の企業が副業禁止でしたが、今では副業解禁となった企業も多く、副業をすることへの認知は拡大しています。しかし、それだけではせっかくの働き方を活かしきれていないかもしれません。
本業を継続しながら新しいことにチャレンジし、経験や知識、ネットワークが得られるのなら、それらを社内に持ち帰ってイノベーションを起すことも可能です。「副業があったから実現できた!」という活動を社内でも引き起こせてこそ、副業2.0と呼べる活躍となるのではないでしょうか。
いまの日本に必要なのはそんな、「組織の力」に「個の力」が掛け算できるパラレルプレナーです。この存在を増やしたいと考えた複業家・西村創一朗をはじめとした有志10人が集まって活動しているのが、パラレルプレナージャパンになります。
===
イベントファシリテーター:西村創一朗(Twitter)
The post パラレルプレナージャパン「パラレルキャリアを活かした大企業イントレプレナー人材の話を聞いてみよう!Vol.2~」 first appeared on HARES.JP.
]]>The post 家族も大事にしながら、ライフワークを実践していく ー パラレルプレナージャパン公式イベントレポート first appeared on HARES.JP.
]]>2020年7月20日、パラレルプレナージャパン公式イベント「パラレルキャリアを活かしたイントレプレナー人材の話を聞いてみよう!Vol.3」が開催されました。
パラレルプレナーとは、パラレルキャリア(複業)で得たものを活かして、イントレプレナー(社内起業家)として本業でも新しいことにチャレンジしている人のことです。
パラレルプレナー3名によるLT(ライトニングトーク)、パネルディスカッション、交流会と内容が盛りだくさんであった本イベントのレポートをお届けします
▼本イベントのグラレコがこちら!
まずはパラレルプレナーとして活躍されている3名のライトニングトークからはじまりました。それぞれの活動や、その軸にあるミッション、意識しているポイントをお聞きします。
大手企業で働きながら、一般社団法人を設立された石川さん。「家族」というチームをベースにしながら、主体性と、会社メンバーとの関係性を大事に働かれています。
石川貴志 プロフィール
一般社団法人Work Design Lab 代表理事
リクルートエージェント(現リクルートキャリア)の事業開発部門のマネージャーを経て現在、大手出版流通企業の経営企画部門にて勤務。2013年にWork Design Labを設立し「働き方をリデザインする」をテーマにした対話の場づくりや企業や行政等と連携したプロジェクトを複数手掛ける。2018年にAERA「生きづらさを仕事に変えた社会起業家54人」選出。(公財)ひろしま産業振興機構の創業サポーターや、(独)中小機構が運営するTIP*S アンバサダー、順天堂大学 国際教養学部グローバル・ヘルスプロモーション・リサーチセンターの客員研究員なども務める。1978年生まれ、三児の父。
パラレルプレナーという働き方のポイントは「パラレルキャリア(主体性)」と「イントレプレナー(関係性)」にあります。
パラレルキャリアには、会社から飛び出す「越境力」がまず要ります。それを支えるのが、「自分はどうしたいのか」という問いです。つまり、主体性が鍵。私自身は、自分の法人をもち主体性を発揮する個人を「会社員兼CEO」と呼んでいます。
パラレルキャリアで名刺が複数あることで、それぞれの出会いに合わせて最善な自分をチューニングすることも可能なんです。
その一方で、イントレプレナーという側面は、会社との関係性の中で問われます。主体性を持ちつつも、「健全な自己否定力」を兼ね揃えて、ゆるやかに自分を変化させていくことが必要となってくるのです。正しさだけで押し付けても、相手ありきだと上手くいかないため、「再結合力」が重要になるでしょう。
また、わざわざ社内を飛び出し、パラレルキャリアを築くのであれば、「非金銭的価値を何に感じるのか?」について考えるべきだと思っています。
つづいて、「日本一おかしな公務員」という本も出版されている山田さんからお話いただきました。(山田さん、なんと標高920メートルからのご出演となりました…!)
山田崇 プロフィール
1975年塩尻市生まれ。千葉大学工学部応用化学科卒業
塩尻市役所 企画政策部 地方創生推進課 地方創生推進係長(シティプロモーション担当)
空き家プロジェクトnanoda代表
内閣府 地域活性化伝道師
信州大学 キャリア教育・サポートセンター 特任講師(教育・産学官地域連携)ローカルイノベーター養成コース特別講師/地域ブランド実践ゼミ
私はプライベートな時間を利用して、公務員以外の個人としての活動をしています。個人の活動は、お金を払ってでもやるべきだと考えています。実際、私は所属しているふたつのNPOに自分の時間とお金をかけて参加しているんです。
私は「LIFE SHIFT」という本に大きな影響を受けています。「人生100年時代」はいまだかつて人類の誰も体験したことがないステージ。まさにいま始まった新時代に適用するために、今からでも動く必要があります。
①エクスプローラー(探検者)として好奇心に従い、自分のやりたいことをやる。
②インディペンデント・プロデューサー(独立生産者)として自分で仕事を作り出す。
③ポートフォリオ・ワーカーとして異なる業種の活動を同時に行う。
このような動きをして回ることが、将来の仕事のきっかけとなっていきます。私自身、個人で活動していたことが、公務員の仕事へとつながりを見せてきました。
最後に平原さんのLTです。「世の中の境界線を溶かす」をミッションに掲げる平原さんは、その言葉通り、個人や会社、事業の枠を超えて、相乗効果を積極的に生み出しています。
平原依文 プロフィール
小学生から単身で中国・カナダ・メキシコ・スペインに留学。3.11東日本大震災をきっかけに帰国し、早稲田大学国際教養学部に入学。新卒でジョンソン・エンド・ジョンソンに入社し、デジタルストラテジー・タレントデベロップメントを経験。幼少期からの夢である日本の教育変革のためプロノイア・グループに転職。広報、マーケティング、ブランドコンサルティングなどに従事しながら、幅広い世代へのSDGs教育のため「地球を一つの学校にする」をビジョンに掲げるWORLD ROADを設立。社員社長を自ら兼任し、自分の「軸」から始まる持続可能な社会と働き方を追求する。
複数の会社・仕事をしていますが、どれも共通して「世の中の境界線を溶かす」というミッションを掲げて動いています。それは会社の境界線もです。そのため、私自身には複数の会社で動いているという意識はありません。どれも連動したひとつの活動と捉えています。
複業をはじめたきっかけは、コンサルタントとしてある企業から「副業人材を増やしたいんです」という相談を受けたことでした。私自身が実践したうえでその課題を明るみにしようと挑戦した先に、どんどん働くフィールドが増えていきました。いまは「生きる」と「働く」の境界線を壊していきたいという想いをパラレルワークの軸に置いています。
個人的に「社員社長×かけあわせ」できるよう動いており、一社で完結するのではなく、かかわっている全ての企業・会社、そしてそれぞれのパートナー企業をつなげていきたいなと考えています。
その土台となっている価値観として「お金をもらわなくてもやりたいことをやる」というものがあります。ミッションを軸に、経験を積むことで、いまのライフワークが形成されました。
後半は、3名の活動から生まれた価値観をさらに深堀するためのパネルディスカッション。3名ともそれぞれの視点でいまの社会の課題を捉え、それに対しての働きかけを行っているので、熱のこもったディスカッションタイムとなりました!
ー複業をはじめたきっかけは?
石川さん:
「複業をやるぞ!」と意気込んで始めたというわけではないんです。最初のきっかけは、東日本大震災のボランティアへ行ったことですね。同じタイミングで、もともとしていた新規事業の仕事が凍結になり…。時間が空いたことで、「ソーシャルなことに挑戦したいな」という気持ちが湧きました。社外の活動を始め、2枚の名刺を持ってパワフルに動く方たちと知り合い、その人たちへの興味関心から他の活動へもつながっていったんです。
そのときに出会えた方たちとは、いまでも関係性がつながっています。いま「なにから始めればいいのか分からない!」という人がいたとしたら、ボランティアからでもいいので、一歩踏み出してみてはどうでしょうか。
平原さん:
複業を始めたのは1年半前なんですけど、もともとジョンソン・エンド・ジョンソンでもいくつかのプロジェクトをかけあわせながら働いていたため、自分の中に「イントレプレナーシップ」は前々から芽生えていたと感じます。
デジタルマーケティング領域で働きつつ、ずっと「人と関わること」がしたいなと考えていて、それを周囲の人にも伝えていたんです。そして、世代別のコミュニケーションギャップを解消するための「社内マッチングアプリ」のようなものを作ることに思い至りました。お互いが持っているスキルを可視化して交換するような機能を持ったプロダクトです。その提案が社内で通り、7割をマーケティングで稼動しながら、残りの3割で様々な部門の方々と一緒に開発に乗り出しました。
そこから、いつくつかのプロジェクトを並行していくことが自分に合っていると気付けたんです。そして、転職先でコンサルティングをしていたところ「お金儲けの副業人材ではなく、軸を中心とした副業人材を増やす」という課題を請負い、自分の副業もスタートしました。
山田さん:
「自分が関心がある軸で活動してみてもいいんじゃないか」という思いが始まりでしたね。2012年4月に最初の空き家を借りたんですけど、その頃、ちょうど周囲で少子化の波が来ていることを体感していたんです。小学校の統廃合や、商店街の閉店など…。国の政策だけでは解決できない現状に身を投じることで、実際に誰が困っていて、何ができるのかを知ろうと思いました。そこで得たものを、本業である公務員の働きかけに活かそうと考えたんです。
自分が課題の現場や近くにいることで、個人の問題と、社会問題は違うことを実感しました。現在は、空き家を3軒借りています。最初に笑顔にしたい人を見据えて、事業を考えることを大事にしているんですけど、私にとってはそれが空き家の大家さんです。
ー再結合力を身につけるにはどうしたらいいですか?
石川さん:
再結合力を発揮している人に話を聞くことがいいと思います。先人がパターンを持っているので、まずはそこから学ぶことが近道。外に出ると新しい情報を取り入れることができるので、「自分はイケている!」と思い謙虚さを失ってしまうこともあります。そうすると、正しさで組織に入り込もうとするのですが、正しさだけだとうまくいきません。組織にはどこかしら矛盾があり、それを理解したうえで再突入する必要があります。それができている人に話を聞くことはとても勉強になります。
ちなみに、会社は結局「お金」と「政治」が土台にあるんです。経済的なメリットを提示できるようになれば再結合しやすくなるのではないでしょうか。また、決済権限をもっている人物の立場に立って、その人の感情に寄り添っていくことが大切ですね。
人の話をよく聞いた後は、実際にやってみましょう。会社の文化は全く違うので、やってみないと分からない部分もあります。
平原さん:
私は常に、ひとつの物事として見る、という意識を持って活動していますね。それぞれ違った会社、個人であると考えずに「互いが成長できるにはどうしたらいいか?」ということを念頭に置いて行動することで、一社だけだと到達できないところまで伸びていけるんです。
山田さん:
私の場合は、自分がやったことを事実としてアーカイブ化し、公開するようにしていました。自分らしさというキャリアや関心事を、デジタルで作ることがいまは容易な時代です。記録し、公開しておくことで、いろんな人にリンクひとつで届けられます。(山田さんのプロフィールページ:「プロフィールなのだ」)
そうすることで、距離や時間を越えて、同じ関心をもつ人とつながりやすくなりました。また相手が検索して私を尋ねてきたり、講演のオファーが届くようになりました。自分のポートフォリオを持っていることが再結合に働きかけてくれます。
ー仕事で多くの時間を要すると思いますが、家族とはどうコミュニケーションをとっていますか?
石川さん:
家族も価値観はばらばらです。家族というチームを経営チームとして考えると、それぞれのポジションや動きがあります。それをするうえで、「家族はどうありたいか?」「どこに向っているのか?」について会話するようにしています。はっきりさせておく必要はありませんが、方向性は決めておくといいですね。
家族というチームをおざなりにして、複業を始めることは難しいですし、家庭内で反発も起きます。会話ができる土台は、日頃から作っておきましょう。
山田さん:
家族であっても価値観は違って当たり前なんだ、という前提で対話するように気を付けています。あと、パートナーとしっかり会話するときには、「チェックイン」「チェックアウト」を設けて、そのときの感情をしっかり言語化して伝えるようにしていますね。
平原さん:
私はパートナーと「健康であること」だけをコンセンサスとしてもっています。それ以外はお互い自由に活動していますね。あと、我が家では、「好きなところ100」という交換日記のようなメモノートを利用して、毎日、好きなところを伝えあっています。現在、リモートワークで一緒にいる時間が多いので、ストレスも多いと思うんです。でも、毎日一緒にいても見つけられる相手の愛おしい一面も必ずあります。こういったプロダクトを利用しつつ、コミュニケーションをとれるよう工夫しているんです。
ー長期的なキャリアをどのように描いていますか?
平原さん:
いまのままを続けます。私は「複数社で働いている」とは認識しておらず、全てが私にとって、一つのライフワークです。これからどんどん副業が当たり前化していきます。
そのとき、自分という存在をしっかり発揮していれば、いろんなところから声がかかるでしょう。そして、仕事を選ぶためには「自分がライフワークにしたいものってなんだろう」という判断軸が必要になります。自分の軸や、積み重ねた経験、そしてライフワークを常に考え続けられる状態でありたいですね。
山田さん:
中長期的なキャリア、ということですが…いまこそ「いま」に集中することを心がけたいです。その上で、違和感は無視をせず、仮説を立てて行動していこうと考えています。それは、短期スパンで、ですね。
2,3年先のことを考えていても、いまの時代は、全く想像もしない未来がやってくるのが現実なので…。3か月だけでもやってみて、記録し、公開しておけば、もしかしたらその先の未来でトレンドになるかもしれませせん。
石川さん:
自分自身のキャリアは、方角感はありつつ、具体的なキャリアは描いていないです。その中で、自分自身の時間を何に投資していくか、という問いを意識してきたいです。この意識を、多くの人がもつことで日本全体がポジティブな方向へ進んでいけると信じています。
また大人が何歳になっても楽しんでいるということが未来を明るくすると感じています。ただ「転職」というカタチで働き方を変えようとすると、それまでの過去だけで判断されて、可能性を拡げられないことが多いんです。「未来を理由に未来を決められる」「自分自身を何歳からでもチェンジできるという」文化を育んでいきたいなと考えています。
5年前は9割以上の企業が副業禁止でしたが、いまでは副業解禁となった企業も多く、副業をすることへの認知は拡大しています。しかし、それだけではせっかくの働き方を活かしきれていないかもしれません。
本業を継続しながら新しいことにチャレンジし、経験や知識、ネットワークが得られるのなら、それらを社内に持ち帰ってイノベーションを起すことも可能です。「副業があったから実現できた!」という活動を社内でも引き起こせてこそ、副業2.0と呼べる活躍となるのではないでしょうか。
いまの日本に必要なのはそんな、「組織の力」に「個の力」が掛け算できるパラレルプレナーです。この存在を増やしたいと考えた複業家・西村創一朗をはじめとした有志10人が集まって活動しているのが、パラレルプレナージャパンになります。
===
イベントモデレーター:西村創一朗(Twitter)
イベントアシスタント:青木空美子(Twitter/note)
アイキャッチデザイン:五十嵐有沙(Twitter)
執筆・編集:野里のどか(ブログ/Twitter)
The post 家族も大事にしながら、ライフワークを実践していく ー パラレルプレナージャパン公式イベントレポート first appeared on HARES.JP.
]]>The post 自律的なキャリア観で、会社をもっと好きになった【パラレルプレナーの時代 vol.2 AGC 磯村幸太】 first appeared on HARES.JP.
]]>近年、人材育成や社内改革の観点から、「イントレプレナー=社内起業家」を育成する企業が増えています。また、パラレルワーク(複業)として社外で起業したり、社外団体を設立したりする人も少なくありません。
そんな中、パラレルワークで得たスキルや経験をイントレプレナーとして本業に活かし、社内でイノベーションを起こそうと仕事をしている方がいらっしゃいます。そんな存在のことをパラレルプレナーと呼びます。
本記事では、「パラレルプレナーの時代」と題した連載で、パラレルプレナーとして会社の枠に囚われずに活躍する磯村幸太さんにお話を伺いました。
磯村幸太 プロフィール
AGC社内コンサル兼経営企画 / フリーランス / NPO二枚目の名刺 / 慶應大学大学院SDM研究科研究員 / 愛媛県八幡浜市コミュニティマネージャー等。
組織開発、オープンイノベーション、社会課題解決等にファシリテーターとして取組む傍ら、パラレルキャリアの学習理論である越境学習を研究している。
note:https://note.com/kota1106
ー本日はよろしくお願いします。まずは磯村さんの現在のお仕事について教えてください。
磯村幸太です。東京都と愛媛県の二拠点生活を行っています。パラレルプレナーとして仕事の場を大きく分けて5つ、持っています。
本業は、新卒から入社した素材メーカーAGCの社内コンサルと経営企画です。AGCは、はじめに工場で生産管理を2年、異動して営業を3年やった後に、志望して現在の部署になりました。
2つ目がNPO法人「二枚目の名刺」です。二枚目の名刺では、社会課題に関心がある社会人と、NPO法人のマッチングして、協働プロジェクトを行っています。
3つ目が、 慶應大学大学院SDM(システムデザイン・マネジメント)研究科研究員です。2017年に大学院へ入学し、2019年に修了したのですが、現在は研究員として籍を置いています。
4つ目がフリーランスとして、キャリアアドバイザーやコーチング、ファシリテーターなど様々な形で働いています。
そして最後に、拠点のひとつである愛媛県八幡浜市でのコミュニティマネージャーなどの活動です。
ーまさに複業と言える働き方ですね。それぞれの活動に親和性はあるのでしょうか?
ビジネスとしての会社員、ソーシャルとしてのNPO、アカデミックとしての研究員…と領域はバラバラのように見えますが、いずれの活動もファシリテーターとリサーチャーとしてのスキルを活かして仕事をしています。
ーパラレルプレナーとして相互に好影響を与え合って働けていますね。
ーそもそもどのようなきっかけでいまの働き方になったのでしょうか?
2017年の元旦に、たまたまテレビで「ライフシフト」という本が紹介されており、興味を惹かれました。ネットで調べて概要文を読み、そこで「ポートフォリオワーカー」という言葉と出会います。これは面白そうだぞ!と思って、仕事はじめだった5日に上司に副業をしたいと相談し、その日のうちに開業届けまで出してしまいました。
そもそも実家が地元で家業を営んでいて、それの手伝いをする過程で事業を起す必要性もあったんです。
ーAGCと言えば大企業ですし、2017年だとまだまだ副業ですら認知度は低かったのではないでしょうか?
そうですね。ただ、AGCは地方に工場を持っていて、兼業農家の社員が一定数いました。そのため、許可制で副業の実施は承諾を得られるようになっていました。とはいえ私のように、やむを得ない事情があるわけでもなく、どちらかと言えば自己実現の意味合いを含んだ副業というのは前例のないことだったと思います。
ー開業届けを出すまでのスピード感にも驚かされました。当時、事業展開などは考えていたのでしょうか?
「思い立ったら吉日」と言わんばかりの行動をとる人間なんですよね。言葉の通り、思い立っての開業だったので、当時はまだ事業の内容はひとつも決まっていませんでした。
ーそこからどのように会社員以外での仕事をつくっていったのでしょうか?
まずは無料のキャリアアドバイザーから始めました。ちょうどそれが20代後半でしたから、周りの友人でキャリアに悩んでいる人が多かったんですよね。
そういうリアルに困っている人が目の前にいましたし、私は整理整頓が得意な性格なので、悩んでいる人の思考整理の手伝いはできるぞ、と思って始めました。
最初は知っている人に声をかけて無料での実施です。それを満足に感じてもらえれば、自然とその人が別の人を紹介してくれるんです。そのような出来事を重ねて、一定の価値を提供できるという手ごたえを覚えてから、今度は投げ銭制で有料化しました。
終わった後に「いまのこのキャリアアドバイスに、いくら払いますか?」と聞いて、その金額をいただきました。何回か繰り返すうちに、自分が提供しているサービスにどれだけの金銭的価値があるのかが見えてくるので、そうやって値付けを行っていましたね。
ー最初からお金を求めるのではなく、自分ができることからスタートしたんですね。その後、別の事業を始められていますが、どのように広げたのでしょうか?
大学院へ行ったことが大きな転機だったと思います。大学では、デザイン思考やシステム思考、プロジェクトマネジメントなどの様々な思考法を学べました。独学で体得したファシリテーションのスキルと掛け算することで、それまで行っていた個人向けのカウンセリングを、団体向けのワークショップという形でも実施可能になったんです。
大学院の修士論文では、パラレルキャリアの本業とのシナジーについて研究しました。いまの私の働き方そのもののような論文でしたね。
それまでビジネスとアカデミックの両方の領域で活動ができていて、次に進出するならソーシャルな場だと考えました。そこで、NPO「二枚目の名刺」を思い出し、自ら応募して事業に参加することになったんです。
ー「二枚目の名刺」ではどのような業務を行っているんでしょうか?
パラレルキャリアや越境学習に関する調査をし、それを記事にまとめて発信しています。そしてそこで得た知識を使って、人材育成に関してのプロジェクトも遂行しています。
また、プロジェクトデザイナーとして、マッチングしたNPOと社会人の伴走者の役割を果たしています。各プロジェクトが3か月スパンで実行されるのですが、その間に、参加者の目の色が変わっていくんです…そういった変化に携われることに、大きなやりがいを感じています。
ー社外での経験、得たスキルが社内で活かせ始めたのはどのくらいのタイミングなんでしょうか?
開業して半年経ってくらいでしょうか。AGCでは、ビジネスプロセスを改善していく社内コンサルの仕事がメインだったのですが、それが人材育成や組織開発の業務も任させるようになっていきました。
副業での実績や、大学院での学びなどをアピールしていたことで、繋がっていきました。もともと上司には承諾をもらったうえでの活動だったので、どんなことをしているのか気に掛けてもらえていたんですよね。そこでしっかりと、自分の働きを伝えられたからだと思います。
ー複業家だったのが、だんだんと、経験を相互作用させるパラレルプレナーに進化していったんですね。
現在だと、慶応義塾大学とAGCでの共同プロジェクトとして、サステナブルな社会を醸成するためにAGCが貢献できることを考案しています。ソーシャルとビジネス、アカデミック、それぞれ違う手段や人脈の良い部分を組み合わせて、新しい価値の創造にチャレンジしています。
ーパラレルプレナーとして活動を始められて、3年が経っていますが、どのようなことが得られたと感じていますか?
活動の場が広がったことで、当然、人脈や知識や機会が倍増しました。また、マインドへの変化もありましたね。自分のキャリアは自分で作る、という気持ちでいます。
日々の楽しさも得られたことのひとつです。大学の頃から、「自分がわくわくすることしかしないぞ!」と心に決めていました。そのために、勉強や自ら行動することを大切にしてきました。
ただ、仕事となると、自分自身でコントロールできない部分もあります。環境の変化に柔軟に対応するため、多くのスキルと活躍の場は役立ちますね。たとえ、「楽しくない」と思える仕事があったとしても、自分で別の仕事へシフトすることや、別業務にスイッチすることで気持ちの入れ替えが可能になっています。そのおかげで、毎日を楽しく過ごせていますね。
ー磯村さんの活き活きとした表情からも楽しんで生活されていることが伝わります。逆に、失ったものはありますか?
会社への忠誠心、でしょうか。会社に従わなければならない、という感覚はなくなりました。そして前よりももっと会社を好きになりましたね。
色んなことを提案できる自分になって、それを理解し後押ししてくれることが分かったので、愛着が増しています。
ー磯村さんは、領域に囚われずに柔軟な働きかけができていると感じますが、意識すべきポイントはあるのでしょうか?
それぞれの組織には、違ったカルチャーがあるので、別の組織で得た知識をそのまま移植しようとすると、拒絶反応が起きます。越境学習研究においては、これを「迫害」と呼びます。土台が違うので、反発が起きるのは当然です。
なので、そこには翻訳者の存在が必要になります。組織ごとの言葉づかいや、物事の進め方に合わせてあげるんです。そうやってうまく移植してあげることで、知識や価値感が存分に発揮されると感じています。
パラレルプレナーは翻訳者としての立ち回りを意識すると良いでしょう。
ー本日はありがとうございました!
===
取材:西村創一朗(Twitter)
執筆・編集:野里のどか(ブログ/Twitter)
The post 自律的なキャリア観で、会社をもっと好きになった【パラレルプレナーの時代 vol.2 AGC 磯村幸太】 first appeared on HARES.JP.
]]>The post 公務員×複業!? 肩書きの枠を超え、社会や地域のために働くパラレルな生き方とは first appeared on HARES.JP.
]]>そして、複業の波は公務員にも確実に来ていると考えます。
しかし公務員とは、営利を目的とせずに国や地方公共団体などの職員として、広く国民に対し平等に働くことを活動目的としている方々です。営利活動になることや複業をそもそも禁止している行政もあるでしょう。
「私は公務員だから、複業なんて関係ない…」これは、果たして本当にそうでしょうか?ご自身が本当にやりたいことから、目を背けていませんか?
実はすでに公務員という肩書を持ちながら、役所の部署や業務の枠を飛び越え、時には民間企業や人を巻き込みながら活躍する人材がいます。
そういった方々を、我々は「越境人材」と名付けました。そして今後の日本の社会や地域を変えていくのはこういった人材ではないか…という考えから、今回のイベントが立ち上がりました。
本イベントでは、”複業研究家”であり『複業の教科書』執筆の西村創一朗がモデレーターとして、現役「公務員複業家」のお二人の働き方・考え方を探っていきます!
ゲスト紹介:
長井 伸晃(ながい のぶあき)
神戸市企画調整局つなぐラボ特命係長。
横断的な政策課題に対し、課題の実態リサーチと関連するステークホルダーとの連携を図り、市民本位の具体的な政策・課題解決につなげるべく、遊撃部隊として活動する。
これまでに、フェイスブックジャパンやヤフー、Uber Eats、出前館をはじめとする数々の企業との事業連携を通じて地域課題解決に取り組むとともに、バルセロナ市との連携によるオープンガバメント人材の育成を図るワークショップなどの企画を行った。
また、神戸で開催されるクロスメディアイベント「078」や「TEDxKobe」に加え、全国の公務員コミュニティ「よんなな会」など、様々なイベントやコミュニティの運営に関わる。
複業としては、神戸の知られざる魅力を発掘・発信するNPO法人「Unknown Kobe」を設立し、まちあるきイベントやセミナーなどの活動を行っている。
「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード2019」受賞。
尾崎 えり子(おざき えりこ)
株式会社新閃力 代表取締役。
早稲田大学法学部卒業後、経営コンサルティング会社を経て、子ども向け教育事業会社に転職。企業内起業にて、第一子出産後子会社の代表に就任。
第2子出産をきっかけに退職し、2014年に千葉県流山市で創業。2016年サテライトオフィス「Trist」をオープンさせ、都内からの企業誘致に成功する。メディア掲載、受賞歴多数。
2018年太田プロダクションのお笑い養成所に通い、13期生として卒業。2020年4月から奈良県生駒市の教育改革担当に採用。企業を経営しながら、公務員として新しいキャリアにチャレンジ。9歳と7歳の2児を育てるワーキングマザー。
ーさっそくですが、公務員でありながら複業ってアリなのでしょうか!?
長井さん(以下、敬称略):僕の働く神戸市は、職員の複業制度を2017年の3月に取り入れ、話題になりました!私自身もあるキッカケと出会ってから、色々なプロジェクト・活動を複業を行うようになりました。
神戸市は職員が公共性のある組織で副業に就きやすくするため、4月から独自の許可基準を設ける。一定の報酬を得ながらNPO法人などで活動できるようにする。総務省によると、副業推進を目的に自治体が独自の許可基準を設けるのは珍しい。職員の働き方を多様化し、外部での経験を公務に生かして市民サービス向上につなげる。
4月から設ける基準では(1)社会性、公益性が高い(2)市が補助金を出すなど特定団体の利益供与に当たらない(3)勤務時間外(4)常識的な報酬額――などを明記して、職員が副業しやすくする。職員が休日にNPOで活動したり、ソーシャルビジネスを起業したりすることを想定している。中高年の職員が退職後の「第二の人生」に備えて、在職中から地域貢献活動などに参加しやすくする狙いもある。
神戸市、職員の副業推進 2017/3/3付 日本経済新聞 朝刊
ー長井さんは、普段神戸市にてどのようなお仕事をされているのでしょうか?
長井:僕の経歴をお伝えすると、最初は神戸市の生活保護のケースワーカーから人事・労務系のお仕事、その後はICTを活用した地域課題解決やコミュニティづくりに取り組むようになり、現在の「つなぐラボ」の業務に繋がっています。
人事・労務系のお仕事では、役所外の方とはあまり関わらない6年間を過ごしておりました。
このICTを活用した地域課題解決を担当する新規部署の立ち上げ時がターニングポイントでしたね!前任者もいない状況で、大手IT企業等と連携をして、行政の課題を解決するという仕事でした。
ーつなぐラボではどのような取り組みをされているのですか?
長井:つなぐラボのミッションは、市民や地域に溶け込んで行政の取り組みが届いているか、足りないパーツがないかどうかを検証し、政策を提案してほしいというものでした。多種多様なメンバーが集められ、地域や市民のために出来ることを企画・提案しています。
私が担当してきたものでいいますと、先ほどのICT活用の部署とつなぐラボでの取り組みとして、これまで10企業1都市との連携を実現し、地域課題解決や新たな市民サービスの創出につなげています!
ー特に印象的な仕事のエピソードはありますか?
長井:僕個人としては、かつてよりフードロス対策の事業やシェアリングエコノミーの事業もずっとやってみたかったので、今回の新型コロナウイルスの影響を受けてUber Eatsや出前館と連携を開始するなど、市民のために行動を起こせて良かったと思っています。
神戸市は、緊急事態宣言後に独自の「新型コロナウイルス感染症対策 最優先宣言」を発出しました。その発令を受け、僕の本業である「つなぐラボ特命係長」と兼務で「広報特命班」としていわば”庁内複業”のような活動をしておりました。
飲食店支援など、つなぐラボとして考えてきた企画を記者会見で発表したりする中で、ひとつの部署だけでは分からなかったことを新たに気づけた瞬間も多数あったので、非常にいい経験になりました。
この任務は、第一弾から第四弾まで市民や飲食店の方々の声を集約し地域の方々の支援を段階的に進化させていきました。
ー本業でも実績がある長井さんが、複業を始めるキッカケと両立のコツは?
長井:つなぐラボの仕事を通じて、非常に多くの気づきと仲間に出会えたのがキッカケです。
現在僕は複業で神戸の知られざる魅力を発掘・発信するNPO法人「Unknown Kobe」を設立し、まちあるきイベントやセミナーなどの活動を行っています。
このNPO法人を立ち上げるとき、とにかく企画段階からワクワクが止まらなくて、10人ほどの知人に資料を送って「あなたと一緒にこのような活動をしたい!」と仲間を集めたんです。
目的を共有した結果、全員から良い返事をいただけました!その10人は、自分に足りないものを補ってくれるメンバーや、一緒にやったらスムーズにこのプロジェクトを進められるだろうと思えたメンバーで構成されています。そうして、仲間を集めて本業との業務のバランスも取れるように始めました。
NPO法人での取り組みは神戸市の仕事の性質と全く異なるようなものではなく、親和性も高い。仕事の領域は区別はしているけれど、常に神戸の街を良くするためにはどちらでやった方が近道なのか?と考えながら進めています。これが両立のコツです。
ー複業をやっていて、本業に活きたことは?
長井:僕が複業で一番得られたものは、ネットワーク、繋がりです。
NPO活動やイベントの運営スタッフをする中で、IT系やクリエイティブ系の仕事をしている方々など、公務員の仕事ではなかなか関われない方々と出会えた上に、連携できるようになったのはとても大きかったです。
イベントの運営や企画をし続ける中で、本業以外での出会いを本業に持ち込み、ネットワークと温度感を持ち込めました!これは本業だけでしたら得られていなかったと思います。
ー尾崎さんは起業家として活躍している一方で、お笑い養成所に通うなど多方面で活躍されていますよね。その中でも、流山市で実施している取り組みについて聞かせて下さい!
尾崎さん(以下、敬称略):私の目標は「全ての子ども達が親の文化資産に寄らずに、多様な経験、多様な人脈を築ける社会をめちゃくちゃ面白く作る」というもの。そのため、日本の社会が抱えている課題を解決し、我々の子どもたちの置かれている環境を変えたい!と思い活動をしています。
2020年の現在、日本では下記のような問題が起きているかと思います。
・首都圏の飽和と地域の過疎化が起きている
・働き方改革をやっているも、人材の減少と質の低下が起きてしまっている
・教員不足や学校組織の限界
・子ども達の心の問題と学びの質も課題視されている
企業や行政もめちゃくちゃ頑張っているのに、どの施策も歯車が組み合っていない…これが、かねてより私自身改善したいなと思っていました。そこで、自分が住んでいる流山市を基軸に企業を立ち上げ、「街まるごとの改革プロジェクトを企画・開始しました。
私が今一番実施したいことは学校内にサテライトオフィスをつくることです。
ー尾崎さんのご家族やお子さんもこの取り組みには関連していらっしゃいますよね。
尾崎:そうですね。この取り組みをもっと拡散したい!と思ったキッカケは、私の息子が関連しています。息子は仮面ライダーが大好きで、学校でそのことを話したら「幼稚だ」笑われて悔しい思いをしたそうなんです。
そこで息子のために、仮面ライダー好きな大人・子どもを地域から集め、仮面ライダーの良さについて語る会を実施したところ、この取り組みを地域に浸透させたい!と強く思えたんです。
▼その時の様子をまとめた投稿がSNSなどで話題に!
https://note.com/backcasting/n/nd7081582fbf7
自分が住んでいる地域で、年齢に関係なく趣味で繋がることが出来ること・自分の大好きなことを地域の中で実現できたり、大好きなものを大好きだと声に出せることはとても素敵なことですよね。
大人も子どもも、より繋がれる場を作りたいと思い全国の学校の空き教室に、シェアサテライトオフィスをつくることを本格化させたいと思ったんです。
学校に様々な職種の大人が出入りするため、美術の授業をプロのデザイナーから学ぶことも出来ます。また、親御さんのオフィスが学校にあれば、親子で一緒に登校できますので家族の時間も作れます。子ども達はオフィス利用者にカフェを開業し、、お客さんとのやりとりなど実際にビジネスの体験をすることが出来ます。そうした相互に良い変化がもたらせるような新しい空間を創りたいと企画しました。
ーご自身で創業した会社で活躍しつつ、なぜ公務員になろうと思ったのですか?
尾崎:経営者としても、今までの事業は全て前述の「夢」に向かって進めてきました。
ただ、一気に全国の学校に対してこの取り組みを横展開・浸透させたり、インフラとして継続性をもたせて拡大してけるのは、民間企業ではやはり難しいと感じることもありました。
民間企業でも小さな範囲からトライ・アンド・エラーを繰り返すことは出来ますが、外からではなく、内側(行政)に入って政策として取り組めるのは大きなメリットではないかと考えたのです。そうして2020年の4月に、奈良県生駒市の教育改革担当に就任しました!
これから日本を教育大国にしていくべく、様々な活動を推進していく予定です。
ここまで、お二人の現在のお仕事内容を伺ってきましたが、もう少し複業について触れていきたいと思います!そこで、参加いただいた約50名の方からの質問に回答いただきます!
質問1:複業を実施するにあたって、職場の理解はどう得ているのでしょうか?
長井:神戸市は複業推進が制度で認められているので、自分以外にもやっている職員はいます。ただ、理事長としてNPO団体を立ち上げたのは僕が初めてだったようで、反響も多々あったし「なんでそこまでやるの?」と懸念する声もありました。
そういう方々にはちゃんと自分の想いを伝えたり、事前に相談して、応援してもらえるように自分の働き方を伝えたりしました。本業も複業も含め、街のためにやった取り組みが全国に広がっていくと良いなと考えています。
公務員という立場は信頼もあり、とても恵まれていると思います。それがあるからこそ実現できている部分もあると思うので、今後もそれを活かしつつ、一方でやはり常に公平性は問われるので、反対意見にも謙虚に向き合う姿勢やバランス感覚・精神力は重要かなと思いますね。
質問2:複業禁止の会社・自治体の方でも何か取り組めることはあるのでしょうか?
長井:確かに、報酬が出てしまう複業を禁止している団体もあると思います。神戸市の場合は地域活動やNPOの活動など、地域貢献に関わる仕事を申請して許可が下りれば、限度を超えない範囲では報酬を得ても良いという制度です。
僕もNPO立ち上げ時は無報酬でも良いから、本業とは別に「これがやりたい!」というワクワク感で動き始めました。無報酬での社会貢献活動でも、本業に活かせることはたくさんあります。思い立ったらフットワーク軽く挑戦しても良いと思います!
質問3:公務員の人向けの、オススメの複業はありますか?
尾崎:公務員の方が新規事業開発などに関わる機会があれば、地域に還元したり事業企画を行ったりする際の必要なスキルが得られると思います!
ビジネスはゼロイチを経験したり、事業を作ってから利益を作っていく仕組み化を体験できますが、公務員の仕事は最初に予算が決まっているところから企画を作っていくことが多いように感じます。そのため事業化する・ビジネスを回していく感覚を体験するような環境・仕事を探しても良いかもしれませんね。
長井:確かに。公務員は予算をどう使うのかを考える仕事が多いし、新規事業やゼロイチを行う瞬間って限られていると感じるので良さそうですね。最近では色々な企業がSDGsの取り組みや地域支援をしていますよね。
ただ、営利目的の企業で複業をすることは、外から見たらどう見えるのか…?ということは常に意識して、公務員という立場上慎重に考えるべきかなとは思います。
神戸市では、公務員として1〜2年間IT企業に職員を派遣するカタチで人材交流をしています。公務員としての肩書を残しつつ、民間企業での取り組みや良さをインプット出来る取り組みです。そういった仕組みを通じて、新規事業の立ち上げを体験するのも良いのでは!
質問4:これから複業に実践したい!という方は、まずは何からやったら良いの?
長井:私もそうでしたが、未経験の方がいきなり大風呂敷を広げてスタートするのは難しいと思うので、最初にやりたいことを言語化し、賛同してくれる人や協力してくれる仲間を得るというのが最初のアクションかなと思います。
まずはスモールステップから始め、そこから少しずつ実績を重なる中で、どんどん仲間も増えて大きな取り組みになっていくというのが理想の形ではないかと思います。
尾崎:ワクワクを感じ始めた瞬間から、飛び込んでみるのがオススメです!「わたしなんて無理だ…」と冷静に考え始めたり、仕事や生活のことなどリスクばかりを考えると何も身動きできなくなってしまいます。
一歩目はちょっと無謀かもしれないけど、何かワクワク!と感じたらポチッと何かのスイッチを押してみると良いと思います。
自分にとってアウェイなところに行くと、常に新人として色々なものを吸収することが出来ます。「何でも教えて下さい!」というスタンスで、様々な方から学んだことを自分の力にしていくと良いのではないでしょうか。
最後に、公務員の方やこれから複業を始めたい方へ、メッセージをお願いします!
長井:僕自身が今回参加して改めて、色々な仕事や働き方があるなと感じました。僕の場合は、自分に与えられたやるべき仕事を一生懸命やった結果、ワクワクしたものを見つけ、飛びついてみて、今こういった働き方をさせていただいています。
今後も、自分自身でこの働き方を続けつつ、仲間やこれから挑戦したい人のサポートできることはやっていきたいと思えました!
尾崎:ただ単に複業は良いものですよ!ということではなく、自分自身が何をやりたくて、どうなりたいのか?というビジョンを自分で持っておくことが大切です。
今回の新型コロナウイルスの件みたいに、社会や環境が変わったりしても、「Being」があれば自分や自分の行動は変わらないと思うのです。
複業でも何でも、ただひたすら手を付けて何も実績が作れない状態ではなく、自分がどうなりたいのかという「Being」も決して忘れないでください!
素敵なメッセージ、ありがとうございました!
お二人のお話を聞いて、挑戦しようと思える方が1人でも増えていきますように。機会がありましたら、イベント第二弾をご用意するかも? 乞うご期待下さい…!
(取材:西村創一朗:、文:MOE、デザイン:五十嵐有沙)
The post 公務員×複業!? 肩書きの枠を超え、社会や地域のために働くパラレルな生き方とは first appeared on HARES.JP.
]]>The post 社外で活動することが、社内で成果を出す秘訣【パラレルプレナーの時代 vol.1 NTT西日本・及部一堯】 first appeared on HARES.JP.
]]>そんな中、パラレルワークで得たスキルや経験をイントレプレナーとして本業に活かし、社内でイノベーションを起こそうとしている人もいます。それが、今回お話を伺ったパラレルプレナー・及部 一堯(およべかずたか)さんです。
及部さんは、NTT西日本(西日本電信電話株式会社)で新規事業を立ち上げながら、社外ではエンターテイナーとして様々な場所でパフォーマンスをしたり、関西大企業有志団体ネットワーク「ICOLA」の共同代表を務めたりと、社内外問わず幅広く活躍。
そこで今回、「パラレルプレナーの時代 vol.1」として、パラレルプレナーになったきっかけや社内外での活動を通して得た学び、そして今後チャレンジしたいことについて話していただきました。
ー 及部さんはNTT西日本に勤めながら、プライベートでも様々な活動をなさっていますが、社外でのパフォーマンス活動を始めるきっかけは何だったんですか?
もともと、NTT西日本でバスケットボールの実業団選手をやっていたんですよ。でも、あるとき足を負傷して入院することに。そこで、自分が周りの人からどれほど支えられているのか、ということに気付いたんですね。その感謝を伝える形として音楽に目覚め、シンガーソングライターになりました。
ー シンガーソングライターもやりつつ、マジシャンとしても活動されていたんでしょうか?
いえ、はじめは「世界中の人に元気と夢を与える人」を目標にライブを開催して歌っていたんですが、介護施設でボランティア演奏をしていたとき、自分の演奏が全く喜ばれていないことに気付いたんです。当時の施設の方々には、耳の遠い方もいらっしゃったからです。
そこで「目でも耳でも楽しんでいただける人を目指そう!」と考え、マジシャンやパフォーマーとしてのスキルを身につけることにしました。
ー なるほど。それは土日など本業以外の時間で活動されていたわけですよね。本業に対するモチベーションはどうだったんでしょう?
入社したときは法人営業の部署に配属されたんですが、その頃に怪我でバスケができなくなってしまい、仕事に対するやる気がどん底になってしまいました。「バスケをするために会社に通う」という感じでしたので。
ー しかし今ではイントレプレナーとして社内でも精力的に活動されている。どんなモチベーションの変化があったんですか?
怪我で入院したあと、音楽やパフォーマンスに出会ったことで「社会に貢献する」という外での活動が増えましたが、会社に対するモチベーションは相変わらず低くて、退職未遂を繰り返していたんですね。パフォーマンス活動で年配の方に喜んでもらえて直接的な喜びを感じていたのに対し、会社での仕事は社会にとってどんな意味があるのか分からなかった。
いっそ自分で会社を作ろうかとも考えました。だけど、ふと立ち止まって考えてみたとき、社会にインパクトを与えられるのは大企業のほうなんじゃないかと気付いたんです。会社を辞めて起業するより、大企業にいながら何かをやったほうがリスクも少なく、社会的な信用も得やすい。
それに、自分がイントレプレナーとしてNTT西日本で事業を立ち上げて成功させることで、自社だけではなく、他の大企業の価値観も変えられるきっかけになると思いました。それが、日本経済の活性化に繋がるんじゃないかというように、モチベーションが変化していきました。
ー そのようにモチベーションが変化したきっかけは?
営業系の部署から、ビジネスデザイン部という新規事業創出の部署に異動したことですね。営業のときはあくまで自社商品を売っていく立場だったので、新しいことを考えて自分が世の中に貢献できるものを売っていくというわけではなかった。
しかしビジネスデザイン部は、「世の中にいいものを提供する」ということを考える組織でした。そこで経営的視点やビジネスの作り方といった、自分にはなかった知識を教わるようになり、ここでもっと学べば世の中を良くできるんじゃないかと思うようになったんです。
ー ビジネスデザイン部に異動されてからは、主にどんなお仕事をされていたんですか?
新しい事業を作っていくことと、新しい事業を作るための戦略を考えることの2つを主に担当していました。2年目までは、決められたプロジェクトにアサインされて仕事をしていたんですが、3年目に大きな出来事があって。それがパラレルプレナーとして活動するきっかけとなりました。
ー 大きな出来事とは?
レクリエーション介護士の第一号になったことです。私は部署を異動してもエンターテイナー活動を続けていたんですが、ある日、同じ部署で違うグループの上司が介護施設での活動を見にきてくれて。そこで「及部のやっていることは素晴らしい」と、レクリエーション介護士を作ろうとしているベンチャー企業を紹介してくれたんです。それで「ぜひ第一号に」と。
第一号ということは、日本の中で一番レクリエーション介護について知っているということなんですよ。だから、社内でレクリエーション介護についてのビジネス提案をしたときも、質問には全て答えられた。それが強みとなって、ベンチャー×NTT西日本で介護レクビジネスを成立させることができたんです。
ー 本業とは関係なかったはずの複業が、結果的に本業に活かせるようになった。こうしてパラレルプレナーに繋がっていったわけですね。提案した介護レクビジネスは上手くいったんですか?
いえ、事業拡大の観点では成功と言えるほどではありませんでした。サービスは2015年にリリースしたんですが、その年に私が他社へ出向することになってしまって。事業拡大フェーズで色々とやりたいことがあったんですが、どれも実現させることができなかったんです。
ただ、自分でゼロから発案してリリースまで持っていったことで、社内でのプロジェクトの回し方を学ぶことができましたし、プロジェクトリーダーとして全体を俯瞰して見るスキルも身につきました。その点においては、今後の事業創出における大きな要素を学んだかと思います。
ー 結果的に、及部さんの糧になったわけですね。
すごく糧になりましたし、次のステップに向けていい経験を積むことができたなと感じています。介護レクビジネスを一緒に立ち上げた会社とは、また別の取り組みも検討中ですので、継続的な関係を築くことができたのも良かったですね。
ー 2015年から2年間、大手飲料メーカーへ出向。その間はどんなお仕事を?
はじめは、和歌山県内のスーパーマーケット営業チームのリーダーをしていました。スーパーの売り場面積を増やすべく、リーダーとして現場の人たちをサポート。その後、近畿地区全体のデジタルマーケティングを考える事業に移って、オウンドメディア戦略の立案と実行を担当していました。あとは、全国の飲食店の盛業支援なども行っていましたね。
ー 出向先で、印象深いエピソードはありましたか?
リーダーになった最初の半年で、もともと下位だった和歌山の営業成績を全国一位にできたことですかね。当時いたメンバーは、能力はあるもののモチベーションはあまり高くなくて。そんな彼らが、だんだん「及部のために頑張ろう」と思ってくれるようになり、モチベーションが上がっていったのが印象深かったです。
ー モチベーションの高くないメンバーを一致団結させるために、何か意識されていたんでしょうか?
まずは、メンバーの方々に自分が過去やってきたことを伝えつつ、「何のために働いているのか」をヒアリングしました。すると、本業だけではなく、プライベートでの困りごとも教えていただけるようになり、親身に相談に乗ってサポートするといったことも意識していました。そうしているうちに、みんなが仕事でも頑張ってくれるようになっていったんです。
ー マネジメントにおいて、仕事面だけでなくプライベート面のサポートも大事だと言われますが、マネジメント側に引き出しがないと役に立てないことが多い。そんな中、精力的にプライベートの活動をやっていたからこそサポートができてメンバーのモチベーションを上げることができたわけですね。
そうですね。私がもし、ひとつの会社のことしか知らなかったら適切なサポートができなかったと思います。そうすると、部下はもうプライベートな質問をしなくなってしまう。だから、プライベートなことも相談したくなるようなマネージャーやリーダーを目指したら、部下のモチベーションも上がり、部署としてプラスになるんじゃないでしょうか。
ー 他に、出向中に何か気付きは得られましたか?
自分が自社のことも他社のことも全然知らないんだ、ということを痛感させられましたね。出向先でNTTグループのことを聞かれても全然答えられないし、出向先では文化や制度も全く違った。他社のことを知ることが、各企業の改革には最も重要なことだと気付かされました。
そこで、出向中に「NTT-WEST Youth」というNTT西日本内部のコミュニケーション活性化を目的とした有志団体を立ち上げたんです。また大企業同士のコミュニケーションをとることが大切だと考え、2017年には関西の大企業を活性化させるために「ICOLA」も設立。社内外コミュニケーションやスキルアップ、新しいことへのチャレンジなどを実施してきました。
ただ、有志団体に集まる人ってモチベーションが高いし熱意もあるので、どんどん人脈や知識が増えて、最終的には会社を辞めてしまう場合も多いんですよね。NTT西日本の成長に不可欠なのは、モチベーションの高い人たちが居続けたい会社になること。だから、社員に新しい挑戦ができる環境を作らなければならないと思い、出向から戻ってすぐに「HEROES PROJECT」を立ち上げました。
ー 「HEROES PROJECT」について詳しく教えてください。
「HEROES PROJECT」とは、NTT西日本に所属している社員のための事業創出支援プロジェクトです。挑戦できる環境を作ることがこのプロジェクトの目的で、各地域支店の現場社員が新しいことにチャレンジできる環境作りのために動いています。
具体的には、各地域の支店長に「この支店全体で新たな事業を創出していきましょう」と呼びかけて、支店長をトップとしたコミュニティを作ってもらい、現場社員に参加してもらうようにするんです。あとは、新規事業の作り方を教える講義やワークショップ等を開催したり、事業を作るために伴走したりもしています。
ー 「HEROES PROJECT」に参加する社員の方々には、どんなことを期待していますか?
まずは社内と社外、両方の知識を身につけてほしいな思っています。社内の人脈・経験は持っていて当たり前だけど、社外でのプラスアルファの人脈・経験を持っている人は少ないので、社内においても周りと違うフィールドで戦うことができるんです。
そのようなプラスアルファの人脈・経験は、複業や外部の活動を通して得ることができる。「HEROES PROJECT」では、社内と社外の両輪で、自分の個性を活かした成果を残していってほしいですね。
だから私は、行動することの大切さを伝えています。社内しか見ていない状態で、新しい事業を思いつくのはなかなか難しい。外部で行動して経験・知識・人脈を作ることが大切なんです。
ー 及部さん自身がイノベーター、パラレルプレナーとして活動するのみでなく、同じような人を増やす・応援する活動も「HEROES PROJECT」として始められたんですね。
ー 行動することが大切なのは分かるのですが、これといった原体験ややりたいことがないという人は、具体的にどう動き始めたらいいんでしょうか?
まずはイベントを企画して実行することをオススメします。私自身も、シンガーソングライターになったときは自分でイベントを企画してライブを主催していたんですよ。まだ演奏も歌も下手で、出演できる場所なんてなかったので(笑)そうやってイベントのターゲット層や企画を考えて実行し、収支計算までやることで、経営やプロモーション、マーケティング戦略などを学ぶことができました。
初めてのイベントは、飲み会でも構いません。ただし、ターゲットや目的を考え、どういう告知文を作るのか、そして収支をどうやって黒字にするかというところまで考えるのがポイント。さらに、どうやったら参加者が満足してくれるイベントにできるかを考えるんです。そうすることで、お客様が喜んでくれる企画を作ることができるようになります。
もし原体験ややりたいことがなければ、何でもいいのでイベントを作ってみましょう。そして、赤字で終わらせないこと。黒字になるまでやって初めて学べることばかりですので。何かひとつ行動するだけで、絶対に人生変わりますよ。
ー 説得力のあるメッセージですね。仮にやりたいことがあっても、なかなか実現が難しいと感じる人も多い気がします。
やりたいことを実現させるためには、人脈を作ることがとても大事になってきます。人脈というのは、ただ名刺交換しただけではなく、信頼できる人や教えてくれる人、自分を支えてくれる人のことです。
そんな人脈を作るためには、以下の4つのポイントがあると考えています。
①分析
②行動
③志の共感
④行動実績
この中でも特に、行動実績がすごく重要です。「世界中の人に元気と夢を与えたい!」と言っている人に、「では、そのために何をしてるの?」と聞くと、「何もしてない」と答えたら、がくっとくるでしょ?(笑)やりたいことを伝えたとき、すでに何か行動している実績があれば、興味を持ってもらえるし応援しようと思ってもらえます。だから、若いうちにいかに行動実績を作るかが、やりたいことを実現させるコツ。
アイデアと違って、行動実績はそう簡単に作れません。だから誰かに横取りされるようなこともない。最強の武器です。
ー 何よりまずは行動して実績を作ることが大切なんですね。最後に、及部さん自身が今後チャレンジしていきたいことを教えてください。
まずNTT西日本の社員としては、今考えている事業を成功させることと、新しい事業を作れる人たちを増やす取り組みを推進していきたいですね。社外の活動においては、若い世代のマジシャンを増やしたいです。私自身、パフォーマンスを通じて人を楽しませるだけでなく、人との繋がりなど様々なものを得ることができたので。
また、プライベートでは今、中小企業をサポートするための会社を作っている最中なんです。だから自分自身が中小企業について学んでいきたいですし、中小企業のサポートにも力を入れていきたいと思っています。
私の目標は「世界中の人に元気と夢を与え続ける人」なので、今後もNTT西日本に勤めながらパフォーマーを続け、有志団体で大企業を活性化していく。そして中小企業のアドバイザーや顧問としても経済活性化を推進できるよう活動していきます。
ー 社内外問わず、今後もパラレルプレナーとして活躍の場が広がりそうですね。ありがとうございました!
=====
取材:西村創一朗
写真:Asami Izuka
デザイン:矢野拓実
文:ユキガオ
The post 社外で活動することが、社内で成果を出す秘訣【パラレルプレナーの時代 vol.1 NTT西日本・及部一堯】 first appeared on HARES.JP.
]]>The post 50代だからこそ挑戦してほしい「複業」のススメ first appeared on HARES.JP.
]]>ただ、長年企業で勤めてきた50代前後のサラリーマンで複業の存在を知る人はまだまだ少ないのが現状です。
今回対談した白石さんと龍太さんは50代にして、すでに複業として活躍されています。
複業をはじめたきっかけから複業のメリット・デメリットまで語っていただきました。
白石和彦(左):新卒から30年以上花王で働く。「NPO法人二枚目の名刺」の運営メンバー、サポートプロジェクトデザイナーとしての顔を持っている。
中村龍太(右):大学卒業後、1986年に日本電気入社→1997年マイクロソフトに転職→2013年サイボウズとダンクソフトに同時に転職+複業開始。2015 年には NKアグリの提携社員として就農。現在は、サイボウズ、NKアグリ、コラボワークスのポートフォリオワーカー。
ーーお2人が「複業」に踏み出したきっかけは何でしたか?
白石和彦(以下、白石):僕は、社内の「50歳研修(キャリア研修)」で「今後は社内外に恩返しをしたい」と思ったことが、大きなきっかけとなりました。
子供が2人いるんですがお陰さまですくすくと育って、その時、上の子は高校生で下の子が中学生になりました。気持ちの余裕がすこしできたのだと思います。
元々社会貢献的な活動をしたくて「何かないかな…」と探していた時に、弊社がETICさんと組んで「社会起業塾」をやっていて。そこで、知り合った団体さんのプロジェクト(以下、PJ)に飛び込みました。のちに「NPO法人二枚目の名刺」が行っていたPJだと知りましたね。
現在は「二枚目の名刺」のPJデザイナーとして、デザイナーのまとめ役に従事しています。
ーーありがとうございます。龍太さんはかなり違った背景ですよね。
中村龍太(以下、龍太):そうですね。マイクロソフトからサイボウズに転職するタイミングからでしたね。僕は白石さんの「貢献」とは程遠く、正直「お金」が大きかったです。それこそ、サブとしての「副業」としてサイボウズとIT企業ではじめました。
その2年後に、サイボウズのお客様だった「NKアグリ株式会社」が、データに基づいた農業を始めるといったので、「本当にデータで農業ってできるの」と思い、人参を栽培する社員を志願して採用になったんです。
妻が農家出身で、僕は妻の実家にマスオさんをしていたので、農家とは関わりが強かったのが大きかったのかもしれませんね。
ーー白石さんにお伺いしたいのですが、社内外のセミナーなどに参加しても、実際に複業としてアクションを起こす人って少ないですよね…?行動を起こせた理由はなんですか?
白石:PJがとても楽しくて、終了後は「PJロス」の様な感覚になっていました(笑)。ちょうどその頃、「二枚目の名刺」でPJデザイナーを募集していて。「僕が得られた楽しさをもっと多くの人に知ってもらいたい」と思い、運営メンバーとして参加することになりました。
入ってみると集まった仲間は、「ただただ、世の中をよくしたい」という想いで入っている人ばかりで、その雰囲気がとても気に入っています。
ーーお二人とも、はじめた背景や動機がまったく違いますね。複業をされてみて、複業で「得られたこと」と「失ったこと」って何でしたか?
龍太:もう7年ほどやってきているんですが、シンプルにお金は減りました。本業とプラスしても前職の給料には届きません(笑)。
ただ、人との繋がりができたり、スキルが身についたのは本当にプラスです。今までなかった農業スキルが身につきましたし、今では農家さんや企業さん向けに「IoTと農業」について登壇させていただく機会も増えました。
ーーありがとうございます。白石さんはどうですか?
白石:僕は失ったものはないですね。一方で得たものは「人との繋がり」です。組織や立場を超えて、新しい社会を創るという同じ目標に向かって、切磋琢磨しあえるメンバーがいることがとても幸せです。
また、メンバーから学ぶこともたくさんあります。メンバーは年下の方が多いんですけど、物事の考え方や、新しい価値観に触れられるなど、同世代どうしからでは得られない刺激があって、毎日が学びですね。
ーー僕の周りは50代の方が少ないのですが、お二人はいかがですか?
龍太:僕は、50代がほとんど周りにいません。サイボウズは大手企業に比べて平均年齢が若く、僕は数少ない最年長のグループなんです。
白石:弊社は、50代はとても多いです。定年を迎え、再雇用で働かれている先輩方もたくさんいらっしゃいます。
ーーなるほど。多くの方は、定年後にどうしていきたいんでしょうか?
龍太:僕も気になっていました。
白石:私の周りでは、定年後に再雇用されて会社に残られる方が多いようです。ただ、多くの方が「定年後の道筋(やりたい事)」は明確でないような気がします。あくまでも「肌感」ですが。
定年65歳から70歳の時代になりつつある今、多くの企業が「人財の有効活用」を考え始めています。働くシニア自身も「再雇用」だけでなく、「転職」や他の選択肢も考えておくべきだと思いますね。
龍太:転職もですか。
白石:早期退職され他社に転職される方もいます。ただ、僕ら世代の多くが「これからどうなっていくんだろう…」と悶々としていますよ。でも、なかなか周囲に相談しづらいですしね。
「再雇用や転職だけではなく、複業という生き方がある」。これを伝えるだけでも、視野が広がっていくと思います。僕らがロールモデルの1人になれればいいですね。
ーー今、人生100年時代と言われているじゃないですか。ご自身の経験から、複業のメリットとデメリットって何だと思いますか?
白石:正直、100人100通りの生き方がある中で、べき論で語るのってむずかしいんですよね。なので、あくまでの自分の経験ベースでお伝えしますね。
僕は人生100年時代と言われていても、健康寿命は75歳前後だと考えています。
その限られた時間の中で、自分のやりたいことに全力でコミットできるのが、複業の大きなメリットだと思いますね。
また、色んな人と会ったり刺激を受けたことが、のちに世の中への貢献に繋がると信じています。それは複業だからこそ、より叶えやすいのかなと。
ーーたしかに、複業だからこそ得られる生き方ってありますよね。龍太さんはどうですか?
龍太:メリットは、自分の居場所の肩慣らしができることです。
居場所って、1つに絞る必要ないんですよね。会社にしがみついている人ほど「居場所がなくなることへの恐怖」が半端ないと思うんです。だからこそ、自分が心地いい環境を複業で見つければいいのかなと。
まあ、付き合う人の幅が広がる分、人間関係のわずらわしさが増えたりしますけどね(笑)。それが唯一のデメリットですね。
ーーでは最後に、「複業の第一歩」ってどのようにステップを踏めばいいと思いますか?何から手を付ければいいのか、ピンときていない人が多いと思うんです。
龍太:僕の場合は「まずは事実を知ろう」とお伝えしたいですね。
意外と多くの方々が、数年後の未来を知ろうとしていなくて、もったいないなと感じています。例えば、退職金や年金を把握していません。そのため、数年後の自分や今の自分の棚卸しが必要です。
50代のうちから「事実の言語化」をおすすめしたいです。具体的には、年収・年金・退職金・生活費・資格・できるスキル・社内外の人脈など。
Excelでまとめておくと可視化できるので、不安に感じ行動するかもしれませんし、もしくは、安心できるかもしれない。つまり「現状を感じること」が大切です。
ーー事実の言語化大切ですよね…。白石さんはどうですか?
白石:私はまずはアクションを起こすことだと思います。
具体的には、興味のあるセミナーに行ってみたり、興味のある人と話すでもいいと思います。ネット時代の今、ググればたくさんの情報で溢れていると思いますが、一次情報を取りに行く(アクションを起こす)ことをおすすめします。
くわえて、常に「意識を高く持って行動する」こと。そこから巡り会うことってあると感じます。実際に僕は、花王の社会起業塾に足を一歩踏み入れたことで、今に繋がっているので。
取材・編集:西村創一郎
文:ヌイ
写真:
デザイン:矢野拓実
The post 50代だからこそ挑戦してほしい「複業」のススメ first appeared on HARES.JP.
]]>