5月27日(月)に就活生・若手社会人向けの少人数ライブトークセッション『HARES CAREER LIVE』を開催しました。記念すべき第1回は「新卒からスタートアップで働く、という選択」がテーマ。大学を卒業してすぐに立ち上がって間もないスタートアップへの就職・転職を決めた方をゲストにお招きして実施したトークライブをレポートします。

 

<登壇者プロフィール>

◎木村喜生

株式会社コール・ドット・ジェイピー 代表取締役 CEO

早稲田大学を卒業後、新卒で社員15名程度のed techベンチャーの(株)すららネットに新卒1期生として入社。(同社は3年半後にIPO) 学習塾の独立起業支援や海外の算数問題の教材制作に携わる。 その後、2016年6月にデジタルハリウッド(株)に転職し、エンジニア養成校のジーズアカデミー事業部の新規講座の企画・集客・運営・社内システム開発等を担当。 個人開発しているサービスで法人契約の希望があったこと等をきっかけに2018年12月にcall.jp,inc.を法人登記。 IPA未踏アドバンスト採択者。

◎篠田沙織

株式会社コークッキング 取締役 COO

小学校2年生で白血病になり、食事制限を受けた経験から、食の重要性を身をもって実感。そこから人生を「食」に捧げると決意。 新卒でRettyに入社後、飲食店営業やwebディレクターを経験。ビジネス側とプロダクト側の両面からサービスの運営を経験する。その後、TABETEにCOOとしてジョイン。現在は「TABETE」の飲食店営業からプロダクト設計、広報まで幅広く活動している。

「お金を払ってでもやりたい」という思いで入社を決意

西村:お二人はスタートアップに新卒で入社するに当たって、会社を見極めるコツなどあればお聞かせください。

木村:私は見極めたというわけではなく、シンプルにビジョンに惹かれたことが大きいです。私が大学時代にやっていたNPOでの学習支援の活動や、教育をITの力でより良くする研究とリンクしていました。
結果的にその判断は正解で、すごく良い会社でした。上場準備をしていたということもあり、労務管理もきちんとしていましたし、一緒に働くメンバーもすごく優秀。代表や上司の方々は元一部上場企業で、新規事業のコンサルをしていたので、事業立ち上げの経験が豊富で、ベンチャーでもかなりきちんとしていました。

入ってみて分かったことですが、トップが事業経験が豊富であったところがすごく良かったと思っています。ベンチャーは社長や経営陣がかなり大事ですね。

西村:なるほど。篠田さんはいかがですか?

篠田:2社目のスタートアップの今の会社は社員3人目として入りました。代表が26歳で大手飲食チェーン出身で、ITのことにあまり詳しくなかったりして、周りから入社しないほうが良いって猛反対されたのに入社しました。

西村:面白いですね。

篠田:反対されても入りたいと思った理由は3つありました。1つは、若いうちにしか失敗できないっていう思いがあったから。子供もいないし、旦那もいないので、結果的に失敗しても自分だけの責任で済みます。

2つめは私自身が起業して、今のサービスをやりたいなと思ったから。ただ私はビジョンを語るとかがあまり出来ないので、自分よりもビジョンを語るとか、プレゼン能力が高いとか、自分のスキルを補ってくれるような人と一緒に働きたいなと思っていました。今の代表はビジョナリーに語ってくれて、それを私が現実に落とし込むっていう役割分担になっています。

3つめは、木村さんと一緒で、会社の代表を見てここなら大丈夫かなと思ったということ。彼は、ITに精通しているわけでもないし、経営スキルがあったわけでもないんですけど、“世の中の流れを見る力”がすごく強くいんです。私が「フードロス」という社会事業を自分でやりたいという気持ちがあったんですが、彼はこれからSDGsとか社会事業の波が来るよっていうところをロジカルに考えられる人。ビジョナリーを語れる上に、今こういうサービスが求められている時代だっていうのをすごく説得力を持って語れる。そんな彼について行きたいと思って、ジョインしました。

西村:お二人とも入社を決めた理由が、結婚にも共通していますね。結婚も「この人となら不幸せになっても良いと思える人と結婚するのが大事」みたいな考え方があるじゃないですか。

会社が潰れるかもしれない。でも、この会社だったら仮に潰れたとしてもそこにコミットした日々は愛せるし、そこで得た経験っていうのは必ず次につながるといったことを思えるぐらい社長なり、その会社の事業なり、ビジョンなりに惚れ込めるのであったら良いんじゃないかなっていうことですよね。

木村:会社を見極めるというと外に正解があって自分で正しいものを選ぼうという風にも聞こえがちですが、お金を払ってでもやりたいということを実現できれば、後悔はないのかなと思います。

西村:お金を払ってでもやりたい経験がそこにあるか?というのは重要な問いかもしれないですね。

松田:今、就職活動をしていると出会う面接官がみんなすごい人ばかりに思ってしまいます。お二人は、代表だけ特別だったのか、尊敬する人が他にもいた中での1人だったのか。代表への惚れ込み具合がどの程度だったか教えていただきたいです。

篠田:私も自分以外は皆すごいと思ってしまいがちなんですが、自分の価値観や軸を定めて、その人を見るというのが大事だと思っています。みんな、それぞれすごいんです。でも、自分の価値観や軸に対して、この人はどう考えているのか、その価値観や軸が自分と一致しているかどうかっていうところは働く上ですごく大事です。

木村:自分の場合は、結果的に入ったら優秀な人がいたという感じなので、質問に対して的確にお答えすることは出来ないかも知れませんが、見るポイントがあるとするならば、優秀な人かどうかというのは事業構造で決まることもあると思っています。

例えば、営業が大きな要素を占める人材・不動産会社などは、トップの人がとても優秀であれば他の人はそんなに優秀じゃなくても事業は回るといった構造があります。大手やベンチャーなどの規模関係なく、そういった事業構造の会社の末端に入っても実は大手もベンチャーもやることは同じで、あまり成長できないということもあるので、一部の優秀な人だけを見て入社を決めるのは危険かも知れません。スタートアップやベンチャーだから必ず成長できるという認識は間違いなので要注意です。


あとは自分はあまりきちんと見れていなかったのですが、もし一緒に働く人を優秀かどうかを重要視するという前提であれば、事業をちゃんと見る必要があります。業界でNo1の技術や商品力のある会社には、必ずそれを作れる力のある人がいるはずです。

「ベンチャー拳銃理論」 撃って学べ

大畑:スタートアップって人数が少ない分、ノウハウも少なめなのかなと思っています。そんな中で、誰もやったことないタスクが振られたら、どうやって乗り越えていますか?

木村:本当におっしゃる通りです(笑)。先ほどお金を払ってでもしたい仕事、という話がちらっとありましたが、自分は本当に払いまして、業務に役立つシステムを作りたいって思った時に自腹でスクールに通いました。

社内に聞ける人がいなかったので、ITエンジニアが参加する無料勉強会に参加して、登壇者のエンジニアにPC見せてアドバイスをもらったりもしましたね。やはり、社内にノウハウが無いことは社外で相談できるメンターみたいな人を身銭を切って、自力で探すのが一つの良い手段です。

 

なので一つは社内外にいる他の人を頼るのと、もう一つは検索ですね。他のスタートアップの方々も同じだと思うんですけど、例えば、広報のプレスリリースの書き方が分からないとなった時に、検索の力でなんとかしているんですよね。ゼロからでも検索で30%までは仕上げられますので、そこまでできたら経験ある社外の人に相談します。

 

篠田:私は新しい仕事を振られた時、本当に放心状態になっちゃいますね。もう分からないことが分からないし、人に聞こうと思っても聞くことが分からない。なので、本と検索で自分が求められたことについて調べます。私も広報を一から立ち上げたんですが、まずは本を読んだ通りにやってみて、本に書いてなかった応用編みたいなことがバンバン出てくるので、ツイッターで私が見つけて好きだと思った広報の方に連絡を取って会いにいったりとか。

西村:すごい行動力ですね。

篠田:人に会いに行くとやはりはかどりますね。ただ、最初に“自分の型”を見つけないと、聞きに行ったときにただの時間の浪費になってしまうので、最初に“自分の型”を作った後に、自分が分からないところは明確にここなので、ここを教えてほしいですっていう感じで。その応用問題をどんどん人に聞きながら解いていくと良いのかなと思います。

木村:今の話で「ベンチャー拳銃理論」っていうのはあると思ってまして、ベンチャーって出来上がった会社に比べると、どうしても手取り足取り教えてもらえないことが多いです。

拳銃って「拳銃の撃ち方知りたいです、教えてください」って言っても誰も教えてくれないじゃないですか。でも、「とりあえず一旦撃ってみますね」って言ったら、「やめろやめろ、こうやって撃つんだ」とフィードバックが来ます。

まず、自分なりにはめちゃくちゃ頑張って考えた(けど先輩から見ると質の低い)アウトプットを出して、そのアウトプットに対してフィードバックをもらうという考え方です。

大畑:自分でアウトプットを出して、ボコボコにやられるっていう方法ですね。

木村:一から教えてもらうより、むしろそっちのほうが学びって多いこともあると思うんです。

西村:うんうん。ベンチャー拳銃理論、めちゃ面白いですね。

今の話に補足をすると、大事なのは、ノウハウというよりは“HOW TO ノウハウ”。ノウハウを知る技術を身に着けることのほうが大切そうです。そう考えると、自然とノウハウが流れてくる大手企業と、待っていてもノウハウが身に付かない会社。例えば、本を読んだり、検索したり、人に聞きに行くぐらい動かないとノウハウが入ってこない会社と比較して、どっちが自分に“HOW TO ノウハウ”の技術が身に付くのかっていうと、明らかに後者ですよね。

スタートアップも働き方は多様化している

中島:スタートアップ企業は忙しいイメージがありますが、働き方はいかがですか?

木村:私の会社は土日などきちんと休みがありますね。やはり経営者の労務管理に対する考え方によるかなと思います。働き方を気にするのであれば、そもそもベンチャーは諦めろみたいなマッチョな意見を言う人もいるかもしれないですが。

篠田:私も前職のRettyの時は、すごい良くしていただきました。土日は休みでしたし、副業するからと言って19時に帰ったり。今の会社は人数も少なく、自分がやらないと何も進まないみたいな感じなので、土日も仕事することも。私は好きでやっているので辛くはないんですが。自分が好きなことかどうかが大事かと思います。

ただ、最近はパパで起業している人などがいるから、家族を大事にしなきゃダメといったホワイトな会社さんとか多いなと思いますよ。

中島:女性であることが日本のスタートアップの会社で不利だなと思うことはありますか?

篠田:女性であることが不利だと感じたことはないですね。女性なのに、どうしてスタートアップで死に物狂いで働くんですか?って聞かれることは多いですが。

スタートアップは女性には体力的に無理という風潮はまだあるとは思います。なので、私は逆にそれが目立つチャンスくらいに思っています。今は女性でもこのくらい働くし、若いときはスタートアップ入った方が良いんじゃないですかくらいの感じでいると、他の女性にも勇気を与えられるかなと思うので。

人に会うことで気づける自分の価値観

女性:もし新卒で就活をする立場に戻れたら、大手とスタートアップのどちらを選びますか?

木村:その2つの軸で比べるというよりは、昔の自分に言うとしたら、自分の中に明確な価値観や軸を持つ方が大事かなと思います。

ビジョンなんて言葉だけならいくらでも言えるし、ブランドもお金で買えるものだったりする。だからそういうことではなくて、実態をちゃんと見て自分の中の価値観や軸と照らし合わせて動きますね。

それで仮に、実際の自分に自分が立てた仮説と入社後にギャップがあったとしても「あ、こういう軸で見ればいいんだ」っていうことに気づけると思うんです。自分も新卒で入った会社では実力不足で失敗も沢山して、その時に事業が良いとか、ビジョンが好きというのは大事なんだけれど、それと同じくらい自分に適性のある仕事が出来るかどうかっていう軸で考えるのも大事だなと思ったので。

入社を決めた段階で自分の価値観はこれだっていう軸が固まっていないと、「なんかすごそう、カッコいい」というブランドで判断してしまったり、失敗か成功かが判断できなくなるので、大切だなと思っています。

篠田:おっしゃる通りですね。私も自分の価値観に気づくまで、就活の時に50社くらい受けて、ようやく自分の軸が出来てきました。もっといろんな経験をしたり、人に会ったりして、その中でどれが一番自分に近いかっていうのを見つけたほうがよいと思います。インターンをいろいろ試してみるとか、人にたくさん会うとか。

自分とまったく違う価値観の人にも会ってみると自分の軸を見つけるきっかけになります。就活で、軸を持ちましょうっていうのは昔から言われると思うんですけど、私も自分の軸がぜんぜん分からなくて、人に会いまくっていたら見つかりました。方法論になっちゃうんですけど、人に会えば良いよって昔の私に言いたいですね。

大畑:人が選んでないような就活先を選んで、そこでやってみてダメだったときにどうなるんだろうと思ってしまうんですが。お二人は実際に転職された時など、どんな思いで転職されたのか教えてください。

木村:当時は考えが浅かったので、あまり深く考えられていなかったですね。この会社はキャリア的に良い経験を積ませてもらっているなっていうのも、後から気づいたことで。

なので自分が今同じ前提だったらどう動くか、という視点で考えると、世の中に出来るだけ高くアンテナを張って、過去に似たような経験をした少し先を行っている人の事例を本やネットや、時には直接会いに行くなどして知るのが良いと思います。

篠田:本当にそうですよね。起業して失敗した人ってあんまり出てこないじゃないですか。私、みんな借金まみれで自殺しちゃっているんじゃないかっていうイメージがあって。失敗した人に会いに行って実際に聞いてみると、意外と潰れても、なんだかんだお金もプラマイゼロくらいに戻せるっていうのが分かったので、潰れても大丈夫なんだと安心しました。失敗した人のキャリアって、埋もれがちなんですが、そう言う人に会いにいくのは良いですよね。

<参加者から振り返り>

松田:世の中には成功した人の話ばかりがあるので、この人にはなれないなと思って落ち込むことが多かったですが、自分と同じような価値観を持っている人を探して、失敗したお話などを積極的に聞きに行きたいと思いました。

大畑:去年のインターンでつまずくことが多かったのですが、お話を聞いてそんな経験も意味があることだと気づけました。アンテナを張っていろいろ行動していきたいと思います。

中島:大学卒業後、アメリカのスタートアップで1年間インターンシップをする予定でしたが、その会社が潰れてしまって日本に戻ってきたところだったので、少し勇気をもらえました。視野を広げて自分の軸をしっかり作るところから始めたいと思います。

女性:スタートアップ企業について、ビジョンを重視していましたが、社長の事業経験なども参考にしたいと思います。また、いろいろな人に会って自分の軸を見つけるというのも始めていきたいと思いました。

木村:今まで自分の経験を話す場があまりなかったのですが、今回すごい良い整理する機会になりました。話してみて分かったのですが、結果論としてそうなったみたいな部分が多く、正直、昔は何も分かっていなかったなっていうことを改めて振り返る良いきっかけになりました。何も分からないっていう状態の中で、ちゃんと行動していくことの大切さに逆に気づくことができました。

篠田:私は大手で働いた経験がないので、なるほどと思うことが多かったです。あとは、皆さんに伝えたいことで言うと、今の自分の価値観って過去の自分からしか分からないので、人生グラフを書いて、ちゃんと過去の自分を分析するというのをお勧めしたいです。あとは人に会いに行くっていうこと。この2つをやってみるとだいぶ変わってくると思います。

第2回はこちらからどうぞ

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