本記事は、6月28日に開催された「20代ビジネスパーソンのための”新三種の神器”-知っておきたいお金の話-」のイベントレポートです。

登壇するのは、家計簿アプリ「Money Forward」取締役の浅野 千尋さん、個人送金アプリ「Kyash」代表取締役の鷹取 真一さん、ロボアドバイザリーサービス「THEO」取締役の北澤 直さんの3名に加え、スペシャルゲストにキングコング西野 亮廣さんを迎えた4名。

イベント前半では、昨年11月に西野さんが出版した絵本「えんとつ町のプペル」の制作・流通で経験された「お金と信用の関係」についてお話していただきました。

「プペル」を描こうと思ったきっかけ

西野さん:

もともと僕は芸人として売れるのが早く、25歳で朝は「おはスタ」、昼は「笑っていいとも」、夜は「はねるのトびら」と各局で冠番組を持ち、芸能界においての露出を増やしていました。生活水準も上がり、チヤホヤされるようにもなりました。

ところがある日、「自分はある程度売れているけれど、スターにはなっていない」と気づいたんです。芸人になった時は「芸能界で一番面白くなりたい」と思っていたのに、芸能界の序列は全く変わっていなく、自分は「人気タレント」であって「スター」ではない。

よく考えてみれば先輩が敷いたレールの上を自分が走っているのだから、「前にいる先輩たち」を追い越せるわけがない。相方の梶原くんとマネージャー、吉本の偉い人と話し「テレビへの出演」を辞めようと決めました。

「次に何をしようか」と思い悩んでいた時に、タモリさんに飲み屋で「絵をかいたらどうだ」と声をかけていただいたのが絵本を描こうと思ったきっかけです。

そこでタモリさんと「絵本が面白くない」と話したんです。そもそも大人って、絵本を「子供が読むもの」として子供をバカにしているけれど、僕は「子供は大人が思っているほどバカじゃない」と思っています。

自分は4人兄弟で裕福ではない家庭で育ちました。当然、日々の食費をやりくりすることさえ難しい。なので、お年玉でお金をもらっても母親に渡していました。

でも、ただ何も言わずに渡すと、「子供に気を遣わせている」と傷ついてしまう。だから、「返すのを忘れる」まで預けておくことで傷つけないようにしていました。同じように、西野家の年に一度の「外食の日」でも、僕たちは「安いものを好き」ということにして、父親を傷つけないようにしたり。幼稚園や小学生でも、それくらいはわかる。

その時、「大人が子供をバカにしている態度」が一番表れているのが「絵本」だと思ったんです。僕はプラモデルが好きで、買えもしないのにおもちゃ屋に飾られている商品のパッケージの戦闘機や戦艦にいつも見入っていました。パッケージのイラストは精巧に作られていて、まるで実物のような絵なんです。また、家に帰ったらジブリの「天空の城ラピュタ」や「風の谷のナウシカ」が放映されていて、壮大な世界観の下に、アニメーションが映る。

一方で絵本になると、あたかも子供には大人の作品を理解できないと暗示しているかのように「丸くて、色のついたゆるキャラ」が絵本の主人公になる。「子供向け」とくくらずに、壮大な世界観を持って精巧なイラストで作られた絵本作品を作りたいと思っていました。

作ったものを売らないのは、クリエイターの”育児放棄”

西野さん:

それでも、絵本を描くと決めたからには一番になりたいですから、芸人が片手間で作った程度のクオリティではなく、プロの絵本作家に勝てるものを作りたい。

なので、絵本を作るとしても、”自分が勝てる領域”で勝負する必要がありました。知識もノウハウも絵本作家には勝てないし、絵本を出版するためのコネもツテもありません。

そこで「自分は何なら勝てるのか」と考えたところ、「一つの作品にかけられる時間の量」だけは勝っていました。絵本描きは生計を立てるためにも、ひとつの本だけに多くの時間をかけられず多作する必要がありますが、僕の収入源は本ではないので、ひとつの絵本に3・4年をかけることができます。

西野さん:

結果として、初めて出した絵本は3万部売れたのですが、世間はほとんど認知していない作品になりました。正直に言って、誰も知らない。2作目を描くことを決意して次も3年かけましたが、それでもまた3万部しか売れない。

また、同じ時期に吉本の同期がどんどん売れ始めてテレビに出るようになりました。一方で自分はテレビに出ずに活動していたので、気づいたら自分が芸能界での「オワコン」のようになってしまっていたんです。

そのタイミングでやっと、作品作ったら「売らなければいけないのだ」と気づいたんです。当たり前のことですが、絵本を描いたらお客さんの手元に届く導線まで作らないといけない。お客さんに届けなければ、5年かけたとしても「作った」ことにはなっていない。

作るだけ作っておいて、届けることをサボることは、クリエイターの”育児放棄”です。出版社に全て任せるのではなく、自ら売りに行くことが必要だと思いました。

「えんとつ町のプペル」が30万部売れた仕組み

西野さん:

では、人はどんなものにお金を払うのか。

人は「何を買って、何を買わないのか」をしっかりと分けているんです。例えば僕は、本を買うのは月に2冊程度でほとんど買いません。しかし、水や牛乳、米といった「生活必需品」は買います。お金の使い道には優先順位があるんです。

買うもの買わないものの大きな線引きは、「思い出になるかどうか」だと思っています。先日京都で「御用」と書いてある赤い提灯(ちょうちん)を買ったのですが、36年間生きてきて「そろそろ提灯欲しいなぁ」なんて思ったことはありません。でも、そうやって旅行先で普段買わないものを買うことはあるし、それらを売っているお土産屋は潰れない。

つまり、人はお土産は旅行という”体験”を思い出すために必要なものだから買うんです。その時人は、水や牛乳と同じように、お土産を「生活必需品」にカテゴライズする。

であれば、プペルでも「お土産」になるための”体験”を提供すればいい。プペルでは”原画”を貸出無料にし、全国で”プペルの絵本の原画展”を開けるようにしました。ただ一点、「原画展の出口で絵本を販売すること」を条件にしたので、原画展の”思い出”として来場者が買ってきてくれるんです。これを開き続ける限りは、永遠にプペルは売れていきます。

絵本は出版されてから時間が経つと徐々に書店から消えていきますが、プペルは原画展を開いている間はずっと売れる。理論上では10万部、100万部と売れていく仕組みになります。

 

西野さん:

それまでの絵本とプペルの大きな違いは、絵本を分業で作っているかどうかです。映画であれば、脚本・メイク・役者と役割が細分化されているし、映画に限らず漫画も、会社も、すべて分業です。その中で、絵本だけは作者がひとりで作ることになっている。映画のように分業制を引けば、今までにないものができると思いました。

問題は「なぜ今までは分業制ではなかったのか」です。分業にする試み自体は、目新しい話ではなく、プロフェッショナルを集めればすぐにでも分業が実現します。

それでも分業にならなかった理由は、絵本の市場が小さいからです。絵本は1万部売れれば「ヒット」と言われる業界。そのため、絵本作家は人を雇うことができませんし、作品を「多産」しなければなりません。

つまり、制作につぎ込むお金さえあればハイクオリティな絵を描ける。そこで僕は、「プペル」を製作するにあたり、クラウドファンディングで資金を総額で1億円くらい集めました。1回目のクラウドファンディングは、絵本の製作と全国各地での個展開催のために行い、述べ1万人から4600万ほどの支援を受けました。

「金持ち」ではなく、「信用持ち」にお金が集まる

西野さん:

「お金をコントロールたい」と誰もが思っている中、誰もがクラウドファンディングでお金を集められるわけではありませんよね。クラウドファンディングでお金を集めるならまず、「お金とは何か」がわかる必要があります。

結論からいうと、お金は「信用を数値化したもの」ですが、貨幣の歴史や意味を説明するのは小難しいので、今日は「お金とは何か」を体現してる人を呼んでいます。

ホームレス芸人、小谷真理さんが登場しました。

小谷を簡単に紹介すると、「乞食」です。彼はホームレスをやってもう5年になるんですが、不思議なことに「超幸せ」な生活を送ってる。家がないのに、25kg太って、美人の嫁がいて、海外を飛び回っている。

小谷はネットショップを無料で掲載できる「BASE」で自分を1日50円で売っているんです。「1日50円で小谷がなんでもします」と、全国津々浦々を回る。草むしりとかペンキ塗りとか、本当になんでもやるんです。

金額だけでみると、1ヶ月フルに働いたとしても、1500円にしかなりませんよね。でも例えば、汗をかいて一生懸命に庭の草むしりを小谷がしていたとします。すると、昼ごはんをご馳走したくなりませんか。その調子で依頼主と仲良くなり、夜ご飯をご馳走してもらい、飲み代まで出してもらうんです。

その後、小谷は50円で呼ばれた「鬼ごっこ」で知り合った子と結婚することに決めました。1日50円しか収入がなくても、結婚式くらいはしっかりやりたい。そこで「浅草の花やしきを貸し切って結婚式をやる」という企画をCAMPFIREでやったところ、3週間で150万円集まったんです。これまで50円で買ってきた人たちが、ひと口4000円のクラウドファンディングを買う。

その後、小谷は何度もクラウドファンディングを募っていて、全部成功している。「お金持ち」ではないけれど、信用をいくらでもお金に変えることができる「信用持ち」なんです。

信用を集める秘訣は「嘘をつかないこと」

西野さん:

今はもう、クラウドファンディングやSNSなど「信用を数値化するためのツール」が揃っているから、僕は今までの信用をお金に変えることができます。もう一度クラウドファンディングで1億円集めることも可能でしょう。

一応言っておくと、テレビタレントとクラウドファンディングの相性は悪いんです。有名人だから簡単に集まると思いきや、「信用」がないからことごとく失敗する。タレントの給料の出元は、「スポンサー企業」です。なので、タレントは「好感度」を意識しなければなりません。例えば、番組でまずい食事が出てきたとしても、「美味しい」と言わなければならない。

でも今は、番組で紹介された店を検索すれば、食べログで評価が出てしまう。つまり、嘘を視聴者にカウントされていってしまい、結果として認知度だけは高まるけど、信用度は下がってしまう。だから、信用をクラウドファンディングでお金に変えづらい。

信用を積み上げるには「嘘をつかないこと」が一番大事です。この前僕は、某番組でディレクターの態度に腹が立って帰ってしまったことがありました。去年は、ナインティナインの岡村さん面白くないと言って炎上したこともあります。

でも、そうやって「わかりやすいこと」をした時に、オンラインサロンの加入数が増える。つまり、問題意識を持ったものに対して「私はこう思います」と意思を表明すると、信用に変わっていくし、クラウドファンディングやその他のツールでダイレクトな課金が増えていくんです。

なので、これからはお金を稼ぐのではなく、「信用」を稼ぐことでお金が稼げるようになるのではないでしょうか。


 

取材・執筆:奥岡けんと

撮影:塚田耀太

※ 明日(2017年7月27日)の続編に続きます。