働き方改革が世間を賑わせる昨今、自分らしい働き方を考える中で、「独立・起業」が一つの選択肢として挙げられることが増えています。

しかしながら、実際に「独立・起業」の選択をするには多くの不安が伴うのも事実です。そういった不安を少しでも解消して、次の一歩を踏み出せるようなきっかけを作りたい。

4月3日、「自立した人材を増やし、新しい仕事文化をつくる」というビジョンのもと、仕事とフリーランスの方とのマッチングを行うITプロパートナーズ主催で、「IT PRO LIVE VOL.1 〜起業一年生の教科書〜」と題したイベントが行われました。

現在活躍されている起業家の「独立・起業」を決めたきっかけや、実際に直面した困難・トラブルをお聞きし、起業・独立のリアルを学びます。

株式会社HARES CEO 西村創一朗がナビゲーターを勤め、株式会社MOLTS 寺倉そめひこ氏、株式会社Bridge CTO 染谷洋平氏、株式会社9DW井元剛氏の3名が、自身の経験を語ります。

「起業しよう」ではなく、「起業しかなかった」

西村:本日はよろしくお願いします。早速ですが、みなさんが「起業・独立」を決めたタイミングはいつでしたか?

井元:私がフリーランスになったきっかけは単純で、ITバブルが弾けた影響もあって、最初に入った会社が倒産してしまったんです。景気が悪い中転職先を見つけるのも一苦労で、フリーランスとして独立するしか選択肢がありませんでした。

その後、十数年のフリーランス期間を経て、2016年に人工知能(AI)に特化した株式会社9DWを起業しました。学生時代から“機械が自動的に仕事をする仕組みを創りたい”という想いがあり、AIはまさにその想いを実現するビジネスだったのですが、2015年頃からいよいよ世の中からニーズを感じるようになり、腰を据えてやっていこうと起業しました。


井元 剛(いもと つよし)氏
1979年東京都生まれ。高校卒業後、人工知能の開発に携わりたいという思いからコンピューター専門学校へ入学。2001年よりWEBシステム会社に入社。以後フリーランスとして、Yahoo!・楽天・DeNA・サイバーエージェントなど数々の企業でシステム開発に携わる。
2015年ITプロパートナーズ経由にて、マッチングアプリサービス「Pairs」を運営する株式会社エウレカに参画。同アプリの開発サポートを行う。
2016年、今後は人工知能によって、あらゆる分野の業務効率化・自動化等により、現在解決困難とされている様々な事象も解決できるのではという想いから、人工知能開発を専門とする株式会社9DWを設立。同社の運営を行いながら、大学講師含め公演も行なっている。

寺倉:僕が働く上で一番大切にしているのは、“好きなやつと何を目指していくのか”ということ。「何をするか」よりも「誰と働くか」が僕にとっては圧倒的に重要なんですね。方向性が違う中で働くのは、会社の成長を妨げてしまう可能性があるし、自分自身もハッピーじゃない。会社員という働き方だと、どんなベンチャーでも異動とか組織変更があるので、誰と働くかを完全にコントロールすることはできません。

自分が本当に作りたい「一緒に働きたいと思える人とだけ働く」という世界観を作ろうと思ったら、結果的に独立・起業しかなかった、という感じです。

寺倉そめひこ(てらくらそめひこ)氏
1987年生まれ。立命館大学を卒業後、経営コンサルティングファーム、広告代理店、藍染師を経て株式会社LIGに入社。入社1ヶ月半でマネージャーに就任、その後新規事業の立ち上げ、企画、事業構築、採用など幅広く行う。
2015年3月より人事部長として、9月より執行役員に就任。2016年3月に株式会社MOLTSを立ち上げ、5月に独立。オウンドメディア、人事領域にて複数のパートナーとプロジェクトベースで活動する。

染谷:きっかけは、前職時代に複業的にペット版airbnbのような“Dog Huggy”というサービスの開発をしていたことですかね。僕が獣医学科卒だと声をかけてもらいました。提案から開発までできるし、やってみたらとても楽しくて。

ただ、前職を辞めて入社しようというタイミングで、入社予定の会社で社長と仲違いしてしまったんですよね。社内には辞める感を出し過ぎてしまって、戻れない。そんなタイミングで今の共同創業者に声をかけてもらって、今の会社に至ります。

染谷洋平(そめやようへい)氏
1988年生まれ。東京大学獣医学過程を卒業後、株式会社サイバーエージェントにプロデューサー職として入社。インターネット広告事業に携わる。入社3年目にして「ビジネスにおいてテクノロジーの力を駆使していかないと生き残れない」という思いが強まり、エンジニアに転向。
2016年には、訪日外国人向けのサービスを展開するスタートアップ株式会社BridgeにCTOとして参画。現在は自社サービスの開発と併行し、ITプロパートナーズ経由にてEdTech系企業を週3日のリソースでサポート中。

全ての仕事は「人の繋がり」と「信頼」から生まれる

ー西村:起業するにあたって、まず初めにやったことってなんですか?

寺倉:独立しますというタイミングで、「今までこんなことをやってきました」という実績を数字や案件ベースでシートにまとめて、周りの人に配りました。

人づてで入ってくる話の受注率が圧倒的に高いんですよね。なので、辞める一ヶ月前の有休消化期間にはある程度売り上げが立っていて、そのまま順調にスタートを切ったという感じです。

あとは、こんなことできますか?というお声がけには、自分ができると思える仕事であれば、基本的にやりますとお伝えして、そのあとに、どう形作っていくかを考えていました。

染谷:2016年1月に登記したんですが、1月はみんなで職探しでしたね。僕らは独立してから、これからどうするか、を考えていたので、本格的に働き始めたのは2月。

起業当初に意識していたのは、人づての仕事がない時は、とにかく「時給が高い案件」にフォーカスしていくこと。時給3000円の仕事でとりあえずいいやってなってしまうと、その仕事ってすぐにはやめられないんですよ。だったら、自分の価値をなるべく高くして、時給1万円の案件を狙いに行ったほうがいい。

井元:わかります。フリーランスでやっていると、見積もりとかも全部自分で決めなければいけない。自分の価値っていくらで言ったらいいのか?みたいなところも手探り状態なんですよ。

それらの説明根拠も持たなくちゃいけないとなると、百勉強するなら、一現場を踏んだほうが成長できますよね。

私もフリーランスになったばかりの時は、まだ実績もなかったので、とにかくツテを頼るしかありませんでした。そのツテの先で、やれないこともやれますって言って、仕事を取ってくる(笑)。

できないことも勉強して、何とか作って、実績を増やす。そして、その実績をもとにまた新しい仕事を獲得して…とやっていました。仕事をきちんとやると、内部の人と仲良くなれるので、そこで人脈を作って、お仕事をもらうことも多かったです。

寺倉:起業して1年目で思うのですが、全てまずは自分一人でやっていかなければならないんですよね。元々はマネージャーをしていたんですが、この1年はプレイヤーとしても相当働いたので、プレイヤーとして本当に伸びたなぁと感じています。

会社員時代は投資期間。全力で成果にコミットすべし。

ー西村:独立する前にやっておいたほうがよかったこと、やっておいてよかったことってありますか?

井元:やっぱり「人脈作り」ですね。仕事がもらえる以外にも、起業して会社としてやる場合、メンバーも必要になってきます。メンバーをどう集めていくかっていうのは事業に不可欠だけれど、これがなかなか難しいところ。今後メンバーになってくれる人はいるのか、そういった人脈を含めた縁を自分の周りに揃えられるのかっていうのは独立前にやっておくといいと思います。

染谷:自分がこれやります、やりたいですって言ったことって、後から返ってきたりします。あるタイミングで僕のことを思い出してもらえて、そこで繋がりができたりする。

なので、温めていることがあるんだったら、いろんな人に話すといいんじゃないですかね。

ーー西村:種まき大切ですよね。どのタイミングで蒔いた種が芽が出るかわからないですもんね。

染谷:水をあげてないのに、知らない間に機が熟して芽が出て、花が開くこともあるんですよ(笑)。なので、種だけは蒔いておいたほうがいいですね。

寺倉:会社に勤めている時って、投資期間だと思うんです。そして、起業から一年間くらいは会社勤め時代の投資を回収できる期間だとも思います。なので、サラリーマン時代に一生懸命働いて実績や結果を残すことが実は一番大切なんじゃないかな、と。

サラリーマン時代に結果を残したクライアント10人いたとして、そのクライアント10人が見込み客になるかというと、実は違う。その10人だけではなく、その周りにいる人たちも含めて見込み客にになるんですよね。一生懸命働いて結果を出して、価値を認めてもらえれば、口コミで広げてくれるので。一つ一つの案件でしっかり結果を出して行くのは、地道ですが大きな効果があります。

ー西村:安定的にマネタイズする上で、工夫されているポイントってありますか?

染谷:そうですね。最初の一年ぐらいであれば、コンサルフィーを得るというのは形として結実しやすいのかなって思います。ただ、コンサルって結局今までの経験や知識の切り売りになってしまうので、そこでずっと稼ごうとはしないほうがいい。

寺倉:会社時代に得た知識だけでのコンサルだと、1年っていうのは僕も思います。ただクライアントには極力「トライアンドエラーをしていきましょう」と伝えていて。

そうすると起業してからも、今までやってきたこと以外のことにもチャレンジできるので、実績を積めば積むほど、できることを増やしていくことができる。

結果を残せさえすれば継続案件になるので、結果を残すために最善だと思うトライアンドエラーはしっかりしつつ、いかに契約期間の中で目に見える結果を出すのか、にコミットしているという感じです。

メンタルマネジメントは起業家の必修科目。

ーー西村:みなさん、起業されて一番しんどかった時期ってどのタイミングでしたか?そして、その時期をどうやって乗り越えたんでしょうか?

染谷:一年目のしんどさって「なんとなく」想像できると思うんですよね。そういう意味では、僕もなんとなく「しんどいだろうな」と想像していたのですが、それに輪をかけてしんどいことの連続でした(笑)。今僕らは誰もやっていないことに挑戦しようとしているので、これからもっとしんどい思いをしていくんだろうなって思ってます。

寺倉:以前、知人が有名ベンチャー企業の代表に「創業して、どのタイミングがしんどかったですか?」と聞いたことがあったみたいで。その時に「何を言ってるんだ。毎年ベスト更新だよ。」って言われたようなんです。その話を聞いた時に「確かに。」って。一つ壁を乗り越えたら、また次の壁があると。

よく考えればそうですよね。常に高い壁に挑戦し続けるのが経営なので。その話を聞いて、僕自身も「しんどさが毎月積み重なっていくような仕事をしよう」と決めているので、そういう意味では毎月しんどい記録を更新中です(笑)。

ただ、安定的に仕事をしていくとなると、「無理をしない」というのは心がけなければいけないことでもありますよね。あまりに無理をすると身体もメンタルもやられてしまう。

ーー西村:事業を継続する上で、メンタルを保つテクニックは必修科目ですよね。やっぱりメンタル的に落ち込むこともあると思うんですが、メンタルを健全に保つためにやっていることって何かあったりするんですか?

井元:僕は運動するのがストレスの発散だったので、メンタルが下がってきたら、ジムに行って鍛えていました。あとは、映画を見たりだとか、自分が普段考えていないことで頭をいっぱいにする、とかもやっていました。

染谷:僕も運動はしていました。心身ともに追い込むと強くなれるので、開発で今月やばいな、という時に、あえてダンスの大会を入れたり。それが結果的にリフレッシュになっていると思います。仕事とはちょっと違う形方向での負荷をかける。

寺倉: 僕がメンタルをやられている時は、ネガティブな考えが頭を渦巻いている時。なので、ノートに不安なことを全部書き出して、それ以上にワクワクすることはなんだろうって考えて、それをまた書き出すってことをしています。

起業1年生を終えて、みなさんにメッセージを。

ー西村:起業・独立して間もない方や、起業・独立を予定している方向けに、最後に一言ずつメッセージをお願いします。

井元:一番大切なことは、「自分の志をどれだけ周りの人に伝えられるのか」です。うまく伝えられない時は、自分のやりたいことに対して、なんのため?が定まってない。まずはそこを突き詰めてみる。そうやって考えているといろんな方向でうまくいくんじゃないかなって思います。

染谷:起業をしようと思っていても、なかなか踏み切れない時ってあると思います。いろんな人がいろんなことをいうけれど、自分の中で「いける」と思ったタイミングで行くのが一番良くて。突き詰めて考えて、いけると思ったら起業する、違うなと思ったら、また考えればいい。そういうことを繰り返して行くと、人としても成長できる。自分がこれが一番面白いと思えるところに進むのが、人生も楽しくなるし、成功確率も高くなるんじゃないでしょうか。

寺倉:まだ自分自身も設立一年でアドバイスをできる立場にはないんですが、独立したことが正しいのか、正しくないのか、は自分で作って行くしかないと考えていて、「独立は正しい選択だったな」と思えるように頑張ろうと思って1年間過ごしてきました。なので、そういう考え方があることを知ってもらって、その事実が少しでも皆さんのためになったら嬉しいです。

【イベント概要】

・イベントタイトル:IT PRO LIVE VOL.01〜起業一年生の教科書〜

・主催:株式会社ITプロパートナーズ

・日時:2017年4月3日(月)19:30 –

【会場提供】

BOOK LAB TOKYO :渋谷・道玄坂にあるコーヒースタンド併設の本屋さんです。

・住所:東京都渋谷区 道玄坂2-10-7 新大宗ビル1号館 2F