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今回は、複業解禁を公表して間もない株式会社ウィルゲートの専務取締役、吉岡さんにお話を伺ってきました。

吉岡 諒(よしおか りょう)/株式会社ウィルゲート 専務取締役 共同創業者。
1986年生まれ。岡山県出身、慶應義塾大学卒業小学校1年からの幼馴染の小島と共に高校卒業3日後から起業。2006年、19歳で株式会社ウィルゲートを設立。
急拡大に組織が追いつかず倒産危機に陥り1億円の借金を負うものの、逆境を乗り越え同社を業界トップクラスの企業へと導く。
設立10年で2800社のWebマーケティングの支援実績。2012年に記事作成特化型クラウドソーシング「サグーワークス」、2014年に暮らしのアイデア投稿プラットフォーム「暮らしニスタ」をリリース。
現在はコンテンツマーケティング事業部の責任者として全サービスの管掌役員を務める。
書籍:ウィルゲート 逆境から生まれたチーム

「やりたいことを実現できる環境をつくる」ために複業を解禁

ーー複業を解禁したいきさつや、解禁後に社員がどう変わったのか?を教えて下さい

吉岡さん:

もともと会社のベースにある想いは、「社員のやりたいことを実現できる環境をつくること」です。ですので、ウィルゲートには、業務を通じた自己成長、自己実現を重視しており、他部署であったとしても「やりたいです!」と手を上げた人に対して機会を提供したり、自己成長を促すために、社内外の研修を実施したりしています。

しかし、会社が大きくなるにつれて専門領域が高まると、会社内の仕事だけでは挑戦しきれない範囲がでてきます。そういった場合は、複業を含めて個人のやりたいこと(Will)を実現させてあげたいなという想いはありました。

ただ、複業にはいくつかベクトルがあると思っていて、成長機会を増やすものもあれば、ただのお金稼ぎだけになることもありますよね。深夜までいわゆる完全に別の仕事でお金稼ぎをして、本業に差し支えてしまったら本末転倒です。

そのような理由から今まで悩んでいた部分もあったのですが、ウチの社員なら理解してくれるはず、と信じて解禁しました。ただし、解禁とはいっても、いたずらに社外での成長に依存するわけではなく、「社内での成長機会を最大化する」という基本スタンスは変わっていません。

「社員を信じよう」との思いから全社員を対象に。

複業に関する規定を決めるにあたって、全社員を対象にするべきか否かで意見が分かれました。
新卒1年目で日々の仕事もままならない状況だとしたら、優先すべきはまずは本業での自立です。そういった場合は、うちはスキル・経験に応じたグレード制を設けているので、一定以上のグレードの社員のみ認めるほうがいいんじゃないか、とか様々な議論をしました。

しかし、最終的には、全社員を対象に事前承認制で複業を認めることにしました。社員が胸を張って、「こんな複業を、こういう理由でやっています」と言えるのなら、それを信じよう、と。会社の資産を使って個人の懐に収めるような複業はしない、会社の事業と利益相反になるようなものはしない、といったルールさえ守れば、あとは後押ししようと決めています。

ーー複業について発表があったんですか?

吉岡さん:

はい。全社員のいる場で、人事担当役員から発表しました。想像以上にリアクションが良くて、やることが決まってるメンバーも直接聞いているだけで数人います。最終的には役員が承認を出すことで複業が許可されるのですが、社員のキャリア相談はマネージャーが行っておりますので、その人の成長を後押しするという形で実質マネージャーが許可を出しています。

複業解禁を発表する執行役員の山中さん
複業解禁を発表する執行役員の山中さん

「想いはあるけどお金はない」というスタートアップやNPOを支援

ーーどういったケースで複業をされる方が多いのでしょうか?

吉岡さん:

例えば、想いはあるけれどお金はない、というスタートアップから個人的にウェブマーケティングを依頼されるケースが多いです。個人的に好きだし、応援してあげたいけれど会社としてはしっかりコンサルティングできる規模の金額ではない。そういった場合には、自己成長の機会にもなりますし、就業前後や土日の空いた時間を使って受けてあげたらいいんじゃないかと思っています。会社としては月数万円という金額は大きくありませんが、個人としては月数万円は大きいですからね。

あとはNPO法人からの依頼ですね。理念も活動もしっかりしているけれど、ウェブを通じての発信が弱いNPOは多い。非営利でお金はないのですが、少額なら払えるので手伝ってください、と言われているみたいです。

あるいは、社員の中でも趣味のサイトを運営していて、「アフィリエイトをやろうと思えばできるけどなぁ」という方もいたのでそういうケースもあります。

ーー利益相反との線引きってどのように考えているんですか?

吉岡さん:

ルールを守った上で、本人が胸をはって、「こういうことやってます」と言えればそれでいいと思っています。既存顧客に対して同じパッケージを超格安で提供していたらそれは問題ですが、その辺はルールもありますし、当たり前の事として社員は認識しておりますので、信頼で成り立っているとも言えます。

ーー複業解禁に踏み切った直接的なきっかけはあるのでしょうか?

吉岡さん:

もともとやりたいとは思っていたんですが、決断の後押しになったのは、Industry Co-Creation(ICC)というカンファレンスに参加したことです。

VOYAGE GROUP宇佐美さん、サイバーエージェント曽山さん、メルカリ小泉さんのセッションで、思い切って複業OKのルールについて質問してみたんです。

「複業を許可したいけど、細かいルールの設定に悩んでいます。御社はどうされていますか?」と。

結果的に、3社とも複業を許可していたんです。

メルカリさんが複業推奨というのは有名です。しかし、サイバーエージェントさんが複業を許可されているのは驚きました。サイバーエージェントさんは会社愛と事業推進へのコミットが強いイメージがあって、複業は禁止されていると思っていたんですよね。

さらに、VOYAGEさんも解禁を予定していると。VOYAGEさんはウチとも会社の雰囲気が似ていると勝手ながらリスペクトしておりまして、「VOYAGEさんがやるなら」ということで良い影響をいただきました。

ーーそのセッションがなかったら解禁しなかったかもしれなかったんですね。

吉岡さん:

いえ、そのセッションが複業解禁の背中を押したのは間違いありませんが、もともと近々解禁しようとは思っていました。過去数回役員会での議題が挙がっており、そろそろ落としどころをつけないとな、と。

現状、他の企業の複業についての出方・動向などの情報が足りないので許可に踏み切れないという会社は多いと感じています。

社員が複業をすることに対して後ろめたさを感じていたり、企業側は応援してあげたいけど会社の利益と相反することがあるかもしれない、とメリット以上にマイナスに対して不安になっていることがあります。

そういう中で、元々議論をしていたのに加えて、他の企業の複業のカタチを知ることができたので、複業解禁に踏み切る決断ができました。対象者をグレードで切るといった案もありましたが、全社員を対象にしてみよう。そこでなにかあったらまた変えてみよう。ということになりました。

これからは求職者側の要望で複業が解禁されていく

ーー複業が役員会で議題にあがったのは、何かきっかけがあったんですか?

吉岡さん:

ちょうど今年の初めに中途採用をしているとき、「この人素敵だな、採用したいな」って思っていた人に、「複業OKじゃないと厳しい」と言われてしまったんです。その内容を聞いていても、本人の成長のためにもなるし、結果会社のプラスにもなるし、複業を続けてもらっても会社に何の問題もなかったんです。しかし、会社としてはルールとしてはNGと言わなければならない。

こんな素敵な人材が目の前にいるのに、そんな理由で採用できないのはもったいないですよね。それなら、原則複業NGにしていたけど、しっかりルールがある中で本人や会社にとってプラスになるならOKしていいんじゃないか、という考えが強まりました。

こういった形で、会社側からではなく、働く個人側からも変えていけると思うんですよね。「私、こんな複業をやっています」と言ってくれて、内容や想いが良ければ会社も認めるという形もあり得ると思っています。個人側にとって「複業が当たり前」という風潮が強まっていけば、どの会社も複業を認めざるを得なくなってくると思います。

弊社では、採用活動にあたって複業を希望している人材にお会いする機会が増えてきたり、弊社の社員からも、「会社にとってプラスになるので複業ができないか?」という相談をもらっていました。そういう流れがあったので、「ついに時がきたか」と思い、決断することにしました。

ーー確かにルールでダメと言うよりも、個別最適が会社にも個人にも好影響をもたらす、という方がお互いWin-Winですよね。
そうですね。人にはいろんな生き方や価値観があって、企業の中で出世することだけがすべてじゃないと思っています。それぞれのあり方で自己実現できればいい、と思っているので、会社の仕事も趣味も、複業であっても両立してほしいと思っています。頑張りたいことを見つけてもらえればその方が成長に繋がるはずです。

役員・部長・マネージャー・ディレクター(※ウィルゲートの専門職)や高い成果を上げている社員は会社のことで忙しいし、責任があるのでそれほど複業をやりたがらない、というのもありますが、高い成果を認められて今の責任を任されているので、そういった状況の中でも ”or”ではなく”and”で上手くやれるんだろうな、とも思っています。複業解禁に対してポジティブに反応する人は反応してるので、社員にとっても良い試みだったと思っています。

ただ、1年目や2年目のメンバーが、「複業=カッコイイ、自分も始めよう」というように誤認してほしくはないと思っています。会社で活躍している先輩は、今まで積み上げてきた専門性と実力があってそのポジションにいるわけです。ですので、複業自体が目的になってほしくはないと思っています。

大切なのは「引っ張りだこになる能力」

ーーまだ複業解禁をされて間もないですが、今は楽しみなような、不安なようなという感じでしょうか?
そうですね。でも、悪い方向には進む感じはないと思っています。複業をやると決まった社員って、何らかのスペシャリティを必ず持っていて、「この人に相談したい」というように周りが思っているようなケースがほとんどです。

吉岡さん:

今年5月に開催されたキャリアイベントStart Venture FestivalでDeNAの南場智子さんの講演を拝聴したのですが、そこで南場さんが話していたのは、「同じ会社に属している人だけで仕事をする時代はもう終わった」ということ。
南場さん曰く、「これをやるんだったら、◯◯さんと一緒にやりたい」と社内外から引っ張られるような人材になりなさい、と。
DeNAさんもゲームを作る際に、社内だけで作るのではなく、イラストならこの人、音楽ならこの人というように仕事ごとに社内外関係なく一番任せられる方に仕事を任せていくというお話を伺いました。

こういう時代において大切なのは、「社内外から引っ張りだこ」になる能力ですよね。そこをきちんと理解して、若いうちから自身の実力を磨くために仕事に邁進してほしいと思っています。複業を自ら進んでやるというより、自分が築きあげて来た専門性に対して、多くの方からご指名が入り複業になっていく、という形が自然だなと感じています。

ーーおっしゃる通りですね。複業家になるのを目的にするのではなく、まずはどうやったらそういう人間になれるのか?を考えて働くことが必要ですよね。

私の知り合いのベンチャーでも、新規事業を作る際、社外のプロフェッショナルに業務委託をするらしいんですよ。
しかも、彼らは並行していろんな会社で3、4つくらい事業を並行して立ち上げてる、ある意味新規事業のプロフェッショナルですよね。
そういう人たちはまさにパラレルワークを体現しています。
新規事業に限った話ではないですが、社外のプロフェッショナルの方々に業務委託で事業成長に協力してもらう、というのは私たちもどんどんやっていきたいと思っています。

一方で、ウチのメンバーに積極的にそうなってほしいか、と言われると、事業を推進する力が外に分散してしまいますので、正直悩ましいと思っています。

外部から優秀なプロフェッショナルの力を借りる分にはプラスになるんですが、社内のメンバーがどんどん社外からの仕事を受けていくとなると、会社の事業推進力が下がってしまいます。そのために自社の事業環境の中でいかにチャレンジングかつ成長できる環境を用意できるかが重要になってくると思います。

ーーこれからの働き方はどんな風に変化していくとお考えですか?
これからは、いかに個人の能力ややる気を最大化できる職場にしていくかが鍵だと思っています。事業や人の魅力が強い企業がどんどん良い人材を獲得していくようになるのではないか、と思っています。

一つの会社で働くのが当たり前ではない、という状況になった場合、本当にその人のやりたいことを実現できる環境を用意できるか、が優秀な人材を獲得する条件になってくると思います。成長しているベンチャーを見ていると、事業の魅力・人の魅力が共に揃っていますよね。そういった会社と人材の獲得競争は加熱していくと思います。

だからこそ、複業解禁を含め、多様な働き方を認め、社員一人ひとりが自分らしく強みを発揮して「『will(意志)』を実現できる」環境づくりを目指していきたいと思っています。

そうすることで、魅力ある事業が生まれ、また優秀な人が集まってくる。そうしたポジティブサイクルを生み出していきたいと考えています。
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複業を解禁したウィルゲートさんでは、理念に共感する新しい仲間を募集しているそうです。
「”一人ひとりの『will』を実現する” 」という理念に共感された方はこちらからウィルゲートさんの採用情報をのぞいてみてはいかがでしょうか?
(インタビュー:西村創一朗、文:奥岡権人